日産は2023年8月8日、新型「スカイラインNISMO」を発表しました。ベースの「スカイライン 400R」とはどのような違いがあるのでしょうか。
■「400R」との違いはどこ?
日産は2023年8月8日、4ドアミディアムサイズセダン「スカイライン」の特別仕様モデル「スカイラインNISMO」を発表しました。
ベースはスカイラインのハイパフォーマンスグレード「400R」ですが、どのような点に手を加えたのでしょうか。
スカイラインは1957年に登場。現行型は2013年11月に発表された13代目です。日産が国内販売しているセダンとしては唯一のモデルとなっています。
今回発表された「スカイラインNISMO」は、複数の改良を経た現行モデルのうち、ハイパフォーマンスグレードの400Rをベースとし、2代目「スカイライン GT」をオマージュ。スカイライン GTの集大成として、日産モータスポーツ&カスタマイズ(NMC)の「NISMO」ブランドが仕上げたモデルです。
エクステリアでの400Rとの違いは、スカイラインNISMOの専用パーツとして前後バンパーとサイドシルカバーを開発。アクセントカラーとしてレッドを配される点にあります。
また、スクエア形状のロアグリルや専用フォグランプ、リアフォグランプなどはスーパースポーツカー「GT-R NISMO」(2024年モデル)や「フェアレディZ NISMO」とも共通する、最新世代のNISMOロードカーと同様のデザインとなっています。
なお、これらの専用パーツは空力とダウンフォースという相反する性能を両立させているとともに、ラジエーターやオイルクーラーなどの冷却性能も追求。さらに、重量増加は抑制し、400Rの空車重量とは同じ1760kgを実現しています。
また、左右フロントフェンダーには2代目スカイライン GTと同様のGTバッジを特別に装着しています。
インテリアは400Rをベースに黒基調で統一。落ち着いたドライビング空間を演出しました。
ドライバーシート周辺では、センターにレッドを配した専用ステアリングや280km/hスケールのスピードメーター、レッドリング加飾付きタコメーターを装備しています。
オプションで用意されるレカロ製スポーツシートは、ヘッドレスト一体形状のバケットとし、急旋回時において安定した操作ができるようスウェード表皮の貼付位置にこだわり、高いホールド性を追求。
一方で、GT(グランドツーリング)カーとして長時間を快適に移動できるよう、体圧分散を最適化した座面構造も採用しています。
■「匠」によるチューニングとは?
スカイラインNISMOのパワートレインは、400Rと同じく、3リッターV型6気筒ツインターボエンジンと7速ATを組み合わせ、FR(後輪駆動)という基本設定ですが、最大出力420馬力・最大トルク550Nmの高性能を発揮。400Rよりも15馬力・75Nmの大幅な出力向上を実現しました。
GT500用の「RB26」エンジンなどを手掛けた経験者・実験設備でチューニングを行うと同時に、歴代「スカイラインGT-R」を手掛けてきたNMC車両評価責任者である神山 幸雄氏による徹底した走り込みで仕上げています。
エンジンチューニングでは日常域での使いやすさを高め、高速走行時の登り坂や追い越しなどの場面においてキックダウンせずに大トルクを発揮するよう、トルク特性を変更。
同時にドライブモードやATシフトプログラムも変更し、レスポンスの高い走りを実現しました。
さらに、ボディやシャシも、1980年代後半から日産開発部門が提唱していた「P901活動」で実施した方法を用いて専用チューニングを施しています。
ボディは400Rをベースとしながら、フロントウインドウガラスの接着剤にGT-R NISMOと同様の高剛性接着剤を採用し、ブレースなど重量のある補強部品の追加を伴わずに約15%のねじり剛性向上を図っています。
サスペンションとスタビライザーも専用チューニングを施すことで、乗り心地を悪化させることなく、旋回時にロールを抑えつつも起伏のある路面で追従性を保ちながら、限界域まで安心して走行することが可能となりました。
その他、耐フェード性に優れる摩擦材を使用したブレーキや、ABS・VDCなどの制御も最適化することで、コントロール性が向上。サーキットでの使用にも耐えうる電子制御としています。
さらに、タイヤとホイールも専用開発品を採用し、400Rよりもリアタイヤを20mm拡幅してグリップ力を高めるとともに、軽量・高剛性を両立したNISMO専用19インチホイールを装備しました。
スカイラインNISMOについて、車両評価責任者である神山氏は以下のように話します。
「スカイラインNISMOは、速さだけ、楽しさだけというドライバー主体だけではなく、同乗者も含めて快適に乗れる、セダンということを根底に置いて設計しています。
設計は机上で計算してシミュレーターを用いることによって、ある程度は完成できるように進歩していますが、NISMOではフィーリング・感覚的なところを重点的にテストしています。
今回のNISMOも、元々スカイラインが目指していたところをさらに追求し、踏襲できています」
また、NMC チーフビークルエンジニア(CVE・開発責任者)長谷川 聡氏は以下のように話します。
「やはり日産で仕事してきた人間はスカイラインが好きで、特別な存在なんです。そしてユーザーが思っている以上に、僕らも“スカイラインはこうでなきゃ”というイメージがあります。
情熱的なクルマ作りとか人とか、そういったところまで関心がもう1回さかのぼるといいなと。そうした呼び水になることを期待しています」
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新型スカイラインNISMOは1000台限定販売で、2023年9月上旬に発売を予定。価格は788万400円です。
なお、スカイラインNISMOをさらに特別に仕立てた「LIMITED」を2024年夏に用意する予定で、匠による手組みの高精度エンジンや職人が手作業で貼付したデカールなどがあしらわれ、100台限定で販売されます。こちらは947万9800円です。