Infoseek 楽天

シフトレバーに付いてた「O/Dボタン」なぜ消えた? いまや「謎のボタン」と思う人も… どんな意味があるのか

くるまのニュース 2023年9月5日 8時10分

かつてのAT車には「オーバードライブ (O/D) スイッチ」という機構が付いていました。最近ではほとんど見かけることがありませんが、どのような役割があったのでしょうか。

■オーバードライブってなに?

 AT車に搭載されていた「オーバードライブ (O/D)」が、最近のクルマではほとんど見かけなくなりました。
 
 そもそもオーバードライブには、どのような役割があるのでしょうか。

 最近の車はほとんど見かけませんが、昔のAT車や現在でも一部のAT車にはシフトノブに小さなボタンがついていることがあります。

 これはオーバードライブスイッチの役割を果たし、押すことでオンオフの切り替えができるようになり、オフにするとインパネ上に「O/D OFF」と表示されます。

 オーバードライブというのはクルマのトップギアを指し、例えば5速AT車の場合はオンの状態だと5速までシフトを切り替える仕組みです。

 また、燃費を良くしたい場合や静粛性にも優れているので基本的にはトップギア状態までシフトアップするオンのまま走行します。

 もともとAT車は、燃費を良くするために高いギアを選択してエンジンの回転を抑える傾向です。

 燃費や静粛性の面では有利ですが、速度のコントロールという部分においては不便なケースも存在します。

 具体的には、下り坂でオーバードライブがオンになっていると、高いギアを優先的に選択するためエンジンブレーキがほとんど効きません。

 また、フットブレーキだと減速しにくく、長い下り坂だとベーパーロックの可能性も生じます。

 そこで、下り坂でエンジンブレーキを利用したいときにオーバードライブをオフにすることで、程よいエンジンブレーキを効かせられるのでスピードコントロールがスムーズに行なえます。

 またオーバードライブは登り坂でパワーが欲しい場合にも利用できます。

 登り坂でトップギアに入っていると思うように加速ができないので、オーバードライブをオフにすれば、一段下のギアにすることが可能でクルマを追い越したい場合には有利といえるでしょう。

 このようにAT車では便利なオーバードライブですが、最近のクルマでは採用がないようです。それはなぜなのでしょうか。

■最近のクルマにはODボタンがないのはなぜ? CVTとは?

 最近のクルマにオーバードライブスイッチが採用されない理由にシフトの多段化があげられます。

 オーバードライブの導入が活発だったころは、AT車は4速もしくは5速あたりが中心のラインナップでした。

 ところが多段化が進んだこともあり近年では8速が主流となって、クルマによっては10速オートマチック車も珍しくありません。

 細かいギア比だけでなく電子制御で最適なギアを自動選択して走行可能になったこともあり、オーバードライブスイッチの必要性は減少したといえるでしょう。

 ほかにも多段化されたAT車では、マニュアルモードでシフトチェンジできるクルマも増えてきました。

 シフトパターンの「D」のとなりに「M」の文字があり、「+」や「ー」でシフトのアップダウンが可能です。

 オーバードライブでは1速分のアップダウンが可能ですが、マニュアルモードなら好みのギアチェンジが容易といえるでしょう。

 そして、もっともオーバードライブスイッチがなくなった理由が、CVT採用のモデルが増えたということです。

 昔のCVTは、小排気量車がメインで耐久性にも問題がありましたが、近年のCVTはメーカーの開発努力もあって信頼性も上がって採用車種が増えてきました。

 CVTは通常のトランスミッションと異なり、歯車を構成パーツに含まず、そのかわりに2つのプーリーとベルト (もしくはチェーン) を用いて変速を行います。

 CVTの原理は自転車のギアチェンジに似ていて、駆動する側のプーリーが小さくなるほど加速力には優れますがスピードが出ない仕組みで、逆に駆動側のプーリーが大きくなるほど加速は劣りますが、スピードが出る仕組みです。

 ただし、CVTにはギアの概念がなく無段階で変速できるので、オーバードライブスイッチが必要ないということになります。

 万能といわれるCVTですが弱点もあって、高出力車や高速域では不向きという点があげられます。

 ハイパワーや高速になるほど、金属ロスなどの伝達ミスが発生しやすくなるからです。

 そのため、アウトバーンを走行するようなドイツ車や大排気量のクルマには、ほとんど採用されていません。

 逆に国産車では、軽自動車をはじめ、コンパクトカーやミニバンにまで、多くのクルマに採用されはじめています。

 理由は単純で、多段化が進むAT車に比べて、重量面やコストで有利だからです。

 またエンジンパワーを効率よく伝達できるため、一般的なAT車よりも燃費面でも有利といえるでしょう。

※ ※ ※

 今後もCVTの採用やATの多段化が増える見込みで、ATのオーバードライブスイッチはなくなっていく方向へ向かうでしょう。

 もし、オーバードライブスイッチのクルマを見かけたら、非常にレアなので活用してドライブを楽しんでみるといいかもしれません。

この記事の関連ニュース