ひと昔前は「運転が終わっても、すぐにエンジンを切ってはいけない」と言われていました。それは故障を防ぐためということでしたが、では現代のクルマでも同じように対応した方が良いのでしょうか。
■クルマのエンジン「運転後すぐ切るとNG」?
ひと昔前は、「クルマの運転が終わっても、すぐにエンジンを切らずにしばらくアイドリング状態を続けてからエンジンを切った方が良い」と言われていました。
その理由としては「そうした方がエンジンへの負担が少ないから」とのことでしたが、それは正しかったのでしょうか。
そして、現代のクルマでも同じように対応した方が良いのでしょうか。
エンジンをすぐ切ってはいけないと言われていた理由や最新の現状について、中古車ディーラーに勤める整備士A氏に話を聞いたところ、以下のような回答がありました。
「かつては、運転終了後もしばらくアイドリング状態を続けるように言われていたことは本当です。
あれは『アフターアイドリング』と呼ばれるもので、過給器のひとつである『ターボチャージャー(ターボ)』を搭載した高性能なクルマ(ターボ車)で必要とされていた行為です。
そのため、ターボを搭載していないノンターボ車であれば、今はもちろん昔もアフターアイドリングをする必要はありません。
そしてターボ車がアフターアイドリングを必要としていたのは、ターボチャージャーの部品である『タービン』がエンジンオイルで冷却する仕組みになっていたためです。
エンジンが停止するとエンジンオイルの供給も停止してしまいます。するとタービンが冷却されず、長時間高温状態が続いてしまい、最悪の場合故障してしまう可能性もあるのです。
それを防ぐためにも、ターボ車は運転が終わってからもしばらくアイドリング状態を続けてタービンを冷やす必要があったのです」
昔もターボの搭載されていないクルマは運転後すぐにエンジンを切っても特に大きな問題はなく、高性能なターボ車だけはしばらくエンジンをかけておく必要があったとA氏はいいます。
しかし、運転が終わってからもエンジンをすぐ切れないとなると、日常生活でも不便なときがありそうです。
はたして、現在のターボ車ではどのようになっているのでしょうか。先ほどの整備士A氏に再び聞きました。
「最新のターボ車ではタービンの性能が向上していることに加えて、アフターアイドリングをせずとも内部を適切に冷却するシステムが搭載されているため、アフターアイドリングは必要ありません」
ただし、昔ほどデリケートに扱う必要はありませんが、現代においても「アフターアイドリングが必須だった時代のターボ車」などの旧車は、今でも変わらずアフターアイドリングが必要だといいます。
また、逆に最新モデルであってもレースチューンを施したようなハイパワーのクルマで、かつ高い負荷のかかる運転の直後であれば、今でもしっかりとアフターアイドリングをした方が良いケースがあるとA氏は話します。
■もはや懐かしい「ターボタイマー」とは
このように、昔のターボ車にはアフターアイドリングが必要で、切っても切り離せないものでした。
とはいえ、運転が終わった後に数分じっとクルマで待っているのはなかなか面倒なもの。
そんな「毎回アフターアイドリングをしたくない」という人たちから支持され、当時大活躍したアイテムが「ターボタイマー」です。
ターボタイマーは、あらかじめ設定した時間までエンジンを動かし続けてくれる機能を持ち、例えば「5分」と設定しておけば、エンジンキーをオフにした状態でも、5分後まではエンジンが動き続けます。
そして設定の時間が来れば、自動的にエンジンがストップするという優れものでした。
運転後にクルマで待たなくても良いという便利さから、かつてはターボタイマーはターボ車にとっては必須のアクセサリーでしたが、現在のようにアフターアイドリングが不要になったことで残念ながら出番は激減。
ほぼ見ない「懐かしのカーアクセサリー」になってしまいました。
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クルマの進化によって、「運転後もクルマとしばらく待つ」という懐かしい行為が必要なくなったことは、間違いなく利便性が高まり喜ばしいことですが、その行いがかつてのアクセサリーとともに忘れ去られていくことに時代の変化と一抹の寂しさを感じる人もいるかもしれません。