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なぜ未だに「ジムニー」人気が絶えない? 登場5年経過もなお「納車1年待ち」異例のヒットの理由は

くるまのニュース 2023年8月15日 18時10分

スズキ「ジムニー」「ジムニーシエラ」の人気は衰えることを知らず、登場から5年が経過した今でも納期は1年待ちだといいます。どうしてそこまでの人気を得ることができたのでしょうか。

■SUVランキングでジムニーが上位!

 最近はSUVの人気が高く、新車として売られる小型/普通乗用車の30%を占めます。SUVはミニバンを抜き、軽自動車とコンパクトカーの次に人気の高いカテゴリーとなりました。
 
 2023年上半期(1月から6月)の登録台数を見ると、国内で最も多く販売されたSUVはトヨタ「ヤリスクロス」で、1か月平均は8370台でした。2位はトヨタ「ハリアー」の7333台、3位はトヨタ「カローラクロス」の6182台、4位はトヨタ「ライズ」の5539台と続きます。

 SUVの販売ランキングでトヨタ車ばかりが並ぶなか、注目されるのが、軽自動車のスズキ「ジムニー」と、その小型車版となる「ジムニーシエラ」です。

 2023年上半期の1か月平均販売台数は、ジムニーが3352台、ジムニーシエラは2254台とされ、両車を合計すると5606台に達し、これは4位のライズに迫る台数となるなど、現行ジムニー・ジムニーシエラはSUVの人気車になりました。

 この売れ行きについて、スズキの販売店スタッフは次のように述べています。

「ジムニーとジムニーシエラは2018年に現行型へフルモデルチェンジされて人気を急速に高めました。

 発売直後から、納期が1年以上に延びて、メーカーも増産していますが短縮されません。ジムニー、ジムニーシエラともに、注文をいただいてから納車されるまでに、今でも1年以上を要します」

 ジムニーとジムニーシエラは、SUVではトップ水準の売れ行きを達成しながら、登場から5年が経過する今でも納期が長いです。もしもさらに増産できれば、売れ行きを一層増やせるでしょう。

 ちなみに先代モデルの販売台数を振り返ると、2016年において、ジムニーは1か月平均が1106台、ジムニーシエラは94台でした。両方を合計しても1200台ですから、今の5606台は2016年の約5倍に相当します。

 なぜジムニーシリーズは、5倍の売れ行きを達成できたのでしょうか。この背景には複数の理由があります。

 好調な売れ行きの理由を探る上で大切な判断材料になるのが、ジムニーとジムニーシエラの販売比率です。先代型の2016年における1か月平均販売台数は、前述の通りジムニーが1106台、ジムニーシエラは94台でした。比率に換算すると9:1です。

 これが現行型の2023年上半期の1か月平均は、ジムニーが3352台、ジムニーシエラは2254台でしたから6:4の割合です。ジムニーシエラの売れ行きは、先代型の24倍に増えて、販売比率も拡大させています。

 もともとジムニーは軽自動車サイズの悪路向けSUVとして認知され、販売比率もジムニーが圧倒的に多かったのです。ところが現行型では税金の安さなど「軽自動車であること」を理由に選ぶユーザーが減り、「ジムニーであること」が選択する理由になりました。

 そのためにジムニーよりもパワフルな直列4気筒1.5リッターという、エンジンの性格に応じてジムニーシエラを選ぶユーザーが増え、ジムニーシリーズ全体の40%に達したのです。

■ジムニー人気の裏には他車の価格アップも関係か?

 ジムニーが人気を高めた一番の理由は「クルマ自体の魅力が増したこと」にあります。

 外観は1970年に発売された初代ジムニーを連想させる直線基調のデザインになり、悪路向けのSUVらしい力強さを感じさせます。内装もブラックで、メッキ類は少なく抑えて渋い印象です。

ジムニーとジムニーシエラ

 そして従来と同じく、耐久性の優れたはしご型のラダーフレームが採用され、悪路で走破力を高められる副変速機を備えた後輪駆動ベースのパートタイム式4WDが採用されています。サスペンションも4輪すべてが車軸式で、悪路の走破に重点を置きました。

 このシンプルで力強い外観と内装は、ラダーフレームや悪路向けのサスペンションと親和性が高く、ジムニーの本格的な悪路向けSUVとしての魅力を際立たせています。

 こういったジムニーの特徴は今に始まった特徴ではありませんが、ほかのSUVが大きく変わりました。それがジムニーシリーズが人気を高めた2つ目の理由です。

 冒頭で述べた通り、今はSUVの車種数と売れ行きが増えましたが、それはすべて乗用車のプラットフォームを使う前輪駆動ベースです。これらが増えた結果、悪路指向の強い野性的なジムニーシリーズの価値が際立っています。

 もしも乗用車のプラットフォームを使ったSUVが流行していなかったら、ジムニーシリーズの売れ行きもここまで増えなかったでしょう。

 ジムニーシリーズが人気を高めた3つ目の理由は、SUVを含めた日本車の価格高騰もありです。

 今から20年ほど前(2003年)は、日産初代「エクストレイル S・4WD」の価格が202万円、スバル2代目「フォレスター X20」は195万円、トヨタ2代目「RAV4・5ドア2.0X・4WD」は207万円で販売されていました。200万円前後の価格帯に、魅力的なミドルサイズSUVが集まっていたのです。

 ところが今は、価格が一番安いグレードでも、エクストレイルが351万円、フォレスターが306万9000円、RAV4が293万8000円と、この20年ほどの間に1.4倍~1.7倍まで値上げされたのです。

 その一方で現在の日本の平均所得は20年前を下まわるため、今でもSUVを選ぶ時に価格を200万円前後に想定するユーザーが多いです。

 そこで有力候補になるのが、現行型で魅力を高めたジムニーシリーズです。軽自動車のジムニー「XC」は190万3000円(4速AT)、小型車のジムニーシエラ「JC」でも208万4500円(4速AT)ですから、20年前のエクストレイルやフォレスター、RAV4などと同程度の予算で購入できます。

※ ※ ※

 ジムニーシリーズは、車両自体のデザインや機能に魅力があり、乗用車感覚のSUVが増えたことで個性が一層際立ち、日本車の価格上昇もあってヒットに至りました。

 ジムニーシリーズの高い人気は、今の日本のクルマ選び事情を反映させているといえるでしょう。

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