クルマを運転している時に救急車が近付いて来た場合、一般車は進路を譲る義務があります。しかし最近は、その際の一般車の対応について、ある問題が発生しています。
■救急車のサイレンが聞こえない…は違反?
近年、“救急車が近付いて来た時の一般車の対応”について、ある問題が発生しているといいます。
救急車などの緊急車両が近付いて来た場合の一般車の対応について、道路交通法は第40条で以下のように規定しています。
「交差点又はその附近において、緊急自動車が接近してきたときは、路面電車は交差点を避けて、車両は交差点を避け、かつ、道路の左側に寄つて一時停止しなければならない」
このように一般車は、救急車が近付いて来た際、進路を譲ることが義務付けられており、これに違反した場合、「緊急車妨害等違反」として普通車だと反則金6000円、違反点数1点が科される場合があります。
そんな中、最近では救急車に道を譲らない一般車が増えているといい、2022年には救急隊員による「救急車に道を譲らない人が増えている」といった内容の投稿が話題となりました。
また、SNSで最近の様子を見ても、「最近のドライバーって緊急車両に道を譲るって何で出来ないんだ…」「救急車に道譲らない人ってほんとにいるんだな」「救急車に道を譲らない、譲れない人があまりにも多すぎる」といった声が多数見られ、いまだに道を譲ることができていないドライバーが多いことがうかがえます。
一方で、ユーザーの中には「後方から近づいてくる時はやや聞こえづらい」「救急車どっちから来てるか分からないし、近くまで来ないと音もよく聞こえない」「車の密閉も良くなって、音楽聴いてたら基本聞こえない…」という意見もありました。
救急車のサイレンの音量はというと、道路運送車両法の保安基準で「前方20mの位置において90dB以上120dB以下」と定められています。
90dBは、騒々しい工場の内部やカラオケボックス内の歌声に相当します。この90dBの音が聞こえないとは考えにくいですが、最近は静粛性が向上したことで、例えばロードノイズを感じずに音楽をクリアな音質で楽しめるクルマが増えています。
また、周囲の環境やその時の状況などによっても、サイレンが聞こえにくい場面はゼロとは言えません。
こうした様々な要因から、サイレンが聞こえづらく救急車に気付きにくいというケースは少なからずあるといえるでしょう。
では、救急車のサイレンが聞こえない場合、違反になるのでしょうか。また聞こえづらい場合はどうしたら良いのでしょうか。これについて、警察交通ダイヤルの担当者は以下のように話します。
「サイレンが聞こえづらいといわれていることは、耳にすることがありますね。
サイレンが聞こえづらく救急車に気付けていないというのは故意なものではないので、違反ではありません。
しかし、道路交通法第40条に罰則規定があるため、交通取り締まりを受ける可能性はあります。
サイレンが聞こえづらい場合には、まずは『聞こえづらい』ということを認識して、周囲に注意しながら進行してもらうようお願いします。
交差点などで前後左右を見つつ、少しでも『サイレンかな?』と思った場合、赤色灯が光って分かる場合もあると思うので、気にかけてもらえればと思います」
クルマで音楽を流していて、例え音量を絞っていても救急車に気付きにくいというケースもあるかもしれません。
■確実に救急車に気付ける? 後続車への合図とは
そうしたドライバーのためにも、救急車が近付いて来た際に取る行動のひとつに「ハザードランプの点灯」が挙げられます。
ハザードランプというと、例えば高速道路で渋滞に気付いた時や事故・故障などやむを得ない事情で停止する場合など、周囲に危険を知らせる際、合図を送る際に使用するものです。
このため、救急車が近付いた時の合図としての利用は本来の定められた使い方とはいえませんが、後続車に知らせる合図として示すひとつの手段といえます。
実際に滋賀県の湖南広域消防局はウェブサイトで、以下のように案内しています。
「周囲の車両にできる限り早く気付いてもらえるよう、サイレンや前照灯の切り替えなどを活用しています。
安全に優先走行させていただけるよう、マイクによる広報を実施し走行します。
ハザードランプを活用し、救急車に気付いていることをお知らせいただけると、より安全に走行させていただけるものと考えています」
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救急車が近付いて来た際は、「道路の左側に寄って一時停止する」、また気付きにくいというユーザーのためにも「ハザードランプの点灯」を心掛けると良いでしょう。
傷病者を少しでも早く医療機関へ搬送するためにも、救急車を見かけた際は交通ルールの順守と思いやりを忘れない運転を心掛けましょう。