クルマのインパネには「A/C」と書かれたボタンが付いています。このA/Cとは一体何を表しており、ボタンを押すと何が起きるのでしょうか。
■謎のボタンの正体とは
クルマのインパネには、「A/C」あるいは「AC」と書かれたボタンが備わっています。
クルマに詳しい人ならいざ知れず、免許を取り立ての初心者には何が起きるボタンなのか分からないでしょう。
このA/Cとは一体何を意味しており、ボタンを押すとどのような効果があるのでしょうか。
このボタンに記されたA/Cの文字は、「Air Conditioning(エアーコンディショニング)」を略したもので、つまりこのボタンはクルマに搭載されている「エアコン」を作動させるためのスイッチです。
ボタンを押し「ON」にすることで、エンジンルームなどに設置されている「コンプレッサー」が作動。冷媒となるガスを介して冷たい空気を作り出し、送風口を通して車内に送り届けてくれるのです。
このA/Cボタンを押さなければ、クルマの空調を操作しても単なる「送風モード」になるので、常温あるいは温かい風が出るだけになります。
もしも「空調を操作したのに車内が涼しくならない…!」という時には、まずA/CボタンがしっかりとONになっているかどうかを確認すると良いでしょう。
では、A/CボタンがONになっているのに冷風が出ない時にはどうすればよいのでしょうか。
大手自動車用品店に勤める整備士に話をうかがいました。
「A/Cボタンを押しても常温の風しか出ず車内が冷えない場合には、空気を冷やすのに必要となる冷媒ガスの残量が減っているか、コンプレッサー自体が故障している可能性が高いです。
ユーザーが自分で対処できるようなトラブル内容ではありませんので、早めに自動車整備工場やディーラーなどに相談し、クルマを診てもらった方が良いでしょう」
■「A/C」に秘められた「もうひとつの機能」
ここまではA/Cボタンの「冷房」機能について説明しましたが、このボタンにはもうひとつの“大きな機能”があります。
それが「除湿」機能です。
クルマは、外気と車内の温度差が大きくなったときや、車内の湿度が高い場合にガラスの内側が曇ってしまいます。
そしてガラスが曇ると視認性が大きく下がり、安全な運転に支障をきたす可能性があるのですが、そんな時にA/Cボタンをオンにしておけば除湿機能が働き、ガラスの内側が曇りにくくなるのです。
さらに、夏などの外気の温度や湿度が高い時にはエアコンを「内気循環モード」にすると、より湿度の低い空気が車内に循環するので、ガラスの曇りを取るのに効果的です。
ちなみに、このA/Cボタンとコンプレッサーには「空気を温める機能」はありません。
では、冬はどのようにして暖かい風を送り出しているのかというと、実は「エンジンの熱」を利用しています(エンジンが載っていない電気自動車の場合は、基本的に電気を使用して空気を温めます)。
つまり、エンジンが稼働している際に発する廃熱を有効活用して空気を暖めているので、コンプレッサーを動かす必要が無く、そのため冬場にはA/CをOFFにしていても問題ありません。
ただし、その状態では先ほど説明した除湿機能は働かないので、たとえ冬場であっても内側のガラスが曇ってしまった場合には、除湿のために適度にA/Cボタンを押して除湿機能を活用すると良いでしょう。
ここまでを見ると、A/Cボタンは常にONにしていれば良さそうにも思えますが、あえてOFFにする必要はあるのでしょうか。
それは「燃料の消費を抑えたいとき」と「エンジンのパワーがもっと必要なとき」が挙げられます。
エアコンのコンプレッサーを動かす動力としてエンジンのパワーを使用しているため、A/Cボタンを常にONにしていると余分にエネルギーを使ってしまい燃費が悪化します。
また、自然吸気エンジンの軽自動車などパワーの小さなクルマで高速道路の上り坂を駆け上がる場面などでは、コンプレッサーにエンジンのパワーが取られて思うように加速できないことがあります。
そのようなシーンではA/CボタンをOFFにするなど、必要に応じて切り替えると無駄なく賢いドライブが出来るでしょう。
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このように「A/C」のアルファベット2文字が記されたボタンは、冷たい風を出したり車内の湿気を取り除きたい時にONにするものでした。
なお、最近普及の進んでいる「オートエアコン」を搭載しているクルマであれば、空調を操作し温度を設定するだけで自動的にA/CボタンもONになります。
今後はユーザーが意図してA/Cボタンを押す機会は減っていくのかもしれません。