トヨタが世界初公開した新型「C-HR」の斬新なスタイリングが大きな話題となっていますが、最近のトヨタの新型車で採用の続いているデザインテーマ「ハンマーヘッド」には一体どんな意味があるのでしょうか。
■新型「C-HR」にも採用された「ハンマーヘッド」って何?
トヨタの欧州法人(以下、トヨタ)は2023年6月26日、コンパクトSUVの新型「C-HR」を世界初公開しました。
この新型C-HRについては、トヨタ自らが「公道を走るコンセプトカー」と説明する斬新なスタイリングが大きな話題となっていますが、最近のトヨタの新型車で採用の続いているデザインテーマ「ハンマーヘッド」には、一体どういった意味があるのでしょうか。
C-HRは、2016年に初代モデルが登場。トヨタの世界戦略車として開発され、初代モデルも当時のトヨタ車としてトップクラスに斬新なデザインを採用し、高い注目を集めました。
約7年ぶりのフルモデルチェンジを敢行した新型C-HRは、南フランスにあるトヨタの欧州デザイン開発本部で開発。
2023年1月に発売した新型「プリウス」をベースとし、初代C-HRでも特徴的だった「目を引くデザイン」をさらに進化させています。
全体的なスタイリングは、2022年12月に公開されたコンセプトカー「C-HRプロローグ」のスタイリングを踏襲したもので、C-HRらしいクーペのようなルーフラインをより強調。
フロントフェイスには、新型クラウンシリーズや新型プリウスと共通する、トヨタの新しいデザインテーマ「ハンマーヘッド」を採用しています。
このハンマーヘッドを直訳すると、ハンマー(金槌)に似た形状の頭を持つ魚類「シュモクザメ」を意味し、その頭部をクルマのフロントノーズのデザインモチーフとしたものです。
“コの字”型の個性的な形状のヘッドライトを備えていることも大きな特徴で、左右のヘッドライトの内側とノーズの先端を繋げた形状は、たしかにシュモクザメの頭部と似た姿をしていることが分かります。
少し前のトヨタ車は共通デザインとして「キーンルック」というワードを用いており、こちらは「知的で明晰な印象を与えるトヨタ独自の表情」と説明されていました。
しかし最近発表される新型モデルにおいては「キーンルック」のワードは姿を潜めており、その代わりに登場したトヨタの新たなデザインテーマが「ハンマーヘッド」となります。
■「ハンマーヘッド」は技術の進歩を象徴!?
そんなハンマーヘッドですが、ただ単に目を引くことを目的に珍しい形状を採用したものではなく、クルマのヘッドライトに用いられる技術の進歩によって誕生したデザインだといいます。
近年、クルマのヘッドライトの光源に「LED」が一般採用されるようになったことで、ヘッドライトが飛躍的に小型化。従来のように大きく面積を取る形状である必要がなくなりました。
しかし、そのまま単純にヘッドライトを小さくしてしまうと、クルマの印象を決める最大の要因であるフロントフェイスにおける「表情」が薄くなってしまいます。
この問題を解決するためにトヨタが考案した形状がハンマーヘッド。従来のヘッドライトでは難しかった、ライトの中心部分をボディと融合させたデザインで先進的な印象を高めつつ、“コの字”型に回り込む形状の細いLEDヘッドライトによって高い存在感も発揮できるという解決案なのです。
さらにこのハンマーヘッド、トヨタが新型モデルを発表するたびに確実に進化が見て取れます。
例えば今回発表された新型C-HRでは、ヘッドライトの下部を左右で直接繋げる手法を取らず、バンパー下のロアグリルを介する形状を採用。
これにより、ボディ下部の重量感を拡大して視覚的な安定感を高めるとともに、逆スラント風のノーズがより分厚くなり、SUVらしい車高の高さや力強さを漂わせるデザインとなっているようです。
新型CH-Rには、この新しいハンマーヘッド以外にも、トヨタ初となる「フラッシュドアハンドル」や大胆な塗り分けの「2トーンカラー」、極めて短いオーバーハングによる凝縮感のある塊のようなスタイリングなど、トヨタ車随一とも言える刺激的なエクステリアデザインが施されています。
現時点では公式発表の写真や動画での確認にとどまりますが、先述したように迷いのない大胆なスタイリングを採用した同車について、実際に店舗や路上で見かけたユーザーからどのような反響が寄せられるのか、今後の動向にも注目してまいりましょう。