自動車教習所の教習車と言えば、初めて運転するクルマと言えます。その教習車の多くは現在でもセダンが多いですが、最近の売れ筋はSUVやミニバンとなっていますが、なぜ採用が増えないのでしょうか。
■売れているのはSUVとミニバンだけど… 教習車はセダンばかり
人生で初めて運転するクルマは、教習所の教習車ですが、そのほとんどがセダンタイプのクルマです。
一方で、昨今流行りのSUVなどを教習車に採用している教習所はまだ少ないようです。なぜなのでしょうか。
最近ではSUVが定番ジャンルとして確立されて久しいです。
同時に新車購入時にこれらを選ぶ人が増えています。
この傾向は運転免許を取得したばかりの若者たちにも及んでいます。
一方で、初めて運転するクルマとして自動車教習所の教習車に採用されるモデルのほとんどはセダンのものが多いのは昔から変わりません。
そのため免許を取得していざクルマに乗る際にSUVやミニバンなどとの運転感覚の違いに戸惑う人もいるかもしれません。
よく教習所で見かける車種には、トヨタ「カローラアクシオ(トヨタ教習車)」、ホンダ「グレイス(ホンダ教習車)」、マツダ「アクセラ」や「マツダ2(マツダ教習車)」、スバル「インプレッサG4(教習専用車)」といったものなどがあります。これらはいずれもセダンタイプとなっています。
セダンタイプが多く採用される教習車ですが、採用基準はどのようなものになっているのでしょうか。
その基準は、道路交通法施行規則第24条6項により、「乗車定員5人以上の専ら人を運搬する構造の普通自動車で長さ4.40m以上、幅1.69m以上、最遠軸距2.50m以上及び輪距1.30m以上のもの」と決められています。
実は、SUVもミニバンもほとんどがこの基準を満たしてはいるのです。
現在の教習車の採用についてとある教習所Aは次のように話しています。
「これまでの固定概念や教習専用車として販売していることからセダンを導入するケースは多いと思われます。
しかし教習所は年々入校者の獲得が厳しい状況もあり、その目玉として近年では高級車や輸入車、SUVなど変わり種を導入していることも多いです。
とはいえ、導入コストで見れば専用車として用意されているセダンのほうが安いこともあり、大量に入れ替えるのは難しいのではないでしょうか」
ではセダンとSUVやミニバンでは、指導する際の違いなどはあるのでしょうか。
ミニバンを教習車として導入している教習所Bの担当者は次のように話します。
「ミニバンはセダンよりも車体が大きく、座席も高いため、見えない部分が多く死角になる位置も変わります。
1番の違いがあるポイントは後退時です。
ミニバンでの後退時は目視による状況把握や、全長の長いミニバンでも後ろの状況がしっかり把握できるようなミラー調節を心がけて指導しています。
車体や車高の違いから運転が難しくなるポイントもありますが、教習の段階でその感覚に慣れることができれば実地を走行する際にも安心です。
一方で、S字クランクなどの際は座席位置が高いことやフロントが短いという特性により、セダンよりも乗り上げを起こす頻度は少ない傾向にあります」
■SUVやミニバンを教習車として導入するケースも! どんな理由がある?
このように近年ではセダンや教習専用以外にもトヨタ「ハリアー」やBMW「X1」といったSUVなどを採用している教習所も出てきています。
ハリアーを導入しているとある教習所Cは次のように話しています。
「高速教習車として新しいクルマの導入を検討した際、教習生に喜んでいただける車種が良いと考えました。
その際、スタッフの間ではBMWやメルセデス・ベンツなどの輸入車が候補として挙がりました。
しかし、教習生に希望を聞いてみるとSUVに乗りたいという声が多く、なかでもハリアーがとくに人気という結果に。
またハリアーを教習車として導入している教習所は全国でもあまりありません。
そのため、ほかの教習所がまだやっておらず、かつ教習生のみなさんに喜んでもらえる施策として、ハリアーの導入を決定しました」
またミニバンを教習車として導入している前出の教習所Bの担当者は、導入の経緯について次のように話します。
「ミニバンブームがあった際に、普及が進んだ車種としてトヨタ『ノア』を教習車に導入することにしました。
日常的に乗る機会が多いミニバンでの教習が、若者を中心に良い反響があります」
※ ※ ※
これまでセダンを基本とした教習車でしたが、世の中のトレンドがSUVやミニバンに移り変わったこと。
そして教習所自体も入校者を獲得する施策として、これまでに見なかったSUVやミニバンが採用されるケースが増えてきたようです。