トヨタは「Toyota Technical Workshop」を開催。モビリティカンパニーへの変革を支える様々なモノを発表しました。その中には世界初公開のモデルもありましたが、どのような特徴があるのでしょうか。
■トヨタがレクサスの「凄いLX」を世界初公開! なぜ?
近年のトヨタは様々な水素技術の発展に注力していますが、その現状について「Toyota Technical Workshop」を開催し、モビリティカンパニーへの変革を支える様々なモノを発表しました。
その中には、注目度が高い「水素エンジン車」もありましたが、すでに公表されている「水素カローラ」や「水素ヤリス」とは違うモデルでした。
トヨタは、水素技術について様々な取り組みを行っています。
遡れば、2014年に登場した燃料電池車(FCEV)の初代「ミライ」といった商品軸をはじめ、2021年には水素エンジン車としてモータースポーツに挑戦、そして2023年には液体水素を燃料としたモデルで参戦しています。
一方で商用分野では、Commercial Japan Partnership Technologies(以下CJPT)が燃料電池トラックなどを展開して物流における水素社会の確率を目指しています。
また水素を使うだけでなく、「つくる」「はこぶ」という観点からも水素社会の構築を行うとして、日本やタイなどで水素を生み出す技術開発にも取り組んでいます。
そうした中で2023年7月1日からトヨタでは新たに「水素ファクトリー」が設立されます。
これは水素の世界的マーケットの変化に対応するためだといい、水素ファクトリーという組織を設置し、営業、開発、生産まで、ワンリーダーの下で、一気通貫で即断即決できる体制として水素事業をファクトリー化するというものです。
この水素ファクトリーでは、「マーケットのある国で開発・生産」、「有力パートナーとの連携強化」、「競争力と技術」という3軸の方針で展開してくとしています。
そうした中で今回の「Toyota Technical Workshop」(以下テクニカルワークショップ)では、開発中のコンセプトも含めた具体的かつ多様な水素関連技術を公開しました。
トヨタは、カーボンニュートラルの実現を目指してCO2排出量の削減を進める中で、水素を重要な燃料と位置づけています。
水素利活用の促進による「水素社会」の実現に貢献するために、前述の乗用・商用のトラックやバスを含めた燃料電池車(FCEV)だけではなく、内燃機関を活かす水素エンジン車の開発などに取り組んでいくとしています。
その中で水素技術を飛躍的に普及させる重要な要素として乗用車で使うことが挙げられます。
今回明かされた技術においては、大型車から小型車まで様々なタイプの車両に対応 できるような搭載性に配慮した水素タンクを開発中だといい、 既存の車両をFCEVや水素エンジン車に転換することが可能になるようです。
実際に公開されたタンクデザインの例では、従来のミライに搭載される円筒型ではなく、BEVの床下に搭載する電池に置き換えた形状や、クルマの中心を通るドライブシャフトを避けた「U字」の形状なども検討していると言います。
■これが世界初公開の「水素エンジンLX」だ!
また水素エンジン車に関しては新たにレクサス「LX」をベースとして「水素LX」が世界初公開されました。
この水素LXは、3.5リッターV型6気筒ガソリンエンジンにディーゼルエンジンに使われる尿素SCRシステムなどの技術を加えて水素エンジン化したものを搭載。すでにナンバーを取得し、公道走行が可能だと言います。
なおLXをベースとした理由について水素ファクトリーの山形プレジデントは次のように説明してくれました。
「すでに小型乗用モデルにおける水素エンジンはカローラなどで実証出来ています。そのため大型乗用モデルでの検証としてLXを採用しました。
また水素エンジンの課題解決に関してはディーゼルエンジンに搭載される浄化システムなどが活用出来る点も理由です」
山形氏が説明するように、水素エンジンにおける課題は、ディーゼルエンジン車の技術を活用した排気浄化システムなどの技術を流用することで対策が可能だといい、次なる課題としては水素蒸発でエンジン内に発生する水対策だと言います。
しかしながら、カーボンニュートラル実現に貢献するための新たな選択肢として既存エンジンを水素エンジン車化する取り組みが製品化すれば、水素社会の実現に近づくことは確かです。
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今回、世界初公開となった水素LXを試乗することが出来ました。
見た目は従来のLXと代わりはほぼありません。操作性も変わらないながら走り出すとエンジン車とはなにか違う加速感を覚えますが、言われなければ気づかないレベルです。
なおシフトチェンジの衝撃は思った以上に強く、担当者によれば「これから煮詰めていく部分です」と話していました。
しかしながら、これまでモータースポーツでの活躍しか見てこなかったという点では、水素エンジンが身近に感じられる体験です。
今後水素ステーションなどのインフラ課題や、水素自体の低価格化などが進めば、これまでのガソリン燃料に変わるものとして普及する可能性は大いにアリそうです。