クルマには様々な技術が盛り込まれています。その中には一見意味がないように見えるものもありますが、クルマに装着される小さな角にはどのような役割があるのでしょうか。
■小さな「謎の角」 実はF1からフィードバックされた凄いヤツ
最近のトヨタ車のドアミラーやテールランプ付近にトゲのようなツノのような「謎の突起」が付いています。
一見、不要な突起のように見えますが、どのような意味があるのでしょうか。
ドアミラーやテールランプ付近にある小さな突起物ですが、一般的に「ボルテックスジェネレーター」と呼ばれています。
「ボルテックスジェネレーター」は突起状の部分により意図的に風の流れを変えることで空力性能を向上させるものです。
とくにトヨタが登録商標を取得した「エアロスタビライジングフィン」が有名です。
存在感は控えめですが、実はF1で採用された技術がフィードバックされたもので、空気抵抗を減らす効果があります。
クルマは走行中に、ミラーの付け根やテールランプ周りに空気がぶつかり、気流の乱れが発生します。
気流の乱れはやがて渦となってクルマの挙動を不安定にさせますが、エアロスタビライジングフィンが取り付けられていることによって、空気の圧力を低減させることによってクルマの挙動を安定させてくれます。
300km/hを超える速度域のF1の世界では、空力性能が重要視されエアロスタビライジングフィンが採用されていますが、速度域がはるかに低い乗用車でも搭載されるようになりました。
実際に、トヨタがエアロスタビライジングフィンを採用しているクルマは数多く存在します。
2011年にトヨタ「カムリ」が初採用されたのをきっかけに「アクア」や「ヴィッツ」などのコンパクトカーからミニバンの「ノア/ヴォクシー」。
SUVの「ランドクルーザー」、商用バンの「ハイエース」、さらにはレクサスのフラッグシップセダン「LS」まで様々な車種に設定されています。
このように、トヨタ・レクサスの多くの車種に採用されているエアロスタビライジングフィンですが、空力性能や燃費はどれだけ向上するのでしょうか。
■「謎の角」は燃費に効果アリ? どのくらい変わるのか?
空力の効果に改善がみられるエアロスタビライジングフィンですが、F1の超高速域とは違って街乗り利用ではなかなか恩恵が受けにくいのが現状です。
しかし高速道路の走行においては、リアの安定性の向上や回頭性が改善されているようです。
数値で表しにくいフィーリングの部分はユーザーの感覚的な部分が多く、感じ方も千差万別といえるでしょう。
一方で燃費のほうは、エアロスタビライジングフィンを取り付けることによってどれくらいの効果があるのでしょうか。
たとえば、市街地での空気抵抗による燃費低下率は1%から2%のマイナスといわれていますが、セダンのルーフ後端にエアロスタビライジングフィンを装着した場合、空気抵抗が改善されて1%程度ほど燃費が改善されるようです。
1%程度の燃費向上ということならリッター20km/Lなら0.2km/Lしか改善されない結果になりますが、小さい凹凸だけで半永久的に燃費の向上が望めるなら、長い年月を走行すればするほど、その恩恵に預かれるということになるでしょう。
空力性能向上による走行安定性や燃費の向上など、メリットが豊富なエアロスタビライジングフィンですが、他車などへの取り付けは可能なのでしょうか。
トヨタ車の場合は純正部品で用意されており、価格は1万円以上しますが品質はお墨付きです。
トヨタ純正部品以外でもカー用品店やネットショップなどで多数見かけ、なかには1000円以下のボルテックスジェネレーターもあるぐらいです。