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歩道の「謎の突起・棒」“名前”ご存じ? 暴走車から歩行者を守る「ポール」は“どのくらい”強いのか

くるまのニュース 2023年7月25日 7時40分

歩道に設置してあることの多い車止めですが、実は歩行者を守るための驚きの効果があるといいます。どういったものなのでしょうか。

■衝突事故から歩行者を守る「車止め」の効果とは

 アクセルとブレーキの踏み間違いなどにより、クルマが歩道や道路わきの建物に突っ込んでしまう事故がたびたび報じられています。

 こうした事故から歩行者を守る対策として、ボラード(車止め)が設置されていることがありますが、実際どのようなものなのでしょうか。

 ボラードは、駐車場や車道と歩道の間に設置されていることが多いですが、それらの境界を示すとともに、クルマから歩行者を守る役割も担っています。本来、ボラードは港の岸壁にある船を繋留するための杭ですが、道路にも設置されているものは一般的に車止めとも呼ばれています。

 交差点安全対策用車止め「インパクトボラード」を開発した株式会社サンポールの担当者は、製作経緯について以下のように話します。

「車止めは元々視覚的に進入を抑止する目的で、物理的にクルマを止めるものではありませんでした。そのため、公的な強度の目安もありませんでした。

 ところが、近年アクセルとブレーキの踏み間違いによる衝突事故などが人々の注目を集めるようになり、物理的にクルマを止められるような頑丈な製品のニーズが高まってきました。

 このような社会情勢を受け、弊社では2018年頃から社内基準を設けて実車衝突を含めた強度試験を重ね、そして2020年9月に車止めの支柱の中に独自のユニット『インパクトスリーブ』を組み込むことで40km/hの衝突衝撃を受け止めるインパクトボラードの開発に成功しました」

■実際に衝突させてみると…

 サンポールは、耐衝撃性の実車試験を動画に収録しYouTubeで公開しています。

 試験では、40km/hで走る乗用車をボラードにぶつけています。クルマは車止め(インパクトボラード)に衝突した衝撃でフロントグリルを中心に大きく損傷しますが、車止めの向こうに置かれたマネキンは無事でした。

サンポールが行った「インパクトボラード」の実車衝突実験(画像:サンポールのYouTubeチャンネルより)

 こうした歩行者を守るための車止めは、2019年に滋賀県大津市で起きた事故も影響しているそうで、前出の担当者は以下のようにも話します。

「あの事故によって全国的に歩行者等の保護対策としてボラードを設置するニーズが高まり、公的な目安設定の必要性が生まれました。

 2021年3月には交差点における車止めの公的な推奨強度の目安が明確化されました」

 日本道路協会の「ボラードの設置便覧」では、ボラードは車両重量1.8t、45km/hで交差点の歩道に進入する車両を停止させられることが条件になっており、インパクトボラードは実車衝突試験によりこの条件を満たすことを確認しています。

 滋賀県で発生した事故の影響もあり、昨今では歩行者を保護すべく強度が求められたボラードが設置されるようになっているといいます。

 サンポールは2020年9月のインパクトボラード発売以降、約3000本ほどを販売しており、単柱型のほか、アーチ型、柵タイプなど様々な種類も展開しています。

 インパクトボラードの設置場所や設置後の効果について、前出の担当者は以下のように話します。

「右直事故などが起きやすい交差点や車道と歩道の間、アクセルとブレーキの踏み間違い事故が起きやすい店舗の建物と駐車場の間などの場所に多く設置されています。

 実際に設置後には、歩道や店舗建物への車両の進入を防いだなど、交差点や道路や店舗において、実際に車の衝突から歩行者や建物を守った事例が多々あります」

※ ※ ※

 ペダルの踏み間違いによる事故は、ドライバーが十分気を付ける必要があるといえますが、歩行者の身を守るためにも、注意喚起から安全確保へと車止めのあり方が変わってきているといえます。

 歩行者の安全を守るインパクトボラードは、意外と身の回りに存在するかもしれません。

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