クルマが停止する前にAT車のギアを「D」から「R」に操作するのはダメだといわれていますが、実はそれよりも見逃されているNG行為があります。それはクルマを停める際に、何気なく当たり前のようにやっていた意外な動作でした。
■完全停止する前に「D」から「R」のシフト操作はNG! しかし電子制御化でトラブルの回避も可能に
ギアシフト故障の原因となるNG行為といえば「クルマが完全に停止する前にDレンジからRレンジにする」ことと古くからいわれています。
しかしシフト操作に関して、もっと「気をつけなければいけないこと」があるといいます。
今も自動車教習所などでは「DレンジからRレンジにするときは、クルマが完全に停止してから」と教えていますが、最近のクルマでは、もうそれほど気にしなくても良いといいます。
確かに、30年から40年くらい前の古いクルマのオートマチックトランスミッション(AT)では、完全停止前にDレンジからRレンジへとシフトを切り変えようとするのは、大きなトラブルの原因とされていました。
例えば「ガツッ」といったショックや異音がしたり、そもそもギアシフトが入らなかったり(切り替わらない)といった具合です。
ひどい場合にはギアケースが割れたり、ブレーキバンドが摩耗したり、といった不具合が発生してしまうケースもあったようです。
しかし、とある国産自動車メーカーで働くエンジニアA氏は、次のように話します。
「近年のクルマでは、完全停止する前にDからRへと切り替えても、昔のような大きな問題は起きないはずです。
最近のクルマのATは、基本的にシフトのセレクトレバーが電子制御タイプとなっています。
ドライバーがシフトを操作したあとに、システムがスピードやエンジン回転数などからシフトチェンジのタイミングを判断してシフトが切り替わるという仕組みになっているのです。
そのためクルマが動いている状態で、ドライバーがDレンジからRレンジへシフト操作をしたとしても、普通はシフトが切り替わることはありません」
筆者(くるまのニュースライター 河馬兎)も自分のクルマで、完全停止前にDレンジからRレンジ、RレンジからDレンジへと入れてみましたが、すぐさまシフトが切り替わるようなことはなく「シフトレンジは停止してから入れてください」との警告メッセージが、メーターのセンターディスプレイ内に表示されただけでした。
完全停止してタイヤの回転がピタッと止まったあとでないと、シフトチェンジは受け付けない設定となっているようです。
■意外と知らない!? クルマを停止し「P」レンジに入れる「正しい順番」とは
とはいえ、思わぬエラーが起きたり、トラブルの原因となる可能性もないとはいえないので、やはり乱暴なシフト操作は慎んだほうが良いでしょう。
また最近のクルマでも、マニュアルトランスミッション(MT)車では、ギア同士がかみ合わずに「ギギー」といった異音が発生したり、最悪の場合、無理やりギアを入れようとしてミッションが壊れることもあるようなので、注意が必要です。
しかしそれ以上に、実は多くのドライバーが意識していない操作で、クルマに思わぬ負担をかけているケースがあるといいます。
前出のメーカーエンジニアA氏が注意を呼び掛けているのは、「Pレンジとパーキングブレーキの順番」です。これは多くのドライバーが勘違いしている、意外な盲点といえます。
「近年の新型車では、自動でパーキングブレーキをかけてくれるクルマが増えていますが、従来の手引き式や足踏み式パーキングブレーキの場合、まずはPレンジに入れて、そのあとパーキングブレーキをかける人が多いようです。
しかし実は、パーキングブレーキをかけた後にPレンジに入れるのが正解です」
A氏はこのように話します。
Pレンジは、トランスミッション内部の歯車に爪(パーキングロックポール)がかかり、シャフトがロックされることで、駆動輪が動かなくなる仕組みを持っています。
タイヤの回転をロックするわけではないので、Pレンジに入れたあと、ブレーキペダルから足を離すと、わずかにクルマが動いてしまいます。
「例えば坂道などでPレンジのみを入れた状況だと、パーキングロックポールだけがクルマの前後移動を抑制することになります。
これではトランスミッションが本来持っていない役割を担うことになってしまい、クルマを傷めつける行為となってしまうのです」
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Pレンジを使うときは、完全停止後、まずパーキングブレーキをかけてから、シフトをPに入れるのが鉄則です。
これまで意識していなかったドライバーも、これを機に正しい操作で愛車を長持ちさせることを心がけましょう。