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高速道路で見かける「謎のバス停」何のため? 降りると何処に行く? 全国に点在するワケとは

くるまのニュース 2023年10月11日 9時10分

全国各地の高速道路上にはバス停が存在します。中には周囲に何もない場所に設置されていることもありますが、このバス停はなぜ存在するのでしょうか。

■高速道路上のバス停は不便では?途中下車できないバス停も。

 高速道路の本線上などにある「高速バス」の停留所。
 
 一見、鉄道駅などから遠い場所にあり、一見すると不便なようにも思えます。
 
 このバス停は、いったいどのように利用されているのでしょうか。

 高速道路の上には、高速バスを乗り降りするための停留所が設置されています。

 実際に利用したことはなくても、交通情報などで「綾瀬バス停」や「元八王子バス停」といったバス停の名前に聞き覚えのある人は多いかもしれません。

 この高速バスのバス停は、都市部ではそうではありませんが、郊外の高速道路上となると、使い勝手がいいとは思えない地点に設置されている場合もあります。

 例えば、横浜市の東名高速道路に「東名江田」というバス停があります。

 このバス停の近くには鉄道駅がありますが、バス停自体はその駅からわざわざ1キロ離れた地点に設置されています。

 東京都日野市では、中央自動車道が鉄道駅と交差しているのですが、「中央道日野」バス停はそこから1.5キロ離れています。

 極端なことをいうと、全国には畑の中の高速道路上に設置されたバス停もみられます。

 人を運ぶバスなのに、いったいなぜでしょうか。

 その理由は、高速バスが生まれた時代背景にあります。

 高速道路が整備され始めた1960年代。その高速道路を走るバスの運行にのりだしたのは国鉄でした。

 ところが、そもそも国鉄バスには鉄道という輸送手段を補完する役割があります。つまり、バス停は「駅」と考えられていました。

 ひとつの場所に「駅」はふたつ要りません。そのため、あえて鉄道駅から離れた地点にバス停を設置したというわけです。

 そんなバス停は、高速道路が伸展し、民間会社も高速バス事業に参入するにつれて増えていきました。

 しかし時代の流れとともに高速バスが利用される機会が減り、かつて多くのバス停が設置された東名高速道路や名神高速道路では閉鎖されたバス停が多いようです。

 全く利用されないバス停の末路は、道路管理施設に転用されたり、中にはそのまま放置されていたりすることもあります。

 とはいえ、近年ではバス停のあり方を変える動きも出てきています。

 ひとつは、鉄道との乗り換えを前提にして設置するというもの。

 例えば、関東運輸局では、都心への上り線が渋滞した際にその手前で鉄道に乗り換えられるよう、首都高速道路において鉄道駅に近いバス停を新たに設置しました。

 また、神戸市の明石海峡大橋にあるバス停「高速舞子」は、JR舞子駅と山陽電鉄舞子公園駅とエスカレーターで結ばれています。

 高速バスと電車の併用について、高速舞子の管理をおこなう本州四国連絡高速道路株式会社の担当者は次のように話します。

「駅とバス停が繋がっていることにより、通勤通学などで日常的に利用される人やレジャーなどのお出かけの際に利用する人もいます。

 電車と高速バスを乗り継ぐことで、四国方面と関西の都市のを往来が容易になりました」

神戸市の明石海峡大橋にあるバス停「高速舞子」【本州四国連絡高速道路(株)提供】

※ ※ ※

 高速バスは他の交通手段と併用することで利便性が高まります。

 その例として、高速バスとマイカーを併用する「パーク&ライド」を促進するケースもみられます。

 新潟県や長野県、香川県などは、郊外の一部のバス停に駐車場を設置しています。

 利用者は、マイカーで自宅近くのバス停まで行き、そこから高速バスに乗り換えて楽に都市部の勤め先などへ向かうことができます。

■全てのバス停が利用できるとは限らない…なぜ?

 一方で、高速バスは全てのバス停が利用できるとは限りません。

 それはなぜでしょうか。

 前述したように、高速バスのサービス当初は国鉄が運行し、その後民間会社も事業に参入するようになりました。しかし、その事業免許の取得には壁があったのです。

 民間のバス会社は地域限定でバスを運行する免許を与えられています。

 ところが、高速道路が伸びるにつれてバス路線が拡大すると、どうしても他事業者のエリアを通らざるを得なくなります。

 そこで、1980年代、当時の運輸省は、バスのドアを閉めて通過するだけなら他社の事業エリアに乗り入れたことにはならないという判断を下しました。

 つまり、バス停に止まらなければよいということです。それ以降、途中停留所を通過する高速バスが主流になりました。

 とはいえ、現在では事業エリアの制限はなくなりました。それでも途中の停留所が利用できないのには理由があります。

 まず、高速バスは座席定員を超えて人を乗せることができません。そのため、全ての停留所に止まらず短距離だけ利用する乗客を防いでいます。

 そもそも長距離を移動する高速バスは途中停留所での乗降客が少ないことが多く、各バス停での乗り降りをなくすことで運行効率も高まるのです。

高速道路のバス停は場所によって交通の要となっている場合もある【本州四国連絡高速道路(株)提供】

 ここで、反対に管理用施設だったバス停が復活した例もご紹介しましょう。

 埼玉県川越市では、人口が増えたことから、JR川越線的場駅からほど近い管理用施設を「川越的場停留所」として再利用されています。

 高速道路上でよく見かけるバス停ですが、そこにある背景はさまざまなようです。
 
※ ※ ※

 高速バスのバス停は、地域の交通事情に応じてさまざまなかたちで設置されています。

 事前に確認し、遠出の際の交通手段のひとつとして考えてみるといいかもしれません。

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