高速道路の追越し車線で、後続車が「右ウィンカー」を出して迫ってくるケースがあります。この「謎ウィンカー」の意味について紹介します。
■えっ! 右ウィンカーに「どけどけー!」の意味があった!?
かつて、高速道路などの追越し車線で、右ウインカーを出しているクルマをよく見かけました。
これ以上右への進路変更ができない車線で「謎の右ウインカー」動作をさせることに、どのような意味があったのでしょうか。
高速道路で直進中の車両が出す右ウィンカーの起源のひとつは、大型トラックやトレーラーが、前走車に追いついたときに排気ブレーキ(ブレーキランプは点灯しない補助ブレーキ)をかけていることを、後続車に分かりやすく知らせる「合図」だったといいます。
一方で、かつて高速道路の追越し車線では、前走するクルマに「先に行かせて」と伝えるために、右ウインカーを出すという風習がありました。
ドイツ・アウトバーンなど海外の高速道路などで、後続車が「道を譲って」という意味で用いられていたことが伝承され、40年ほど前から、日本でも使われるようになってきたようです。
いまでも極まれに見かけることはありますが、“道を譲って”の意味で追越し車線で右ウインカーを出すドライバーはめっきり減りました。
右ウインカーで前走車に、いわば「どけ」とばかりに合図すると聞くと、「これはあおり運転では」と思うところですが、本来は、人と人とがすれ違う際の「すいません」とか、「後ろからきてますよー」という自転車の「チリンチリン」くらいの合図のようなニュアンスだったといわれています。
そのため、そのような意味合いでゆるーく浸透していた時代には、それほど問題にはならなかったようです。
ただ昨今は、こうした意味を知らないドライバーも多く、あおり運転が問題視されることが増えたことから、追越し車線にノロノロ運転のクルマがいたとしても、右ウインカーで合図するドライバーは絶滅に近い状況です。
この追越し車線での右ウインカーについては、あおり運転と勘違いされる可能性があるということのほかにも、こんなリスクがあります。
道路交通法第53条には、「左折し、右折し、転回し、徐行し、停止し、後退し、又は同一方向に進行しながら進路を変えるとき」に合図(ウインカー)をしなければならないとされており、「また、これらの規定に規定する合図に係る行為をしないのにかかわらず、当該合図をしてはならない」とされています。
左折も右折も展開も徐行も停止も後退もしないのにウインカーを出すことは、道路交通法に違反するのです。
■追越し車線をダラダラ居座るドライバーに意思表示はできないのか
ただ、この合図が使われなくなってきているから、というワケでもないでしょうが、昨今は追越し車線を走行車線よりも低いスピードでノロノロと走る続けるドライバーを多く見かけるようになった、とする声が多いのも事実です。
SNSなどでは「追越し車線をノロノロ運転するドライバーに遭遇して、めっちゃ(右ウインカーを)使いたかった」とする意見も見られました。
追越し車線に居座るノロノロドライバーに対し、左からの追越しは禁止されているため、どうすることもできません。
そのような状況下で「後ろが詰まっているからちょっと譲ってほしい!」という意思表示をしたいと思うことは、高速道路をよく利用するドライバーならば経験があるのではないでしょうか。
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道を譲ってほしいという意思表示としては、車間距離を詰めたりパッシングをしたりして意思表示してくるドライバーもいますが、「あおり運転」と認識されることが考えられますし、「車間距離不保持」や「減光等義務違反」という道路交通法違反にもなります。
このように、追越し車線に居座るノロノロ運転ドライバーの対処はとても難しいところですが、運転にイライラは禁物です。
追越しではなく「追抜き」になるように、走行車線を法定速度で走ってじんわりとやり過ごすか、時間に余裕があるならばサービスエリアに立ち寄ってひと呼吸してから出発する、というのが精神衛生上も良いかもしれません。