高知県香南市には、通行できる時間が1日わずか7時間だけという驚きの橋が存在します。では、一体なぜこのような橋が作られたのでしょうか。
■まさに「そり立つ壁」・・・この橋ができた経緯とは
全国各地には珍しいスポットが存在します。その中で通行できる時間が「1日わずか7時間だけ」という驚きの橋が存在します。
では、一体なぜこのような橋が作られたのでしょうか。
7時間だけ通行できる橋は、高知県香南市夜須町にある「手結港可動橋(ていこうかどうきょう)」です。
手結港可動橋はその名称のとおり、時間帯によって橋の片方が跳ね上がり、そり立つ壁のようになるのが特徴となっています。
過去には、手結港可動橋がダイハツ「キャストアクティバ」のCMに登場し、出演していた俳優の山崎賢人氏が跳ね上がった橋を見て、「なんだこりゃ~!」と叫ぶシーンが話題になりました。
橋がこのように跳ね上がるのは、港から出発する漁船が通行できるようにするためです。
この手結港可動橋は漁船が多く集まる手結港の真ん中に架けられており、夜須町の南北をつないでいます。
また、可動橋より海側に面している港は手結外港(新外港)、内陸側の港は手結内港と呼ばれています。
なお、手結内港は江戸時代初期に土佐藩の家老・野中兼山によって造られた日本最古の掘り込み式の港(陸地を掘り込んで作った人工港)であり、歴史的価値の高い港としても知られています。
現在も手結内港には多くの漁船が係留されており、可動橋が跳ね上がった際に漁船が通行する風景が見られます。
香南市のホームページによると、手結港可動橋の通行可能時間は6時30分~8時、9時~10時、11時~12時、13時~14時30分、15時~16時、17時~18時と決まっており、クルマや人は1日のうち7時間程度しか利用できません。
また、手結港可動橋の両端には踏切と同じ警報器と遮断機が設置され、橋が跳ね上がる前に作動してクルマや人の通行を止める仕組みになっています。
警報器には「踏切注意」ではなく「可動橋注意」と表示されており、こちらも面白い点といえるでしょう。
このように見た目も文化的にも非常に珍しいスポットですが、実は手結港の付近には迂回ルートがあり、手結港可動橋を通行しなくても夜須町の南北を行き来することができます。
■全国でも珍しい「手結港可動橋」はなぜ作られたのか?
では、一体なぜこの可動橋が作られたのでしょうか。
手結港可動橋が作られた理由や経緯について、高知県中央東土木事務所河港管理課の担当者は次のように話しています。
「手結外港(新外港)を整備するにあたり、現在の手結内港の入口へ大型車が通行できる橋を架ける計画が立てられました。
その際、周辺環境と調和することや、手結内港を利用する漁船への影響を最小限に抑えることなどを考慮した結果、跳ね上げ式の可動橋を採用することとなりました」
担当者によると、この可動橋は2基の油圧シリンダーで橋を跳ね上げる仕組みであり、傾斜角度は最大70度にものぼります。
近くで可動橋を見ると、ほぼ垂直に橋が立っているように見えるため、非常にインパクトがあります。
またこの可動橋の管理について、担当者は次のように説明しています。
「可動橋の付近には管理棟があり、橋の可動時間帯だけ管理人が駐在しています。
たとえば橋を動かす際には、管理人が監視カメラで人やクルマがいないかを確認してから遠隔操作をしています」
管理人はカメラと合わせて目視での確認もおこなっており、安全に細心の注意を払っています。
全自動で橋の開閉がおこなわれていると思われがちですが、実はこのように人の手で管理されているのです。
そのほか、可動橋の通行可能時間は手結内港の漁船利用を優先に決められており、漁船の出入りが多い深夜や早朝の時間帯には橋が跳ね上がった状態になっています。
強風など異常気象の際には通行止めになる場合があるものの、天気が良ければ「そり立つ壁」のような可動橋を見ることができるでしょう。