東京都世田谷区では、「細すぎて走れない」と思える異常に細い自転車専用レーンが見られます。なぜ、このように不思議なかたちにしたのでしょうか。
■最近増えてきた自転車専用レーン。中には細すぎるレーンも。
近年よく見かける、道路左脇に描かれた青色の自転車専用レーン。
なかでも、東京都世田谷区では、これでは走れないと思える異常に細い自転車専用レーンも見られます。なぜ、このように不思議なかたちにしたのでしょうか。
道路の左端に青く塗装され、自転車のピクトグラムが描かれている自転車専用レーン。最近はよく見るようになったという人も多いかもしれません。
自転車専用レーンは、歩行者と自転車の事故を防ぐためだけでなく、クルマと自転車の通行路を分けることで車両事故を減らすことを目的にしたものです。
2012年に国交省と警察庁が全国の自治体に設置を働きかけてからは、目立ってその数が増えてきています。
そもそも自転車は道路交通法で軽車両として扱われ、クルマの仲間という位置付けになります。
専用レーンが増えることで、自転車は車道を走るのはあたり前という捉え方も一般的に浸透しつつあるようです。
警察庁も、2022年に自転車安全利用五則を改訂し、自転車は車道を通行するべきという考え方を強くうち出しました。
自転車は車道の左端を走るのが原則です。また、自転車専用レーンのある道路では自転車はそこを通行しなくてはなりません。
自転車専用レーンは既存の道路に新設しています。道の造りや歩行者、交通量など道路の事情に応じて作るしかないのですが、その結果、専用レーンのかたちもそれぞれ違ってしまっているのが実情のようです。
このような流れの中、驚くべき姿を表した自転車専用レーンもあります。
東京都世田谷区の、小田急線梅ヶ丘駅から東急世田谷線世田谷駅にかけて通っている、区役所西通り。
道の車道外側線に沿って、わずかに細く青い塗装がみられます。
車道外側線の白線の幅は15センチが一般的です。青塗装された自転車専用道路はそれより細く設計されています。
道路の脇には、「自転車は左側の青い部分を通行してください」と書いた立て看板も設置されています。
まるで自転車で綱渡りするようにもみえる専用レーン。
あまりの不可解さに、SNSでは「世田谷の罰ゲームでは」という冗談も飛び交っています。
東京都は、2012年に「東京都自転車走行空間整備推進計画」を策定し、車道を整備する際の考え方を提示しています。
それによると、自転車専用レーンは道路の利用状況をみたうえで、専用レーンの幅を1.5メートル以上確保できるときに検討するとしています。
やむを得ない場合は調整もできるようですが、それにしても細すぎるようです。
いったいなぜ、このような自転車専用レーンにしたのでしょうか。これから修正する計画などはないのでしょうか。
区役所西通りの自転車専用レーンを設置した経緯について、世田谷区の担当者は次のように説明します。
「自転車専用道路を整理する際は、路肩全体を青く塗装します。
しかし、画像の写真の場合は、排水溝部分があり、そこは塗装ができないため、このような幅になっていました。
加えて、設置されていた看板の文言により、このような誤解を招く形となってしまったかと思われます。現在では看板は撤去されています」
罰ゲームかのように見えるこの自転車専用道路ですが、現在では誤解を招く見え方となっている看板は撤去されたようです。
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交通手段が多様になった現在、道路の安全を保つためには、歩行者と自転車とクルマの道を、縁石などで明確に区切るのが理想でしょう。
しかし、ほとんどの日本の道はそうできないほど狭いのが現実です。
自転車専用レーンはこうした難しい状況下で誕生しました。安全な交通を守るうえで、自転車や人、クルマなどがお互いに思いやりをもって道路を利用する心がけが大切なのかもしれません。