MT(マニュアルトランスミッション)好きの人は「運転が楽しい」といいますが、いったいMTの何がそんなに“楽しい”のでしょうか。
■「MT操作」には「ロマン」があるのだ!
昨今は、国産スポーツカー人気急騰の影響もあり、メーカーのラインアップにおいて、MT(マニュアルトランスミッション)の設定がわずかながら増えています。
AT(オートマチックトランスミッション)全盛のなか、あえてMTを選ぶ人たちは「運転が楽しい!」といいますが、具体的にはMTのどういった点が“楽しい”と感じるのでしょうか。
2023年7月現在、国内メーカーの乗用車におけるMT車のラインアップとしては、トヨタでは「ヤリス」「GRヤリス」「GRカローラ」「GR86」「カローラアクシオ」「カローラフィールダー」「C-HR」があります。
ホンダでは「N-ONE」「N-VAN」「シビック」「シビック タイプR」、日産は「フェアレディZ」、スバルは「BRZ」、マツダは「マツダ2」「マツダ3」「CX-3」「CX-30」「CX-5」「ロードスター」「ロードスターRF」、スズキでは「スイフト」「スイフトスポーツ」「ワゴンR」「ジムニー」「ジムニーシエラ」、ダイハツは「コペン」といった具合です。
こうして並べてみると、スポーツモデルではないクルマにもMT車が設定されており、一時期の絶滅状態からやや脱しつつあります。
ただ、そうはいっても、日本で新車販売されるすべての乗用車に占めるMTの割合は1.4%(自販連、2019年データ)と極めて少数派です。
ちなみに日本トレンドリサーチの「普通自動車運転免許の取得」に関するアンケートによると、日本国内のAT限定免許証の取得比率は、30代以下は約64%、40代は約36%、50代以上は約26%だったとのこと。
AT限定免許が設定された1991年頃は、まだまだ「とりあえず免許はMTで取るべし」といった風潮がありましたが、20代や30代だと、もはやそうした考え方は廃れてきたのかもしれません。
ただ、世界を見わたすと、AT車の比率が高いのは、日本とアメリカ、オーストラリア、東南アジアなどの一部であり、欧州をはじめとしたその他の地域では、いまでもマニュアル車の販売台数のほうが圧倒的に多いようです。
なかでもヨーロッパのドライバーは「クルマをコントロール」することを運転の楽しみのひとつにしているといいます。
ではATとMTの違いとは、いったいどこにあるのでしょう。
それは「自分でギアを選択し、操作する」ところです。
ATでも、たとえばパドルシフトなどで任意のギアを選択することができますが、操作する醍醐味は大きく違います。
MT車の場合は、エンジンをかける前にクラッチを踏んでスタートボタンを押し、エンジンがかかったらギアを1速に入れ、ゆっくりとクラッチを戻すといった、手と足の連動が必要不可欠です。
しかもその操作は、エンジン回転の高まりや速度の上昇に応じた細やかな調整をともないます。
クルマの運転に興味がない人にとってそれは「面倒な行為」としか感じられないのかもしれませんが、MT乗りのドライバーは「積極的にみずから機械を操作する」ことに対して、むしろロマンを感じています。
それはなにも、わざわざサーキットや峠道をハイスピードで走らせなくても、しっかりと感じることができます。
普段の街乗り走行で、手でシフトしながら足でクラッチを踏み、ガチャガチャと操作しながら走る……それだけでMT車は十分に「楽しい」のです。
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最初は苦労しながらもMT車を乗っていると、ある日ふと、上手くなっていることに気がつきます。
そうしたドライバー自身の「成長」を感じられるのも、MT車の特徴でもあります。
これをきっかけにMT車の運転に興味を持っていただけたら、いちMT派の筆者(河馬兎)としてもうれしい限りです。