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もはや懐かしい! ボンネットの「穴」何のため? エンジンがなくなった時代には「絶滅」する!?

くるまのニュース 2023年6月19日 9時10分

もはや懐かしいクルマの装備のひとつが、ボンネット上の大きな「穴」ではないでしょうか。何の目的で備わっていたのか、その理由について解説します。

■歴史によって移り変わる「ボンネットの穴」の目的とは

 かつて、クルマのボンネット上に大きな「穴」が備わったクルマは良くみられたものでしたが、近年は減りつつあります。
 
 そもそも穴は何のために備わっているのでしょう。そして今後はなくなってしまうのでしょうか。

 クルマのボンネット上に、色々な穴が開いていた時期がありました。

 穴の目的は様々ですが、多くの場合エンジンルームに冷たい空気を送ることや、エンジンルームの熱気を逃がすことを目的としていました。

 このうち、空気を取り入れるものを「エアスクープ」(もしくはエアインテーク)、空気を排出するものを「エアアウトレット」と呼んでいます。

 時代の変遷と、この穴の歴史を簡単に説明していきましょう。

 まず、1960年代から70年代のアメリカ車のうち、マッスルカーと呼ばれたハイパワーなクルマには、大排気量の大きなエンジンが搭載されていました。

 エンジン自体が大きく、V型エンジンのために吸気口がエンジン中央にあることから、エンジンの吸気口をエンジンフードの上にすることで、冷えた外気を十分に取り入れられたのです。

 日本車では、1970年代中頃の排出ガス対策車が穴を開けていました。

 当時の排出ガス対策車は、排気系統の部品が高温になる傾向がありました。

 そのため、高温になるエンジンルームから熱気を追い出すための穴を開けていたのです。

 一方、時代が流れて1980年代になると、ターボエンジンブームが起こります。

 ターボとは、空気を圧縮してエンジンに送り込んでパワーを上げる装置です。

 空気は圧縮すると温度が上がるのですが、エンジンに熱い空気を送ると空気の密度が低下してせっかくのターボの能力が生かせないうえ、エンジン内の燃焼にも悪影響をおよぼします。

 そこでターボで熱くなった空気を冷却装置の「インタークーラー」に通し、インタークーラーに外気を当てて冷ましていたのです。

 そのインタークーラーへ、より風を多く当てるために、エンジンフード上に空気取り入れ口を設けていました。

 ターボエンジン車は、性格上パワーを絞り出して運転する傾向にあり、高い冷却性能が求められます。

 そこで、ラジエーターを通り抜けた風をエンジンルーム外に排出するために、エンジンフード上に穴を開け、車の後方に熱気を排出していたクルマもありました。

■競技用車両やスポーツカーの「穴」には新たな目的も

 なかには特殊な穴もあります。

 1980年代末、ハイパワー4WDターボ車は、こぞって世界ラリー選手権(WRC)に出場していました。

 出場する車は市販車に限られており、メーカーはたびたび台数限定の競技向けモデルを設定します。

三菱「ランサーエボリューション」歴代モデルにはそれぞれ大型のエアスクープやエアアウトレットが備わっていました

 その中でトヨタ「セリカ(セリカ GT-FOUR RC)」は、エンジンのタイミングベルトを冷却するための穴をエンジンフードに設けていたのです。

 街中走行では全く不要なものでしたが、穴の特殊性と高性能なイメージはユーザーの心をくすぐるものです。

 そんな穴たちですが、歩行者と衝突した際の安全性確保や、多くのクルマでインタークーラーの配置がボンネット下からラジエーターの前方へ移動したことなどから、現在ではほとんど消滅してしまいました。

※ ※ ※

 ただしスポーツモデルの一部ではまだ健在です。

 例えばスバルでは、大型のエアスクープを「WRX」や「レヴォーグ」に採用しています。

 インタークーラーの冷却という目的に加え、スバル高性能車の証しとして象徴的にデザインされている様子がうかがえます。

 一方ホンダ「シビック タイプR」の場合は、また異なる理由で採用しています。

 ボンネットの穴は空気の取り入れ口ではなく、大型のフロントグリル開口部から取り入れた空気を前方のラジエーターへ通し、ボンネットフードベントから排出させるためのものです。

 ホンダではこれを「エアフローレイアウト」と名付け、効率的な排熱のみならず、空力性能にも配慮した構造にしているといいます。

 このように空力面でボンネットの穴を活用する例は、ほかにもスーパースポーツカーなどでしばしばみられます。

 その意味でいうと、今後EV(電気自動車)が普及して「エンジン(および補器類)の冷却」という用途がなくなった後も、ボンネットの穴は絶滅しないのかもしれません。

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