GRに関しては、将来のBEVという軸ではあまり話が出ていませんでしたが、2023年で100周年大会となった「ル・マン24時間レース」にて、いくつかのヒントが明かされました。
■GRのBEVと言えば「AE86 BEVコンセプト」が有名だが…将来は?
トヨタやレクサスは、電気自動車(BEV)の今後の展望を徐々に明かしています。
その一方でGRに関して、BEVに関する話があまり出てきませんが、どのようなBEVが控えているのでしょうか。
トヨタ・レクサスは2026年に次世代BEVを投入することを明らかにしている他、それまでにおいても「マルチパスウェイプラットフォーム」を用いてBEVを展開していきます。
その一方でGRに関しては、将来のBEVという軸ではあまり話が出ていませんでしたが、2023年で100周年大会となった「ル・マン24時間レース」にて、いくつかのヒントが明かされました。
それは豊田章男会長と欧州メディアによる懇談での一幕です。
―― 欧州メディア:GRの未来についてどのように考えていますか? 電動化時代にも“ワクドキ”を求めるのでしょうか? それは可能ですか?
豊田:GRは「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」の使命がありますので、「運転が楽しい」は最優先項目です。
しかし、その中にもパワートレインの選択肢が必要な事も理解しています。
実は先日、GRが開発したBEVのテスト車両に乗りました。
そのクルマと他のBEVとの違いは「乗っているとエンジンが回っているかのような“音”が聞こえる」です。
ただ、ガソリン臭さはありませんけどね(笑)。
そして、MT…クラッチも付いています。なので、このクルマに乗った人は、自分がどんなクルマに乗っているか解らなくなってしまうと思います。
でも、走っている姿はBEVそのもの。そんなクルマが将来出るかは分かりませんが、GRは「BEVにしても失ってはいけない事」を研究し続けています。
更に今のトヨタはエンジニアが「これ面白いよね!」と思うようなクルマを、1台乗れるように用意できる会社になったと言う事です。
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この発言を受けて、海外の自動車メディアが「豊田会長、BEVの『GR』プロトタイプに試乗」と言う記事を上げていますが、実はこれは東京オートサロン2023でお披露目された「AE86 BEVコンセプト」です。
筆者はこのモデルの走行を見学した事がありますが、外から見ていても直感的に「速い!」と感じるレベルでドリフト走行も楽々こなしていました。
クルマの動きもBEVとは思えないほどキビキビしたもので、AE86らしさは損なわれいないことを確認済みです。
ただ、無音なのにタイヤのスキール音だけが聞こえる状況は、ある意味不思議な感覚でした。
ちなみにAE86 BEVコンセプトは東京オートサロン以降も開発が続けられおり、バッテリーのアップデートにより航続距離もアップしているとのこと。
ナンバー取得も計画中で、開発者は「AE86をはじめとする内燃機関モデルのユーザーに体験してもらえるような機会を、是非とも作りたい」と語っています。
AE86 BEVコンセプトは「愛車を守るカーボンニュートラル」の提案ですが、当然ニューモデルも気になるです。
それにあたるモデルのヒントは、2021年12月に行なわれた「バッテリーEV戦略に関する説明会」に展示されていたモデルにありました。
ステージ奥に展示されていたゴールドのボディカラーが印象的だった「スポーツEV」です。
「MR2復活」を思わせるフォルムでフロントにさり気なくGRのバッジが装着されていました。
他にお披露目されたBEVモデルは徐々に明らかになっていく中、あのモデルはまだ不透明な部分が多いです。
しかし、説明会でトヨタの「早いモデルで来年、遅いモデルでも数年以内に登場予定」を信じれば、すでに開発は進んでいるはず。
となると、AE86 BEVコンセプトのような所作、思想が入っている事は間違いないと言う事です。
■トヨタのクルマづくり… 「社長とマスタードライバー」を振り返る
また前述の欧州メディア懇談では、トヨタの社長を14年間続けたことやマスタードライバーとしてのクルマづくりについても語っていました。
―― 14年間の社長在任、どうでしたか?
豊田:長い時間続けると思わなかったですが、結果として“商品”を開発できる会社に改革できたと思います。
私は就任して「街一番の会社」、「もっといいクルマをつくろう」の二つだけ言いました。
周りからは馬鹿にされましたが、私がその答えを言ったら、今のようなトヨタになってなかったと思います。
ですから、これから出す商品にご期待ください。私は会長になりますが、「マスタードライバー」の役目は残ります。
商品に足して色々口を出しますが、それが「邪魔なのか?」、「助けになるのか?」、これから出る商品を見て判断いただければと思います。
―― マスタードライバーを志した理由は?
豊田:私はエンジニアではありません。
そんな私が37万人を率いて商品経営ができるのか、それが出発点でした。
まず「クルマの運転」と「クルマのデザインはどうあるべきか」について、自分自身の時間を使って学びました。
そこで得た“物差し”を元にクルマと会話を行なっています。
では、マスタードライバーをいつまで続けるのか。
それは年齢ではありません。私は当社のテストドライバー、ジェントルマンドライバー、そしてプロドライバーと一緒にレースに出場しています。
彼らとの約束は「タイム差が10秒以上になったらやめます」と。
デモランを行なった水素GRカローラは参戦当初(2年前)5秒の差がありましたが、今は1秒以下。なので、やめる時期はちょっと遠のいています(笑)。
そして、最後の質問では何と豊田会長のサプライズ発言がありました。
―― モータースポーツへの想いは強いですが、いつまで続けますか?
豊田:まだまだやりたいと思っています。私のレースの原点はニュル(ニュルブルクリンク)です。
ただ、これまでのニュルでの思い出は「運転の仕方も解らずビビりながら走っていた」と言う記憶しかありません。
ただ、今は日本やアジアで鍛えたスキルを活かし、もう一度ニュルと語ってみたいと思いました。ここでお約束しますが、来年のニュル……24時間かどうかは解りませんが、どこかのレースに参戦します。
私もこのような了承は会社では取り辛く、公の場で言うと出ざるを得ない状況になるので(笑)、是非とも後押しをお願いしたいと思います。
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ちなみにどんなマシンで参戦するのでしょうか。懇談の後にコッソリ聞いてみました。
現時点で、GRヤリス/GRカローラはニュルでの確認はしていないようですが、それに対して豊田氏は「センチュリーやクラウンではないのは間違いなし(笑)。レクサスはちょっと重いのがネック、やはりやるならGRモデルでしょうね。ただ、まだ発表するには早すぎ!」と語っていました。