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トレンドは「丸」から「角」へ!? 気付けば増えてる「カクカクしたクルマ」 再びウケてる「3つの理由」とは

くるまのニュース 2023年9月26日 11時10分

1980年代のシティポップが静かなブームとなるなか、同時期に流行した四角く「カクカクした」クルマのデザインが再注目されています。

■1980年代の四角い「カクカクしたデザイン」トレンドが復活の兆し

 2023年8月に世界初公開されたトヨタの新型SUV「ランドクルーザー250」をはじめ、近年デビューの新型車の中で「四角いクルマ」ほ復活の兆しが見られます。
 
 1980年代前半頃に全盛だった四角く「カクカク」したデザインのクルマが、なぜいま再び登場しているのでしょうか。

 トヨタ「ランドクルーザー プラド」の実質的な後継モデルとして華々しくデビューした新型ランドクルーザー250。

 その四角くたくましいフォルムには、多くの人が驚かされたのではないでしょうか。

 同時に再々販売が発表された一部改良版の「ランドクルーザー70」も、現代のクルマとは一線を画すカクカク・ゴツゴツしたデザインが特徴的です。

 新型ランドクルーザー70は、オリジナルモデルの登場が1984年という超長寿モデルで、デビューの年代的にちょうど四角いデザインが流行した時期にあたるため、四角いのは当然かもしれません。

 しかし、新型ランドクルーザー250に関しては、まさに最新モードのクルマです。

 現在では流麗なフォルム、複雑な面構成、凝ったディティールのクルマが主流ですが、その時代において新型ランドクルーザー250は、統一されたカクカク感を持って登場し、話題を集めています。

 国内外を見渡してみれば、他にもスズキ「ジムニー」、ダイハツ「タフト」、三菱「デリカ D:5」、メルセデス・ベンツ「Gクラス」トヨタ「ノア/ヴォクシー」、日産「セレナ」、ホンダ「ステップワゴン」など、四角いフォルムやディティールで成り立つ現行車種は数多く販売され、その多くが人気を博しています。

 また中古車市場でも、1990年代の日産「サニー」をベースに生まれた四角いコンパクトSUV「ラシーン」は、高値が付くほどに注目されているほか、さらに古い1980年代生まれの四角いクルマに注目するユーザーが確実に増加しています。

 このように、新車・中古車にかかわらず、四角いクルマ、カクカクしたデザインのクルマには、復活の兆しが見え始めている、と言っても良いでしょう。

 ではなぜ、その傾向が生まれているのでしょうか。筆者(遠藤イヅル)は3つの理由があると考えます。

■四角いデザインが支持される理由とは

 四角いデザインが支持される理由のひとつとしてまず考えられるのは「流行性」です。

 クルマのデザインは、時代に合わせて常に進化・発展・変動を遂げてきました。

写真は1984年デビュー当時のトヨタ「ランドクルーザー70」

 第二次世界大戦前の1930年代には、それまで独立していたフェンダーが車体に埋まりはじめ、1950年代にボンネットと一体化しました。

 1960年代に入ると、クルマのカドが立ち始めて、セダンはより一層「箱」を組み合わせたような姿に。

 しかし1960年代後半から1970年代半ば、「コークボトルライン」と呼ばれる、曲線を多用した抑揚の強いフィルム、アクが強いディティールのクルマが大流行するも、このムーヴメントは一過性で終わり、1970年代末には、再び四角いクルマの時代に戻りました。

 そして1980年代に入ると、フェンダーのカドからウィンドウグラフィックに至るまで、直線定規で線を引いたような、直線基調でカクカクしたデザインのクルマが続々と登場しました。

 1980年代後半になると、ほどよく四角く、かつマイルドなデザインへと発展。なかには「流面形、発見さる」というキャッチコピーで有名なトヨタ「セリカ」(4代目)のように、ヌルヌルした面を与えられたクルマも出始めています。

 1990年代から2000年代では、曲線主体のデザインに流行が移行し、ディティールの処理も次第に複雑になっていきました。

 前出のラシーンはそのような時代に登場し、当時から「レトロなデザイン」と評されていました。

直線基調の懐かしいデザインだとして、1990年代当時も異端の存在だった日産「ラシーン」

 2010年代から現在になると、ボディは流れるようなフォルムで、ディティールはシャープ……というデザインが主流のひとつになりました。

 さらに環境意識の高まりとともに、燃料消費を低減させる空気抵抗の少なさは、開発要件の中で重要な役割を果たすようになっています。

 こうしたことから、世界各国の自動車メーカーは、今も凝った曲面を組み合わせた滑らかで複雑な造形を競い合っている状況です。

 そんな一方で、カクカクしたデザインもまた新たな流行のトレンドとなり始めています。

 余談ですが、若者の間で1980年代の日本ではやった“ニューミュージック”と呼ばれる音楽ジャンルが、「シティポップ」としていま世界的に密かなブームとなっているようです。

 音楽の流行と同様に、1980年代の価値観がカーデザインの世界でも再発見された格好ともいえます。

■ユーザーが感じている潜在的な「声」とは

 四角いデザインが支持される2番目の理由は「雰囲気」です。

プレミアム性を訴求するクロスオーバーSUVの場合、流麗なクーペフォルムを採用するケースも多く見られます[写真はトヨタ「ハリアー」]

 先に四角い現行車種として挙げたモデルの多くに、SUVが含まれています。

 現在販売されているクルマの主流がSUVだから、ということもありますが、それにしてもSUVと四角いフォルム、カクカクしたデザインは、古くから切っても切れない関係にあります。

 しかしSUVの中には、トヨタ「ハリアー」や、レクサス、あるいは海外プレミアムブランドのSUVなどのように、滑らかでクーペのようなデザインのクルマも多くあります。

 ただ、それらはオフロードをガンガン走るイメージが希薄で、どちらかといえば都会にマッチした雰囲気を持ちます。

 一方、新型ランドクルーザー250は、ゴツゴツした岩場や悪路を平然と走りきる場面がよく似合います。

 そのようなシーンでは、都会的なデザインや流麗なデザインより、無骨で道具感が強い、四角いクルマが似合うのは間違いないでしょう。

 アウトドア人口が急拡大している現代で、四角いSUVが増えているのもうなずけます。

 そして、四角いデザインが支持される3つ目の理由として挙げられるのは「新鮮さ」です。

 最初に述べた「流行」とも関連するのですが、クルマのデザインに限らず、同じトレンドで生み出された製品が街中にあふれると、かえって飽きられてしまうことがあります。

 現在の道路は、シャープな目つき(ヘッドライト)を起点にした曲線デザインのクルマが行き交っていますが、その中に忽然と四角いクルマが現れると、とても新鮮な気持ちになります。

筆者の遠藤イヅル氏が個人所有するのは1988年式の日産「VWサンタナ」という希少車!

 現に筆者の愛車、日産「VWサンタナ」(1988年式)は、ドイツ本国で1981年に登場し、日産・座間工場で1984年から生産された生粋の1980年代車のため、その四角さは抜群です。

 セダン車自体が珍しくなったことも含め、駐車場などでは明らかに違う空気感さえ漂わせていて、これを見た知人などからも「1周回って新鮮」「目をひく」といった声が返ってきます。

 彼らからは「最近のデザインは食傷気味」「先鋭的過ぎてちょっとついていけない」といった声もあり、流麗で丸いデザインのクルマが増えたなかで、メーカーもユーザーが潜在的に求める声を拾い上げているといえます。

※ ※ ※

 1950年代から1960年代の古いクルマは、現在のクルマでは見られないデザインをまとっています。

 同様に、主に1980年代の四角いクルマも今ではあまり見かけることはありません。

 共通するのは、どちらもシンプルでクルマらしさにあふれ、視覚的な安心感があるように感じられることです。

 これらを考えると、今後も四角いクルマはますます増えていくのではないでしょうか。

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