海の近くに行くとクルマがサビるという話は本当なのでしょうか。海の近くに住んでいる人はどのような対策をしているのか話を聞いてみました。
■海の近くのクルマはサビやすい?
夏になると、海へ行く機会が増えるでしょう。クルマで海沿いの道を走るとボディがサビるといわれることがありますが、それは本当なのでしょうか。
クルマのボディや下回りなどは、鉄などの金属製パーツで構成されています。クルマにできるサビは、この金属パーツが酸化して発生したものです。
潮風や海水には塩分(塩化ナトリウム)が含まれていて、塩分にはボディにできている小さい傷や隙間から侵入して金属パーツの酸化を進行させる働きがあり、「塩害」と呼ばれるサビを発生させる原因になります。
この塩害は、海の近くだけでなく、冬に雪を溶かすために道路にまかれる「融雪剤」なども塩分を多く含んでいることから、クルマで走行後に放置してしまうとサビが発生するといわれています。
ただし、塩害によるサビは、海沿いなどをドライブしたくらいでは発生しないものの、常に潮風にさらされているような状態ではサビが発生しやすいといえるでしょう。
実際に海のそばに住んでいる人に話を聞いてみました。
結婚を機に神奈川県茅ヶ崎市に引っ越してきたOさんは、海までわずか数分の場所に住んでいます。クルマはトヨタ「ハイエース」を所有。クルマの塩害はどうなのでしょうか。
「最初は憧れていた海のそばの生活ですが、予想以上に塩害がすごいことにびっくりしました」
Oさんいわく、潮風の影響で洗濯物を外で干すことができないほどで、さらに家の金属部分はマメに手入れしないとすぐにサビが発生し、自転車も数日でチェーンにサビが出てしてしまうといいます。
「ハイエースを購入して最初にしたのが『アンダーコート』と呼ばれる防サビ処理です。費用は多少かかりましたが、サビの発生をかなり抑えられると聞いたので施工しました。
アンダーコートを施工したことで、確かにボディ自体にサビは発生していませんが、1日クルマに乗らないだけで、足回りからギクシャクした音が発生するくらい、細かいサビはできてしまうようです。
もっとも、少し走れば自然にサビが取れるレベルなので、もう慣れっこになってしまいましたが」(海の近くに住むOさん)
そんなOさんは、塩害対策で洗車をマメにしているといいます。高圧洗浄機を使ってボディだけでなく足回りや下回りも強い水圧で洗い流し、さらに高圧洗浄機でそのまま家の外壁も一緒に洗って、できる限り潮の影響を減らすのがルーティンになっているそうです。
「海から飛んできた砂が家の外壁や駐車場にも付着するので、クルマを洗うだけでなく、家ごと洗うように心がけています」(海の近くに住むOさん)
また月に一度はガソリンスタンドなどでコーティング洗車しているそうですが、一番の対策は、やはりマメに塩分を洗い流すことのようです。
■コーティングや洗車が基本的な対策
海の近くに住んでいる場合、やはりクルマがサビやすいといえます。改めて塩害への対処法を、神奈川県のH整備士に聞いてみました。
「塩害対策として手っ取り早いのは、海に出かける前にできるだけボディに付着した汚れを落としてコーティングしておくことです。これにより被害を減らすことができます」
このコーティングが塩分から塗装面を守る保護膜となるわけですが、アンダーボディや足回りなどは金属が剥き出しのままのパーツもあります。
「海沿いなどで、足回りなどを黒くしたクルマを見かけたことがあるかもしれませんが、あれは『シャシーブラック』と呼ばれる防腐剤を金属パーツに塗ったものです。
スプレーなども販売されているものの、下回りなどはジャッキアップしないとうまく塗布できない部分も多く、プロにお願いしたほうがしっかりした保護効果が期待できます」
では海辺から戻ってきたあとはどう対処すべきでしょうか。
「まずはたっぷりの水と洗剤を使い、下回りまで付着した塩分をできるだけ早く洗い流すことです。
通常の洗車ではおざなりになりがちなホイールハウス内や見えているサスペンションはもちろん、アンダーボディ部分もできる限り水で洗い流してください。
そして、ただ拭きあげるだけでなく、見えない部分に残った水分もしっかり乾燥させることが大事です。この乾燥作業を怠ると、サビが発生しやすくなってしまうので、注意が必要です」(H整備士)
海沿いを走行した後は、クルマに塩分が付着した場合はできる限り早く取り除くことが大切です。そのためにも、走行前のコーティングが非常に重要な役割を果たしてくれるということのようです。
また、アンダーコートやシャシーブラックによる防サビ効果も期待できることから、頻繁に海の近くを走行する機会があるのなら、施工すると良いかもしれません。
クルマをケアするときは、目につきやすいボディに集中しがちですが、サビ対策に関しては「見えない部分にこそ対策が必要」という意識が重要となってくるのです。