クルマのリアコンビネーションランプ(テールランプ)は「赤・オレンジ・白」のランプで構成されますが、古いクルマにはオレンジの点灯がないクルマがあるといいます。ほぼ赤1色のランプをどのように光らせていたのでしょうか。
■リアコンビランプは3色で構成! かつては2色の時代も!?
クルマのテールランプ(リアコンビネーションランプ)は、ドライバーの意思を後続車に伝達する重要な部品で、現在では「赤色」「橙色(だいだい色:オレンジ)」「白色」の3色に点灯します。
しかし1970年代以前には、橙色のランプが装着されていない「2色点灯」のクルマがあったのを知っていますか。
オレンジ色の構成色が減ることで、クルマの後部のデザインはすっきりするかもしれませんが、後続車は前のクルマの意思を汲むことが大変だったことでしょう。
このように橙色ランプがなく、赤・白二色のテールランプ構成だった頃のクルマについて紹介します。
現在のリアコンビネーションランプの色には、赤、橙、白の3色が使用されており、赤い部分は、2種類の点灯パターンがあります。
まず、ライトスイッチを「スモール点灯」または「ヘッドライト点灯」の位置にすると淡く点灯する「テールランプ」です。
またブレーキを操作すると明るく点灯する「ストップランプ」もあります。
テールランプ点灯の状態でブレーキを操作すると、赤い部分は淡い点灯から明るい点灯に変化し、後続車のドライバーに減速することを伝えています。
1つのランプで2つの意味が持たされていますが、ブレーキ操作時には室内やバックドアなどに装着された「ハイマウントストップランプ」という専用のブレーキランプも点灯しますので、見分けることは容易です。
橙色の部分は、フラッシャーレバースイッチ(ウィンカーレバー)を操作すると左右いずれかが点滅し、ハザードスイッチを操作すると両側が点滅します。
白い部分は、バックギアやRレンジを選択すると点灯する「バックアップランプ」です。
なお海外の一部のクルマでは、フラッシャースイッチを左右どちらかにしたままエンジンを止めると、選択した方のテールランプが淡く点灯する「駐車灯」という機能を持ったクルマもあります。
国産車でも一時採用された時期がありますが、現在では採用されていないようです。
このように、テールランプとストップランプは兼用であるものの、ハイマウントストップランプの装着が義務付けられてから、より理解しやすくなったといえます。
■リアコンビランプは時代のトレンドとともに進化し続けている
テールランプ(リアコンビネーションランプ)は、後続車に自車を見せる重要な部分であり、自動車デザインの上でも印象的な部分です。
自動車メーカーもランプの形状や光り方などを常に研究しており、マイナーチェンジなどでも細部のデザインを変更することがよく見られます。
1990年代後半には、ヘッドライトのデザインと合わせるカタチで、反射板の効果でキラキラ感を出した「マルチリフレクター」式が流行りました。
テールランプとストップランプについては、2000年代前半頃から、低電力消費量ながらより明るく点灯できるようになった「LED」タイプが採用されます。
当初のLEDは粒状にしか点灯できませんでしたが、導光技術の向上などによって、明暗の演出が可能になっていきます。
そして2010年代後半から、橙色部分が内側から外側に向かって順次点灯を開始しては消灯する、「シーケンシャルフラッシャーランプ」が流行しました。
一方で、LEDフラッシャーを電球の様にゆっくり点滅させている車種もあります。
このように、リアコンビネーションランプのデザインには色々な流行がありました。
しかし交通安全にかかわる重要な部品ですから、明るさや色、作動の方法は法令で定められています。
法令が情勢に合わせて改正される中でも、大きな変更として挙げられるのは、1970年代初頭実施の「フラッシャーランプ橙色化」です。
この改正以前のクルマは、フラッシャーランプ(ウィンカーやハザードランプ)はテールランプと兼用することも可能でしたので、フラッシャーランプはテールランプの赤い部分を点滅させているクルマもありました。
法改正は1971年以降の新型車から適用され、すでに発売されているクルマもマイナーチェンジの時期にフラッシャーを橙色に変更しました。
例えば日産「スカイライン」では、1968年発売の“ハコスカ”ことC10系(3代目)スカイラインの場合、モデル末期の1972年式でもフラッシャーはテールランプ兼用でした。
しかし1972年にモデルチェンジした“ケンメリ”“ヨンメリ”ことC110系(4代目)スカイラインでは、橙色のフラッシャーを採用しています。
一方、1970年発売のトヨタ「セリカ」(初代)は、当初フラッシャーとテールランプが兼用のいわゆるワンテールでした。
それが1972年のマイナーチェンジでフラッシャーを橙色に変更し、赤い部分から独立させています。
リアコンビネーションランプの構成は、このように1970年代初頭のフルモデルチェンジやマイナーチェンジの時期に変更されており、車種分類の歴史上でも大きなポイントになっています。
■2色のリアランプ、どうやって光るの!?
フラッシャーランプが橙色ではないと、どのように点灯するのでしょうか。
テールランプは淡く、ストップランプは明るく点灯、フラッシャーは点滅となることは、現在のクルマと同じです。
スモールランプ消灯状態でフラッシャースイッチを操作すると、赤い部分が消灯と明るい点灯を繰り返す点滅となります。
スモールランプを点灯させると、赤い部分は淡く点灯、さらにフラッシャースイッチを操作すると、スイッチを操作した側の赤い部分が淡い点灯と明るい点灯を繰り返します。
スイッチを操作していない方は淡い点灯を続けます。
また、スモールランプを消灯させ、今度はブレーキを操作しながらフラッシャースイッチを操作すると、スイッチを操作した側は明るい点灯と消灯を繰り返し、スイッチを操作していない側は明るい点灯になります。
さらにスモールランプが点灯した状態で、ブレーキを踏みながらフラッシャースイッチを操作すると、スイッチを操作した側は明るい点灯と淡い点灯の繰り返し状態となり、スイッチを操作していない側は明るい点灯のままになります。
もちろん、ハイマウントストップランプなどついていませんから、ブレーキと連動した専用ランプもありません。
言葉だけの説明ではちょっとわかりにくいところもありますが、このように、後ろのクルマのドライバーはすべてのランプの点灯、消灯状態を確認しながら、前の車の意思をくみ取らなければならなかったのでした。
当時は、この点滅パターンの誤認による事故が多かったのかもしれません。
そのためか、タクシーなどでは後席の後ろの左右に赤いランプを装着し、ちょうど現代のハイマウントストップランプのように点灯させているクルマもありました。
■「シーケンシャルウィンカー」は安全装備だった!?
近年流行のシーケンシャルフラッシャー(ウィンカー)ですが、実はこの頃のクルマにもすでに起源といえるものがありました。
橙色ランプを内側から外側に向かって順次点灯させるシーケンシャルフラッシャーは、単なるファッションでしたが、効果的なものでした。
この頃のシーケンシャルフラッシャーは、3分割程度に分割した片側のテールランプが、内側から外側に向かってのどかに順次点灯していくというものです。
テールランプでは淡く点灯、ストップランプは明るく点灯する中、フラッシャーの場合には内側から外側に向かって点灯したりや明るさが変わっていきますので、後続車のドライバーはフラッシャーだと理解しやすくなったのです。
このシーケンシャルフラッシャーは、日産「ブルーバード」(510型)の2ドアクーペや、初代「ローレル 2ドアハードトップ」、トヨタ「コロナ マークII」などのほか、カスタムを施した大型トラック(いわゆるデコトラ)や観光バスにも採用されていました。
橙色のランプがなかった頃ならではの、時代を映す安全装備品だったといえます。
このように、橙色のランプがない旧車の後ろについたら、前方の状態にも注意しつつ、前のクルマのランプにも注意しておかなければなりません。
前のクルマの赤いランプの部分がいきなり点滅をはじめ、パニックになって急ブレーキを操作したり、淡い点灯から明るい点灯になったのを見落として前のクルマに追突! などとなったら大変です。
これからそのような2色点灯の旧車を見かけた際には、少し車間距離を開けて余裕をもって眺めつつ、ランプの点灯状態を観察されてはいかがでしょうか。