多くのクルマにはスピードメーターに隣り合うように「タコメーター」が装備されています。どういった役割を持ち、どのように活用すればいいのでしょうか。
■「タコメーター」の役割とは?
クルマの状態を知る上でメーターの表示は欠かせませんが、スピードメーターと隣り合うように装備されているものに「タコメーター」があります。
普段あまり意識するものではありませんが、どういった役割を持っており、活用方法はあるのでしょうか。
タコメーターは0からはじまり、ほとんどのクルマでは最大5から8ほどの数字が振られ、中央部には×1000rpmと記載されています。
このタコメーターの正式名称は「回転速度計」といい、エンジンの回転速度を測定する計器になっているのです。
では、なぜエンジンの回転速度を表示する必要があるのでしょうか。自動車整備工場に勤めるF整備士は以下のように話します。
「ガソリンなど燃料を燃やして出力を得る内燃エンジンでは、この回転速度がトルクなどの出力に大きく関係します。
エンジンはピストン内の爆発によって、車軸を回す大出力を得る仕組みになっていますが、必ずしも高回転になるほどハイパワーになるわけではありません。
実はどのエンジンにも、効率よくパワーが引き出せる回転域(いわゆるパワーバンド)というのがあり、この回転域を効率よく使うためにギアで変速する必要があるのです。
またパワーバンドに満たないエンジン回転速度のほうが好燃費になりやすいこともあり、その回転速度を任意で調整するための情報をドライバーに認識させる役目を担っているんです」
エンジンを必要に応じて効率よくパワーを引き出すために、タコメーターの指針を確認することで、最適なアクセルの踏み加減やシフトポジションを選択することができます。
一方で、現在国内で新車販売されるクルマの98%はAT(オートマチックトランスミッション)車が占めています。
自分でシフトポジションを選択するMT(マニュアルトランスミッション)車と違い、AT車はエンジン回転速度や車速、アクセルペダルの踏み加減などを判断して自動で変速してくれる機構です。
その場合ではタコメーターの存在も不要になってきたとも捉えられますが、実際にはどうなのでしょうか。F整備士は以下のように話します。
「確かにATメインの現代では重要度が低い計器になっています。現に軽自動車の一部やMTしかない大型バイクでもタコメーターを装備しないケースがあります。
またハイブリッド車の場合、エンジンは動力源ではなく発電機としての役割が大きく、速度に関係するというより効率のいい回転域を保つように自動設定されています。
そう考えると、回転速度の情報はあまり重要視されなくなったといえます。
一方で、電気やモーターに依存する領域が増えたとはいえ、やはりエンジンの状態をひと目でわかる計器を望むユーザーも多いのでしょう。
現在ではタコメーターはマストではない計器になりつつも、エンジンが動いている雰囲気を演出する要素のほうが強いでしょうね」(F整備士)
実際、スポーティさを追求したモデルではスピードメーターよりもタコメーターを意識した計器配置にしたり、標準車ではタコメーターがなくても、スポーティグレードのみ装備しているケースもあります。
AT車の普及とともに、タコメーターの存在意義も大きく変化したようです。
■AT普及で要らなくなった…? タコメーターの活用方法は?
現在では演出的な部分でタコメーターを装着しているケースが多いようですが、せっかくですからうまく活用したいものです。何か役立つ方法はあるのでしょうか。前出のF整備士は以下のように話します。
「やはり1番の活用としてはエンジンの状態を把握し、求める性能を引き出すための目安とすることです。
エンジン回転速度が上がり過ぎていれば、そのぶん燃料がたくさん噴射されます。結果、燃料消費量も増大してしまいます」
「たとえば高速道路を、2600〜2800rpm(回転)で80km/h巡航すると、非常にいい燃費を記録するクルマがあるとします。
一方で、少し速度を上げ100km/h巡航にすると3200rpm前後くらいを示します。
実はこのわずか数百rpmでも燃費はかなり変わり、さらに追い越しなどでパワーを得るためにシフトダウンを行い、5000rpmほどまで回転を上げてしまえば、一気に燃費が悪化します。
燃費を良くしたいならタコメーターでエンジンの回転速度を意識した走りのほうがいいんです」(F整備士)
エンジン回転数と燃費は大きな関連性があり、同じ速度でもできる限り回転数を抑えたほうが良いというのは、昨今のATが以前よりも多段化している(より燃費効率を高めるため、変速段数が増えている)ことと結びつきます。
しかし、先述の通り昨今普及しているハイブリッド車ではタコメーターの重要性はさらに低くなっており、その代わりにタコメーターのような針を持つものの、燃費や電費を向上させるためのインジケーターが装備されているケースが増えています。
タコメーターに加えて、緑色で「eco」表示をするなど、表示色でもハイブリッドシステムの稼働状況を教えてくれるものです。
しかもアクセルを戻したり、ブレーキング時にはバッテリーに回生電力を蓄える回生ブレーキの動作状況も確認できます。いずれはタコメーターに取って代わるメーターの1つになりそうです。
「エンジン搭載車では体感できない回生制動を体感できるのは大いに魅力ですが、やはりタコメーターと連動してエンジンの回転速度をコントロールする感覚を、今のうちに身につけておくのがいいと思います。
機械が進化し便利になっていくからこそ、クルマがどんな操作をしてくれているかを理解できるようにしておいて欲しいですね」
不要になったと思われるタコメーターも、クルマを動かしているという雰囲気を満たすものではなく、実は活用次第で低燃費走行を可能とする大切な計器なのです。
ドライブ時にはタコメーターの動きを観察しながら運転してみることで、新たな発見があるかもしれません。