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なぜトヨタは「ヴェルファイア」を残した? 「アルファード一本化」から一変… 幻の「アルファードエアロ仕様」ベースに誕生した背景とは

くるまのニュース 2023年7月27日 7時10分

2023年6月21日に発表されたトヨタ新型「アルファード」と新型「ヴェルファイア」ですが、当初は「アルファード一本化」が既定路線だったと言います。では、なぜ新型ヴェルファイアは存続され、人気が高いアルファードよりも個性の強いモデルとなったのでしょうか。

■元々は「アルファード一本化」だったが…なぜヴェルファイアは残ったのか

 トヨタ「アルファード」とトヨタ「ヴェルファイア」は、同社を代表する高級ラージミニバンとして販売されているモデルです。
 
 2023年6月に約8年ぶりのフルモデルチェンジを遂げましたが、事前には「ヴェルファイアは廃止されるのではないか」という噂が出ていたものの、それぞれ新型が登場しました。
 
 ヴェルファイアが存続した背景には何があったのでしょうか。

 今回のフルモデルチェンジでアルファードは4代目、ヴェルファイアは3代目となりました。

 元々歴代モデルでは、ヴェルファイアの人気が高い時期が続いていたものの、先代において2017年に実施された大規模なマイナーチェンジやその後の改良などによってアルファード人気が高まったことで、ここ数年はヴェルファイアの存在感が薄れていました。

 実際に先代のモデル末期では、アルファード95%、ヴェルファイア5%という販売比率になっていたこともあり、今回のフルモデルチェンジでは当初「アルファード一本化」が既定路線だったと言います。

 しかし、結果として新型アルファード/新型ヴェルファイアはともにフルモデルチェンジ。

 発売から約1ヶ月後の販売比率は、新型アルファードが70%、新型ヴェルファイアが30%と計画通りの台数になっていると言います。

 このように「アルファード一本化」という既定路線を回避し、30%もの販売比率を占めることになったヴェルファイアには「専用装備」が数多く設定されていることも特徴です。

 具体的にはサスペンションやステアリングの専用チューニング、専用剛性パーツの採用、そして2.4リッターターボエンジンの設定など、「走りを意識した」仕様を設定するなどによってアルファードとの差別化を図っているのです。

 なぜ新型ヴェルファイアは当初の計画から一変して継続され、さらには専用装備を採用することになったのでしょうか。

新型「アルファード」のエアロ仕様を進化させて誕生した新型「ヴェルファイア」

 新型アルファード/新型ヴェルファイアの開発を担当したCV Company CV製品企画 ZH2 チーフエンジニアの吉岡憲一氏は次のように語ってくれました。

―― 元々「アルファード一本化」が既定路線だったと言いますが、最初はどのような計画だったのでしょうか。

 やはり人間は最初から2つの物があると、「どっちがどっち」って迷うと思うんです。

 そこで自分がチーフエンジニアになって「あまりあっちこっちやるよりも、1つのものに集中させたほうが絶対良いものができるだろう」と考えました。

 また当時の販売台数も95%がアルファードというように、差がついていたこともあったので、「アルファードに1つに専念をしてやっていこう」ということで開発の最初がスタートしました。

 これが結果的に良いアルファードが作れたというか。先代ではアルファードに標準/エアロ、ヴェルファイアに標準/エアロと4つの顔があったんです。

 しかし新型アルファードでは「ミニバンの王道」を追求していたこともあり、1つになったのがいまのデザインで、まずはひとつの良いクルマを作ることがスタートとなりました。

 また同時に色々試行錯誤をして、ベースの王道となるアルファードのエアロ仕様のようなものを作っていました。

―― では、どのような経緯でヴェルファイアが残る事になったのでしょうか。

 ミニバンの王道を追求するなど試行錯誤しているうちに、豊田章男社長(当時)から「ヴェルファイアっていう名前が好きで買っていただいているお客さまもいる、そういうお客様の気持ちをもう少し考えてみたら」と軽い感じで言われました。

 それでヴェルファイアの色々なお客さまに話を聞いたり、ディーラーに行って「なぜヴェルファイアはこんなに少なくなっちゃったの」という話も聞きに行きました。

 話を聞いている中で、やはりヴェルファイアのお客さまは少しアグレッシブ/スポーティな好みということが分かり、良いものとなった新型アルファードをベースにして「もう少し尖ったやつを作れないか」ということで、エアロ仕様を進化させたのが新型ヴェルファイアです。

※ ※ ※

 このような経緯で存続することになったヴェルファイアですが、なぜ新型では「走りを意識」した仕様が存在するのでしょうか。

■なぜ新型ヴェルファイアは「走り」にこだわった? 2.4ターボが専用設定のワケとは

―― なぜ、新型ヴェルファイアでは走りを意識した仕様になっているのでしょうか。

 ヴェルファイアのお客さまにはこだわった人が多いということもわかっていました。

 なかでも、たまに走るワインディングなどでグニャグニャした走りになるよりは、しっかりライントレースする性能が欲しいよねという気持ちになることもあります。

 そうしたこともあり、新型ヴェルファイアでは「走りが楽しいクルマ」を作れないかということで、色々とボディ補強を入れたり、ステアリング周辺にも色々なサポート機能を入れました。

 そのなかで1番効果があったのが「フロントパフォーマンスブレース」で、本当にステアリングの初期操舵が良くて、ロールやピッチングなどがシンクロするなどして、「これはヴェルファイアのお客さまに良いんじゃないか」ということで採用しました。

 ただし、後席に乗っていると「もう少し乗り心地が良くても」ということもあるので、そこのベストバランス(を追求した点)は新型アルファードの特徴となります。

新型ヴェルファイアに専用採用される「フロントパフォーマンスブレース」

―― では、2.4リッターターボエンジンを新型ヴェルファイアに設定した理由はどのようなことがあるのでしょうか。

 当初から2.4リッターターボエンジンを設定することは決まっていました。

 元々先代にはV型6気筒エンジン(の設定)がありましたが、新型でV6エンジンを「残す残さない」の議論を経て、「やっぱり動力性能が高いのがいいね」ということで2.4リッターターボエンジンを入れるというところにシフトしていきました。

 ただ2.4リッターターボエンジンは、音や振動の問題があったので、もちろん徹底的に対策をして、さらにはアクセルを踏んだ時に心地よい音にするなどの味付けをしました。

 また2.4リッターターボエンジンは他のエンジンよりも軽いこともあり、クルマ全体の軽快さが上がることなどもあり、新型ヴェルファイアにマッチしているということで設定しています。

走りにこだわった新型ヴェルファイア(画像は2.5リッターハイブリッド車)

※ ※ ※

 このように元々「ミニバンの王道」を追求して新型アルファードが開発されましたが、こだわるユーザーに対する一つの答えとして「走り」を意識した新型ヴェルファイアが誕生したと言います。

 実際に新型アルファード/新型ヴェルファイアを乗り比べると、後席での「移動の快適性」はどちらも遜色ないレベルですが、運転する人にとって新型ヴェルファイアはまさに「アグレッシブなミニバン」と言える存在となりました。

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