1990年5月、ミツオカがリリースした本格的なクラシックカースタイルの「ラ・セード」、実はその中身は、国産の人気FRクーペでした。意外過ぎる成り立ちについて紹介します。
■発売後5日で即完売の逸話も! コアな人気を誇った「ラ・セード」
日産「シルビア」といえば、コンパクトなFRレイアウトのシャシーに流麗なクーペボディを載せたスペシャリティクーペとして登場し、その運動性能の高さからスポーツ走行を楽しむユーザーからも支持を集めて、生産終了から20年以上が経過した今でも高い人気を誇っている1台です。
そんなシルビアはさまざまなカスタマイズカーのベースともなってきましたが、数多くのモデルをリリースしてきた光岡自動車(ミツオカ)もS13型シルビアをベースとしたモデルを制作していました。それが1990年5月にリリースされた「ラ・セード」というモデルです。
「人生=Life、第二の夢=Second Dream」というワードの頭文字から付けられた車名を持つ「Le Seyde(ラ・セード)」。
第二の人生を、そして飽くなき夢を追い求め、自由を味わいながら長い人生を謳歌するという意味が込められた1台でした。
シルビアがベースとはいえ、スタイリングはアメリカンクラシックカーがモチーフとも、メルセデス・ベンツ「Kシリーズ」とも言われるほどで、エクステリアでシルビアらしさを感じられるのはフロントウインドウとドア程度。
ホイールベースは大幅に延長されて3375mmとなり、それに伴って全長も5100mmと、新型「アルファード」をも超える大型サイズとなっていたのです。
ホイールベースは延長されているものの、エンジンの搭載位置は変更されておらず、ステアリングシャフトを伸ばしているだけで、フレームなどもオリジナルのもので補強はしているものの、シルビアのようなFRらしいハンドリングを楽しむモデルではありません。
あくまでその雰囲気を楽しむモデルというキャラクターとなっていました。
そのためか、パワートレインは1.8リッター自然吸気エンジンに4速ATの組み合わせのみとなっており、シルビアに用意されていたターボモデルや5速MTなどは用意されていませんでした。
このように大幅に変更されたエクステリアに対し、インテリアに関してはほぼシルビアのままとなっており、そのギャップも当時の話題のひとつとなっていました。
なおラ・セードは、前述したように1990年5月に500台限定でリリースされましたが、当時はバブル景気真っ只中ということもあり、販売開始5日で完売したという逸話も残っています。
■よりキャラクターにマッチした「V8エンジン」のコンバーチブル版も登場するが…
ラ・セードが一気に完売したことで二匹目のドジョウを狙ったのか、1991年には同様のデザインをまとったオープンモデルの「Dore(ドゥーラ)」をフォード「マスタング コンバーチブル」をベースに500台限定でリリースします。
こちらは5リッター V型8気筒エンジンのコンバーチブルで、よりキャラクターにもマッチしていたように思えます。
しかしドゥーラのリリース時には、すでにバブル景気が崩壊した後だったこともあり、実際は100台ほどが販売されたに留まってしまいました。
このようにラ・セードはバブル期の好景気ぶりを象徴するモデルのひとつと思われていましたが、2000年11月にS15型シルビアをベースとした「ニュー・ラセード」を100台限定でリリースしています。
こちらも初代と同じく自然吸気・ATモデルをベースとし、初代と同じモチーフのエクステリアをまとったモデルとなっていました。
翌年の東京モーターショーには、オーテックジャパン(当時)が手掛けたオープンモデルの「シルビア コンバーチブル ヴァリエッタ」をベースにしたと思しき「ラ・セード コンバーチブル」も展示されました。
ただし注目のラ・セード コンバーチブルも、残念ながら市販化には至らず。
ベースのシルビア生産終了後の2004年3月、限定3台のファイナルモデルとして本革シート特別限定仕様車をリリースして、ラ・セードは終売となったのでした。
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結局、シルビアの終焉と共に姿を消すこととなったラ・セード。
ただこのときに得られたノウハウは、2008年から販売されているマツダ「ロードスター」をベースとしたクラシカルなオープンクーペ「ヒミコ」の生産に生かされているといえます。
ヒミコは先日も2024年モデルが即完売するなど、今も変わらぬ人気を誇っています。