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日産の「軽EV」なぜ爆売れした? 日本市場に“ドンピシャ”!?「サクラ」が異例のヒットとなった訳

くるまのニュース 2023年9月7日 19時10分

国内でEVの販売が低迷するなか、日産の軽EV「サクラ」は好調な売り上げを見せています。どのような理由でサクラの販売が好調なのでしょうか。

■なぜ軽EVのサクラが人気なの?

 走行時に二酸化炭素を含めた排出ガスを発生させない電気自動車(EV)は、環境性能に優れたクルマとされ、世界の主要な自動車メーカーが開発と生産を行っているほか、テスラのようなEV専門のメーカーも参入してきました。
 
 ところが日本では、EVの販売比率が低迷しています。エンジンとモーターを併用するハイブリッド(マイルドタイプを含む)車は、新車として売られる乗用車の50%近くに達しますが、エンジンを搭載しない純粋なEVは2%少々。この背景にはEVの選びにくさがあるでしょう。

 日産は初代「リーフ」でEVを早期に投入しましたが、現在のラインナップは、リーフと「サクラ」「アリア」だけ。トヨタも定額制リースのKINTOを対象とした「bZ4X」と、レクサスブランドの「RZ」「UX300e」程度です。

 その点で輸入車にはEVが多く、メルセデス・ベンツやBMWのように、4車種以上のEVを日本で販売しているメーカーやブランドもあり、2022年には海外メーカー製輸入乗用車の6%をEVが占めました。

 日本のEVが伸び悩む背景には複数の理由が考えられます。国内ではハイブリッド車が普及していることのほか、EVの欠点として、1回の充電で走行できる距離が短いこと、航続距離を長くするとリチウムイオン電池の容量も大きくなり、重量増や価格のアップといった課題が存在することが挙げられます。

 そして、日本は総世帯数の40%が集合住宅に住むため、充電設備を設置しにくいことからEVの普及も進みにくいです。

 ただしすべてのEVの販売が低調なわけではありません。軽自動車の日産サクラは好調で、2022年5月に発売されてから販売台数は3万台以上に達します。

 これは、ホンダの主力軽自動車「N-WGN」を上回り、同じ日産のEVであるリーフに比べると約3倍の売れ行きです。

 なぜサクラはここまで販売が好調なのでしょうか。日産の販売店スタッフは次のようにいいます。

「サクラはいろいろなお客さまが関心を持っています。リーフからの乗り替えもありますが、『ノート』のようなコンパクトカーのお客さまが購入することもあります。

 特に目立つのが、他メーカーからの乗り替えです。ホンダ『N-BOX』、ダイハツ『タント』、スズキ『スペーシア』など、スライドドアを備えた背の高い軽自動車のお客さまが、サクラを買われることも増えています」

 つまりサクラは、ほかのEVよりもユーザー層が幅広く、それが好調な売れ行きに結び付きました。

 そのなかでも、N-BOXやタントのような軽スーパーハイトワゴンからの乗り替えは注目されます。サクラではEVに加えて「軽自動車であること」が売れ行きを増やす要因になっているのです。

■「軽×EV」の親和性が高い理由とは?

 軽自動車のサクラは、1回の充電で走行できる距離が短い、価格が高い、充電設備を設置しにくいといったEVの欠点に対応していることも特徴です。

 まず1回の充電で走行できる距離ですが、軽自動車ではそもそも長距離を走る必要はありません。軽自動車は生活の足として、公共の交通機関が未発達な地域や中心に街中で使われるのがメインで、軽自動車を所有するユーザーはほかの車両も持っていることが多いからです。

日産「サクラ」

 長距離を走る時は、ファーストカーの普通乗用車を使うため、セカンドカーである軽自動車には長い距離を走ることは求められません。

 サクラのリチウムイオン電池容量は20kWhで、リーフの40kWh/60kWhに比べると大幅に少ないです。1回の充電で走行できる距離も180km(WLTCモード)ですが、街中を移動するための軽自動車なら問題ありません。

 3ナンバー車のリーフだと走行距離が問われますが、サクラは違います。そして街中の移動では、ボディは小さい方が好ましく、軽自動車のサクラはピッタリです。

 そしてリチウムイオン電池が小さいサクラは価格も安いです。「X」の価格は254万8700円で、リーフ「X」の408万1000円に比べると6割程度に抑えました。

 経済産業省による補助金額はサクラの場合55万円ですから、Xの価格から差し引くと約200万円です。

 この金額は日産の軽スーパーハイトワゴンの「ルークス ハイウェイスターX」など普通の軽自動車の価格に近いため、N-BOX、タント、スペーシアなど他社の軽自動車からサクラへの乗り替えも進みました。この効果でサクラの売れ行きが増えました。

 さらに、軽自動車は、複数の車両を使う一戸建ての世帯で使われることが多いため、ユーザーが自宅に充電設備を設置しやすいです。このように軽自動車とEVは親和性がとても高く、サクラの販売も好調というわけです。

※ ※ ※

 昨今の国内市場は、ハイブリッドが中心でEVに冷淡な印象も受けますが、これから軽EVのラインナップが増えれば売れ行きも伸ばせるでしょう。

 言い換えれば、今まで日本でEVの売れ行きが伸び悩んだのは、海外向けの車種を投入したからで、EVはエンジン車以上に使われ方がデリケートですから、国内市場にピッタリ合った商品が求められます。それがサクラのような軽自動車だったのです。

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