1983年にデビューしたトヨタ「AE86(カローラレビン/スプリンタートレノ)」ですが、2台のハチロクによる0-100m対決が行われました。ガソリン車と電気自動車では、どちらのハチロクが速いのでしょうか。
■ガソリンとEVの2台のAE86がいざ勝負!
富士スピードウェイ(静岡県小山町)で2023年9月24日に、2台のトヨタ「AE86」による「世紀の対決」が行われました。
ガソリン車のAE86とBEV(バッテリーEV)のAE86が停止状態から加速して、100mの距離をどちらが速いのか対決するというものです。
ガソリン車のAE86(スプリンタートレノ)は「ドリキン」として知られる土屋圭市氏、BEVのAE86は佐々木雅弘選手と、時代を超えてAE86を愛するドライバー同士の戦いとなりました。
これは、1983年の誕生から40年経った今でも人気が高い「AE86型カローラレビン/スプリンタートレノ」と、その系譜を受け継ぐトヨタ「86/GR86」、スバル「BRZ」のイベントである「FUJI 86/BRZ STYLE 2023」のなかの特別プログラムです。
この対決が実現した経緯としては、トヨタ自動車の佐藤恒治社長が個人で所有しているAE86をレストアしていくなかで、土屋圭市氏が所有するAE86(通称マメ号)に出会うところから始まります。
そのなかで佐藤社長が「打倒マメ号!」と発したことにより、土屋圭市氏が勝負を受けることになったのですが、佐藤社長のAE86は長いレストアの旅に出ており動かすことができません。
そこで、東京オートサロン2023で発表された、TOYOTA GAZOO Racingとレクサスのチームが開発した「AE86 BEVコンセプト(カローラレビン)」との勝負が決まりました。
佐藤社長自らが来場して0-100mのレースを盛り上げたいと思っていた矢先、仕事の都合でどうしても来場することができなくなったことから、佐々木雅弘選手がハンドルを握ることになったのです。
秋晴れのなか、FUJI 86/BRZ STYLE 2023が開催。富士スピードウェイのホームストレートを舞台に、来場者の注目がAE86の対決に一気に向けられます。
土屋圭市氏がこだわりとことんカスタムされたAE86マメ号と、最新のBEVの技術が投入されたAE86 BEVコンセプトがスタートラインに並びます。
土屋圭市氏や佐々木雅弘選手と同じく、AE86を愛して所有している織戸学選手と谷口信輝選手がこの勝負を見守ります。
100mという短い距離のため、高トルクで瞬発的な加速が可能なBEVのほうが有利という予想もできるのですが、1本目の勝負では、大方の予想通り、AE86 BEVコンセプトが初動の速さを生かし、ガソリンAE86に圧勝しました。
そんな対決の様子を、100m先のゴール地点で笑顔で見ていたのはトヨタの豊田章男会長です。
スタート地点に戻った土屋圭市氏はもう1本勝負してほしいと佐々木雅弘選手に土下座でお願い。すると、豊田章男会長が合流し、ふたたび勝負することが許されました。
■長距離だったらどうなる? 0-400m対決が急遽決定
2本目も0-100m勝負が行われ、今度は土屋圭市氏のマメ号が勝利しますが、若干フライングだったような感じもありました。
すると3本目の勝負を行うことに。今度は、「初速ではBEVのほうが速いが、距離が長くなればガソリン車が速い」とのことで、ここでも豊田章男会長の鶴の一声により、急遽0-400m(ゼロヨン)対決が行われることになりました。
3本目のゼロヨン対決では、最初こそBEVがリードしますが、後半ではマメ号が伸びを見せて見事に勝利を収めました。
クルマから降りてきた土屋圭市氏は豊田章男会長に対して「ありがとうございます。面目を保てました」と深々とお礼。
一方の佐々木雅弘選手は「来年はバッテリーを大きくして勝負したい」と伝えると、豊田章男会長も「来年はバッテリーを大きくしたBEVと進化マメ号で勝負しましょう!」と、今後も2台の対決が実施されることになりそうです。
AE86 BEVコンセプトを開発している、レクサス LE開発部主任の新居謙治氏は次のようにいいます。
「この勝負をやると聞いた時から、ワクワクが高まって楽しみに待っていました。0-100mは高トルクで勝てましたけど、0-400mになると馬力はマメ号のほうがある分速かったです。
今のBEVはオートサロンで発表した時から、バッテリー容量も増やして馬力も130馬力程度が出ていますが、0-400mでも負けないようにするための楽しみと宿題が増えました。
あまり重たくするとAE86の良さがなくなってしまうので、その辺のバランスを考えないといけないですね」
AE86 BEVコンセプトのドライバーを務めた佐々木雅弘選手は「トルクがあるEVなので0-100は勝てましたけど、馬力が必要となる0-400では負けてしまいました。来年リベンジです」と語ります。
また、土屋圭市氏は「0-100はBEVの速さにビビったよね。400はこちらのギアが伸びるので勝てたけど0-100はビビったよ。来年はBEVが強くなるかもしれないからどうしようかね」と困惑。
さらに、「40年前の車で現在に蘇らせてくれて、ありがとうといいたいです。トヨタには夢があるよね。40年前の車を知らない子供でも楽しめるこういう取り組みは良いこと。86が生まれたことによってこういうことができる。
トヨタ86もGR86も40年後にはAE86みたいになっているかもしれない。こういう楽しみがずっと続いていってもらえると良いよね」と笑顔で語って対決を締めくくりました。