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園児の置き去りを見逃さない! パイオニア「NP1特別仕様」モデルを送迎バスに導入した園を訪ねてみた

くるまのニュース 2023年7月4日 7時40分

国は「送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置のガイドライン」を策定し、2023年4月から、幼稚園や保育園などの送迎バスについて、同ガイドラインに適合する置き去り防止安全装置の設置を義務付けました。さまざまな対応製品が登場するなか、パイオニアは本施策に合わせて「NP1」の特別仕様モデルを開発。実際に導入した園を取材しました。

■「送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置のガイドライン」とは

 送迎バスに園児が置き去りにされて亡くなる事件が相次いだことを受け、国は「送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置のガイドライン」を策定し、2023年4月から、幼稚園や保育園などにおける全国4万台を超える送迎バスについて、同ガイドラインに適合する置き去り防止安全装置の設置を義務付けました。

 園児の送迎時は、バスの運転手や同乗する保育士らによる見回り、人数の点呼などは基本中の基本で、置き去りがないようにしないといけません。しかし、ヒューマンエラーが絶対にないとは言い切れず、安全装置によって置き去りが発生していないか検知し、万が一の場合は速やかに外部へ連絡が行くようにするのが今回策定されたガイドラインです。(装置導入義務に違反した場合は業務停止命令の対象となる)

 補助金対象商品には、降車時確認式(置き去り防止を確認で促す)と自動検知式(センサーを用いて置き去りを検知する)の2種類があり、このどちらかを採用したタイプと、併用して採用したタイプがそれぞれあります。また、ガイドラインに適合していると国が認めた安全装置を導入する際には、1台あたり最大17万5000円の補助金が出ます。

 パイオニアが一般向けに市販しているNP1は、従来の画面と音声で経路を知らせるナビゲーションとは違い、音声だけでナビゲーションを行います。さらに、アウト&インの2カメラタイプドライブレコーダーやWi-Fiを搭載しており、ナビ・ドライブレコーダー・通信がオールインワンパッケージになっている商品です。

 国のガイドライン策定後、数多くの自動車用品メーカーが置き去り防止安全装置を発表しました。そんな中パイオニアでは、カーナビゲーションやドライブレコーダーなどの長年の知見を生かして開発に着手。ゼロからではなく、「NP1」に備わるカメラ・マイク・通信などの機能が生かせると判断し、置き去り防止安全装置に特化した「NP1特別仕様」モデルを開発しました。

 パイオニアによると、置き去り防止安全装置に必要になるカメラ・センサー・通信ユニットなどがワンパッケージになっていることに加えて、ドライブレコーダーも一緒になっているのがメリットだといいます。

 今回、パイオニア製NP1置き去り防止安全装置を導入した、千葉県浦安市にある学校法人暁星国際学園「新浦安幼稚園」の三根谷薫園長と榎本浩介事務長、またNP1特別仕様を開発したパイオニアNP事業本部の宮部航太郎さんに、お話を伺いました。

 三根谷薫園長は「通園バスの環境について、心配している親御さんもいらっしゃいます」と言い、実際に制度化が実施されると決まったときは、チラシやメールなどで同様の装備に関する案内が多く来たそうです。

 園バスのメンテナンスを行う整備工場とも相談した結果、製品を製造している会社が大手であり知名度もある、またナビゲーションやドライブレコーダーなどの自動車用製品を製造している実績と安心感、子どもを預けてくれる親御さんに説明する際の、メーカー名の浸透性なども考えたうえで、このパイオニアNP1特別仕様を選ぶ最初のきっかけになったとのことです。

■パイオニアNP1の置き去り防止安全装置を実際に導入してみて

「NP1特別仕様」を選んだ理由はそれだけでなく、降車時確認方式と自動検知式の併用式を採用しており、運転手による確認とその後のカメラとセンサーによる自動検知の両方を備えていること。また、通信機能を持っているため、スマートフォンにメールや通報をすぐに行うこともでき、またリアルタイムで車内の様子をスマートフォンで確認できることもメリットして挙げられたといいます。

 三根谷園長は「当園は先生や職員の半分近くが海外出身者ということもあり、インターナショナルな感覚を身につけるために当園を選んでくださる方も多く、園バスも浦安市からかなり遠いところから通う園児もいることから、このような安心できる機能は必要だと思います」と話します。

 榎本事務長は「何もないのが一番ですし、今まで何か起きたことはないです。しかし万が一何か起きた場合を想定すると、スマホから車内の映像を見て状況を確認できるのはいいですね。何かトラブルがあっても電話だけでは状況判断が難しい場合もあると思いますので、車内の映像をリアルタイムで確認できるのは非常に安心です。また自分以外の先生にもSMSなどの通知が送られて確認できますし、スマホのアプリに関してもみんなすぐに操作には慣れました」。

置き去り防止安全装置付パイオニア「NP1特別仕様」モデル。見た目は通常の「NP1」と同様

 新浦安幼稚園では登園後、敷地内に送迎バスを駐車しています。一度だけ登園後にバスの給油のためにガソリンスタンドに行ったあと、戻ってきてエンジンを切り確認ボタンを押すのを忘れた際には、幼稚園のどこにいてもわかるほどの音量で車外警報が鳴り響いたそうです。全員が通園したあとに、給油のために最初から園児が乗っていないという明確な事例でしたが(そのような使用条件を想定した一時キャンセルボタンもあり)、実際にどのような警報が鳴るのか改めてみんなで確認できたといいます。

 パイオニア製NP1置き去り防止安全装置は、送迎後、園バスのエンジンを切ると「車内の確認を行ってください」と音声アナウンスが流れ、運転手や乗務員が車内を確認して車体後方上部の停止ボタン(子どもの手が届かない位置にある)を押すことで降車時確認が行われます。降車時確認後、自動的に自動検知式に移行し、カメラが監視を行います。万が一見逃しなどがあった場合は、子どもの動きなどをカメラが検知して、車外警報とスマートフォン通知を行います。

降車確認スイッチは車両後部上方に取り付けられている

 パイオニアNP事業本部の宮部航太郎さんは「エンジン停止後にブザーで案内を行うのではなく、音声で確認手順を示すことで、いつもの運転手さんではない時でもしっかり確認できます。また、アプリに関して、導入された事業者さまからご要望をいただいて検証した後、すぐにアップデートできるのも特長の1つです」といいます。実際に、ボタンを押した際にも確認音声が欲しいといった園からの現場の声がすぐにアップデートとして機能に反映され、これには園の方も素早い対応に驚いたとのこと。

 さらに、フロントガラスに設置するNP1ですが、「コースターなどの中型バスにおいても、後方までしっかりカメラで確認できます。ハイエースなどの小型バスでももちろん確認できます。昼間はもちろん、夜間においても映像でしっかり確認できる性能も持っています。マイク機能もあり、車内の音をしっかり確認できますので、カメラで見えにくいところにお子さんが隠れてしまっても音声で確認できます」とパイオニア製NP1置き去り防止安全装置の特長を説明してくれました。

 また、事前調査を実施してWi-Fiや位置情報など必要のないと思われる「NP1」機能はクローズしています。これに関しても、もし要望が多ければ、今後アップデートでもともと備わっている機能を追加対応することも可能だそうです。

 ※ ※ ※

 まもなく猛暑の時季となります。国策定のガイドラインにもありますが、安全装置は、車内温度が高くなっても安心して使える信頼度の高い製品を選ぶことが重要です。悲しい事故が起きる前にすべての園が置き去り防止安全装置を導入し、安全に園児が通えるようになることを祈るばかりです。

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