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首都高の「謎のイカ耳」何のため? ずっと造りかけ? 1箇所だけじゃない謎スポットの正体とは

くるまのニュース 2023年8月7日 11時10分

首都高速道路には、「イカの耳」のような道路がいくつかあります。途中で切れている謎の道路ですが、どのような目的で施工され、なぜ存在するのでしょうか。 

■首都高の謎の道、イカの耳。1960年代に生まれた幻の道路計画と関係していた

 首都高速道路を走っていて、「謎の途中で切れている道」を見かけたという人も多いかもしれません。
 
 いったいなぜ、首都高速道路にはこのような道路が存在するのでしょうか。

 実はこの道路は、ほかの路線とつなぐためのジョイント部分です。

 将来の道路整備計画に備えて、前もって合流部分だけがつくられており、上り道と下り道の両脇に1本ずつ、合計2本がついています。

 その姿を上空から見ると、本道の両端からそれぞれわずかに始まり、徐々に横幅を広げながら道1本分と同じ幅になったところで切断されています。

 本道の外側に三角形がはみ出しているように見え、それがイカの耳(エンペラ)に似ていることから、こうした合流部分は俗にイカの耳とも呼ばれています。

 首都高が一部開通したのは、日本が高度成長期だった1962年でした。

 その後も経済の発展に合わせてさまざまな路線が計画され、イカの耳もいくつか建設されてきたのです。

 では当時は、どのような路線計画があったのでしょうか。

 特に大規模だったのは、1960年代に計画された首都高内環状線といわれています。

 経済成長にともない都市圏が拡大することや、高速道路との接続を見越して、都心環状線の混雑を緩和するために構想が持ち上がりました。

 ルートは、皇居周辺を通る現在の首都高都心環状線と、新宿や渋谷など都心から約8キロ離れたエリアをつなぐ中央環状線との間を走る予定だったようです。イカの耳も準備されました。

 しかし、1970年代になると公害が意識されるようになり、内環状線の建設は頓挫しました。

 高速道路そのものが問題視され、高架で神田川を覆うことにも反発が起こります。

 最終的に地元住民の理解を得ることができなかったようです。

 とはいえ、内環状線の計画自体が取り消されることはありませんでした。

 そのため、すでにできていたイカの耳だけが現在でも残っているというわけです。

■よく見ると…あった! イカの耳スポット3選

 それでは、幻の内環状線につながる予定だったイカの耳をみてみましょう。

 耳の部分が長く見応えがあるのは、首都高5号池袋線の飯田橋料金所付近です。

 内環状線はここ飯田橋料金所付近で5号線に合流し、神田川沿いに進んでから1号上野線と接続、さらにその先は7号小松川線とつながる予定でした。

 実際に、1号上野線との合流地点である岩本町付近にもイカの耳があります。

 地上からは、昭和通りと靖国通りが交差する岩本町交差点の高架を見ればわかります。

 また7号小松川線では、きれいなイカの耳のかたちではないものの、両国ジャンクション付近の上り道と下り道にそれぞれ合流予定部分が残っています。

5号池袋線の早稲田出口にあるイカの耳(国土地理院「地理院地図」に編集部が一部加工)

 さらに、内環状線のほかにも未着工な道路はあります。

 例えば、1号上野線については、道路を中央環状線まで延伸する2期の整備計画があります。

 この延伸先である中央環状線の合流地点もイカの耳スポットです。

 荒川に沿った扇大橋北詰交差点から西新井橋北詰交差点の間にあるのですが、接続しやすいように内回り道側と外回り側のイカの耳に高低差がつけられています。

 また、首都高速神奈川3号狩場線では、かつて高速磯子線という新路線と接続する計画がありました。

 磯子線は、横浜高速2号線から分岐し、掘割川に沿って横浜市磯子区で高速湾岸線に接続する予定でした。しかし、建設は進まず、狩場線の阪東橋出入口付近にイカの耳だけが残っています。

 なお、イカの耳は新路線の接続のためだけに準備されるわけではありません。

 首都高湾岸線では、浦安料金所近くにある境川橋の付近に、出入り口ランプの建設に備えたイカの耳がみられます。この出入り口ができることにより、湾岸線と並走する国道357線との流れがスムーズになるそうです。

 これまで首都圏のポイントをみてきましたが、全国の高速道路にもイカの耳は存在するようです。

 いずれにしても、新路線がいまだ着工されていないということ。構想当時とは環境が変わり今となっては必要なくなったものの、計画書類上は残されているケースもあるようです。

 もちろん、道路建設には多大な費用がかかることもあり、こうした計画が着工する可能性は低いといえそうです。

※ ※ ※

 イカの耳の多くは、過去に計画された高速路線の名残りといえます。

 新線建設の見込みが少なくなったところでは、緑化されているケースもあるようです。

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