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クルマの「エンジンオイル」って交換しないとダメ? 実は「他にもある交換すべき」オイルは? トラブル避けるメンテ方法とは

くるまのニュース 2023年7月26日 20時10分

クルマのメンテナンスで欠かせないものに「エンジンオイル交換」がありますが、そのほか定期的に交換しなければならない「オイル」はあるのでしょうか。

■「エンジンオイル」は当たり前 それ以外に「オイル」はある?

 クルマの「血液」とも言われる「エンジンオイル」は定期的な交換が必要です。
 
 では、エンジンオイル以外にも定期的に交換しなければならない「オイル」はほかにもあるのでしょうか。

 エンジンオイルをはじめとするオイル類(フルードとも呼ばれる)は、クルマの多くのパーツでそれぞれ多様な役割を果たしています。

 複雑かつ精密な機械の集合体であるクルマは、エンジンをはじめ、トランスミッションやブレーキなどさまざまな金属部品が与えられた役目を担い稼働しています。

 ただし、金属パーツ同士だけでは擦れてスムーズに動かないほか、摩耗してしまったり、動作が素早く繰り返せば熱を帯びて変形や破損するおそれがあります。

 そんななか、オイルは潤滑や冷却だけでなく、密封性の保持、清掃、防錆といった各機構を円滑に動かす役割を果たしているのです。

 だからこそ、その負荷をもろに受けるオイル類は定期的な交換が必要といわれるわけです。

 では、エンジンオイル以外にはどんな種類があるのか、整備工場の代表を務めるT整備士に聞いてみました。

「まずはトランスミッション内部に満たされた『MTF』『ATF』『CVTF』と呼ばれるオイルです。

 ここで注意して欲しいのは、それぞれまったく別物のオイルであるということ。同じミッション用オイルではありますが、成分が違いますので間違えないように注意が必要です」

 AT(オートマチックトランスミッション)はほとんどのクルマの場合、トルクコンバーターという機構を稼働させ、CVTではプーリーと呼ばれるパーツを稼働させることでそれぞれ変速・動力伝達できる機構です。

 その際に発生する削れ粉を洗い流すだけでなく、変速時の衝撃を緩和したりスムーズに切り替え動作を行うとともに、オイル自体も動力を伝達するという重要な役割を担っているものなのだとか。

「ただし、ATFやCVTFはゴミが混入すると故障の原因になったり、量の調整もシビアなど、一般の方では基本的に交換はできず、プロであっても非常に取り扱いが難しいんです。

 乗用車は約4万kmごとに交換したほうがよいといわれていますが、距離も伸びやすく使用頻度も高い商用車の場合は1年ごとに交換する方もいらっしゃいます。

 できれば車検ごとに交換をしたほうがコンディションを維持しやすく、トランスミッション故障という大きな出費を伴うトラブルを予防できるため、推奨しています」(T整備士)

■交換は必要なくても交換したらクルマが「長持ち」するものも

 走る上で欠かせない機構の多くには専用のオイルが使用されており、これは快適装備といわれるものにも使用されています。

 そのなかでもあまり交換する必要性はないとされる一方で、実は定期的に交換したほうが結果として機構が長持ちするものもあるといいます。

「油圧式パワーステアリング(パワステ)の場合は『パワステフルード』と呼ばれるオイルを使用します。

 これはステアリングボックス内の潤滑とともに、オイル自体も操舵力を強める油圧として使われていますが、劣化すると異音がしたり操作が重いなどの違和感を覚えることがあります。

 また場合によっては、オイルホースの劣化によって漏れを起こす可能性もあるので、オイルの状態だけでなく、パワステ機構自体を車検ごとにチェックしてもらうのがいいと思います」(T整備士)

定期的に交換していれば30年ほど経過したエンジンもこのようにキレイに保てる

 命にも関わる大事なブレーキにも「ブレーキフルード」と呼ばれる専用のオイルが使用されています。

 こちらはドライバーがブレーキペダルを踏んだときに、その踏んだ力を倍増させるとともに、ブレーキローター(ブレーキドラム)を介してブレーキパッド(ブレーキシュー)に伝達する役割を果たしています。

「こちらもATFやCVTFと同様に扱いが難しいオイルです。あまり気にされていない方も多いのですが、吸湿性があって劣化しやすい消耗品でもあります。

 パッドがシューに押し付けられる際に発生する熱の影響で劣化が進み、ペダルの違和感だけでなく、ブレーキの効きにも大きく影響してしまいます。

 また水分が混入してしまうと沸点が低下し、泡立ってしまうヴェーパーロック現象が起きやすくなってしまうため、キャリパー内のピストンやオイルシールなどの劣化抑制や密閉性保持の部分でも、車検ごとに交換をお勧めしています」(T整備士)

 さらに、FR(後輪駆動)車や4WD(四輪駆動)車には特有のパーツもオイルで満たされているのです。

 クルマが曲がるとき、内側のタイヤと外側のタイヤには回転差が生じます。これを解消するために装備されているデフ(デファレンシャルギア・差動装置)にも専用の「デフオイル」が使用されています。

「FF(前輪駆動)の場合はトランスミッションと一緒になっているケースも多いのですが、FRや4WDには個別のデフが装着されているため、こちらもメーカー推奨距離か約6万kmごとに交換が推奨されているオイルです。

 また、スポーツ走行などでデフの働きを切り替えるLSD(リミテッド・スリップ・デフ)にも、より短いサイクルで交換が必要な専用の高性能オイルが必要になります」(T整備士)

 ほかにも、オイルではないのですが定期的に必要な専用の液体を使用するものもあります。

 クーラント(冷却水)はエンジン稼働時の熱を吸収するとともに、冷却フィンが装着されたラジエーターに循環させ、放熱処理をしてくれる大事な消耗品です。

 最近では長寿命性能を持たせたロングライフ・クーラント(LLC)も登場しています。

「クーラントには冷却という目的だけではなく、防錆剤も配合されており、ラジエーターやホースなどの冷却経路やエンジン内部の水路を循環することで、サビの発生も抑制してくれます。

 こちらも車検ごとの交換が目安となっていますので、できれば交換しておきたい消耗品ですね」(T整備士)

 このほか、クルマの足回りで使用されているダンパー(ショックアブソーバー)も多くが油圧式であるほか、ひとつの車種特有の機構で潤滑剤や作動油としてオイルが使用されているケースもあります。

 T整備士いわく、定期的なオイル交換をすることで良好なコンディションを維持しやすいといいます。

 エンジンオイルも含めてこうしたオイル・フルード・冷却水は「油脂類」などとひとまとめにいわれることもあります。

 エンジンオイルだけでなくほかの油脂類も交換することで、多額の修理費用がかかる重大トラブルを予防できるとともに、各部の状態チェックにも繋がります。

 一方で、素人では交換作業が難しいものも多くあるため、自身でも確認可能なエンジンオイルの量や汚れなどの状態チェックはこまめに行いつつも、各油脂類の交換自体はプロにお願いしたほうがよいでしょう。

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