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「Aichi Sky Expo」で初開催! 名古屋会場独自のイベントも実施された「人とくるまのテクノロジー展 2023 NAGOYA」

くるまのニュース 2023年7月13日 8時40分

人とくるまのテクノロジー展NAGOYAが、2023年から会場をAichi Sky Expoに移して初めて開催。名古屋会場だけの新企画も実施されました。

■名古屋会場だけの特別展示も実施

 公益社団法人自動車技術会が主催する「人とくるまのテクノロジー展 2023 NAGOYA」が、2023年7月5日から7日まで3日間にわたって愛知県常滑市の「Aichi Sky Expo」(愛知県国際展示場)にて開催されました。

 本イベントは、昨年までは名古屋市の「ポートメッセなごや」でおこなわれていましたが、今回中部国際空港(セントレア)島内にある日本初の空港直結の国際展示場である「Aichi Sky Expo」で初めて開催されました。来場者は会期3日間で2万5497人と昨年より約1万人弱増加したとのことです。

 人とくるまのテクロノジー展は5月に横浜会場でも開催されましたが、名古屋会場だけの企画として「新技術搭載車両展示」と「自動運転AIチャレンジ企画」がおこなわれました。

「新技術搭載車両展示」は各メーカーの乗用車、大型トラック、2輪車などがブース別ではなく展示ホール内に共同で展示され、来場者が気軽に見学、また一部の車両は乗り込みもOKという形式で実施されました。そのなかでも特に注目を集めていたのが、燃料電池を搭載した日野自動車の水素(FC)トラック「プロフィア Z FCV プロトタイプ」のシステム始動デモです。

 環境省と日野自動車のデータによると、自動車が排出するCO2のうち30%が大型トラックによるもので、カーボンニュートラルに向けた取り組みは乗用車だけでなく大型トラックも含めた対応が必要となっています。長距離輸送を担う役割の多い大型トラックのEV化については、航続距離確保のための大容量電池搭載、またそれに伴うコスト増、重量増、長時間の充電の必要などの面から難しいといわれているなか、FC(水素)トラックが注目されています。

 この車両は大型トラック プロフィアをベースに、新たに開発された高圧(700Mpa)水素タンクを車両に計6本、トヨタFCスタックを2機、後輪2軸に各モーターを搭載し、都市圏・市街地走行モードでの社内測定値で約600kmの航続距離を実現しているとのことです。

会場では、実際にシステムの起動するデモンストレーションもおこなわれていた

 充填(じゅうてん)口は車両左側に設けられ、計6本のタンク満充填をより素早くおこなえるようノズルが2本同時に挿せる方式となっています。現状では、水素スタンドの設備側の問題で1本ずつの充填となりますが、今後のインフラ拡充を想定して車両側の装備を先行させた形です。

 会場では、走行はしないものの実際にシステムを起動するデモがおこなわれました。スイッチをONにするとシステムが起動、しばらく時間がたったのちにスタンバイ状態となり、わずかにスタックの作動音がするだけで動き出せる状態に。通常の大型トラックであれば、ディーゼルエンジンの大きな音が目立つところで、無音で動き出しスタンバイとなるのはかなり新鮮な印象です。もちろん排ガスは出ず、排出されるのは水だけです。実際に車両下部から水が排出される様子も確認できました。

「エンジンを搭載しないことによる振動の軽減、また走行中のシフトチェンジが必要なくなる点は、ドライバーの負担軽減にもつながります」と日野自動車の説明員は話します。なお、実際の走行の際には、周辺の安全も考慮し、ハイブリッドやEV車にも搭載される疑似走行サウンドが流れるとのことです。

■夏涼しく、冬は暖かい! AGCの最新ガラス技術

 ガラス素材メーカーであるAGCブースでは、自動車・モビリティ向けに多くの製品を展示。レクサスRZに採用されている「Low-Eコート付き調光パノラマルーフ」の実物が展示されていました。

レクサスRZに採用されている「Low-Eコート付き調光パノラマルーフ」

 Low-Eは低反射の略称で、ガラスに特殊金属コーティングを施すことで優れた遮熱・断熱性能を発揮。夏は涼しく、冬は暖かさを保つことで、開放感をそのままに車室空間を快適に保つことが可能となっています。

 また、スイッチひとつで瞬時に透過光を調整可能な調光タイプとなっており、従来のガラスルーフ車両で必需品だったサンシェードを廃止。これはコスト削減、車体の軽量化、また頭上空間の確保にもつながるとしています。現地ブースではこの「Low-Eコート付き調光パノラマルーフ」の実物が展示されていました。

 このような多機能なガラスは相当に分厚いのではという先入観とは裏腹に、実際の製品はとても薄いことに驚きました。また、まぶしさを低減するために調光モードとなっている場合は、完全にシェードが覆われているような状態ですが、そこからスイッチの切り替えひとつで通常のガラスルーフのような透過モードに変わります。これはガラス内に特別なフィルムが挟まれ、そこに電圧を加えることでガラスが透明になる原理を生かしています。

 機能の拡充についてはOEメーカー(採用する自動車メーカー)の要望によって変わってくるとのことでしたが、クルマの機能の充実に期待感を抱かせる新技術でした。

AGCの「FIRカメラ搭載フロントガラス」

 AGCのブースでは、ADAS(先進運転支援システム)関連製品である「FIRカメラ搭載フロントガラス」も注目されていました。FIRは遠赤外線の意味で、夜間にヘッドライトの照射範囲よりも遠い場所の人間や物体が検知可能となり、「ナイトビジョン」という名称で採用されている例もあります。 

 最近の可視型ADASカメラはフロントガラス上部に取り付けられる場合が多いのですが、FIRカメラはフロントグリルやバンパー内に搭載される例がほとんどでした。これはフロントガラスの透過率をクリアできる基準だと、FIRカメラの光を通すことができず、機能を働かせることができなかったためです。

 AGCはその課題に対し、FIRカメラの照射範囲のみを別部材のガラスに組み替えることで、フロントガラス室内側上部へのFIRカメラ搭載を実現。1枚モノのフロントガラスの一部のみを素材変更することは、生産性や耐久性など課題が多くあったそうですが、それらをクリアすることによって、上方位置への搭載が可能になり、より遠方の認識が可能になりました。またワイパーの作動範囲内であることから、悪天候時のカメラ前の洗浄なども別機器で対策する必要がなく、コストダウンも図れるようになったとのことです。

 フロントガラス上部には、現在ADAS関連のさまざまなカメラ、センサーが搭載されるようになり、いわゆる「場所取り合戦」状態となっていますが、AGCは自社の高いガラス技術を用いることでADAS関連製品の普及に貢献することを考えており、「FIRカメラ搭載フロントガラス」は2027年に量産採用実施を目指し、引き続き開発を進めるとのことです。

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