2004年から3世代・19年にわたって販売を続けてきたトヨタ最小・最安コンパクトカー「パッソ」が生産を終えることに対し、惜別の声が集まっています。
■軽ではない廉価な小型車の選択肢として貴重な存在だった「パッソ」
トヨタは「パッソ」の生産を、2023年9月下旬で終了します。
19年にわたって生産されてきたトヨタ最小・最安コンパクトカーの販売終了を惜しむ声が、SNSなどで寄せられています。
パッソは、トヨタとダイハツ工業(以下、ダイハツ)の共同開発によって2004年に初代モデルが誕生しました。
兄弟車としてダイハツ「ブーン」も同時に発表されています。
もともと両社は1967年に業務提携を始め、各社が開発・生産したモデルを相手に供給する、いわゆるOEM(相手先ブランド製造)車を展開するなど協力関係を深めてきましたが、初代パッソでは国内で初の共同開発が行われています。
発表時に両社は「トヨタの車両企画力とダイハツのスモールカー開発技術・生産ノウハウ、さらには両社の強みである高い品質管理を結集させた」と説明しています。
ボディサイズは全長3595mm×全幅1665mm×全高1535mm。1リッターおよび1.3リッター 直列3気筒エンジンが搭載され、当時発売されていたコンパクトカー「ヴィッツ」よりも小さいトヨタ最小サイズで、低価格な点が特徴でした。
車名とともに「プチトヨタ」を連呼するTVCMも放映され、視聴者にかわいらしい印象を与えるとともに、パッソの名も一気に広まりました。
2010年に2代目パッソ/ブーンが登場。初代同様に共同で開発された2代目は、商品企画の段階から女性スタッフを中心に女性目線でのクルマ造りに取り組んだ点が大きな特徴です。
2016年1月にトヨタはダイハツの完全子会社化を発表。その3か月後の4月に現行型となる3代目パッソが登場しています。
3代目はこれまでと異なり、ダイハツが開発から生産までを一貫して担当し、トヨタへOEM供給されるモデルとなりました。
市場拡大を続ける軽自動車造りのノウハウを投入し、歴代パッソの個性である経済性の高さや小型で広い室内に加え、先進運転支援機能「スマートアシスト」の搭載や、軽量・高剛性化や足回りの強化などを図り、安心感ある走りの性能も誇りました。
ただし時代の主流となりつつあるハイブリッドモデルは3代目パッソには設定されず、ハイブリッド設定のあるヴィッツや、2020年登場の後継車「ヤリス」、さらにハイブリッド専用車「アクア」など、他のトヨタコンパクトモデルとのすみ分けが図られた印象です。
その後2016年、3代目パッソ同様にダイハツが開発した低価格な小型ハイトワゴンのトヨタ「ルーミー」が人気を集めたことや、価格帯が近い軽自動車の人気が一層高まったことなどが相まって、パッソは19年の歴史に幕を降ろしました。
SNSなどでは、そんな長い歴史を持つパッソに対し多くのコメントが集まっています。
まずパッソに対し「小さいけど広くてイイクルマだった」「今どきの軽よりも安いのが魅力」「かわいいデザインでヴィッツと絶妙に差別化していましたね」などの一定の評価の声が多く見られます。
過去のダイハツ製コンパクトカーからの歴史に目を向ける人からは「リッターカーのシャレード以来の系譜もここまでか」と感慨深いコメントもありました。
また今後について「日産もマーチ止めたし、コンパクトカーの選択肢が減っていく」「次はルーミー買うしかないのか」と嘆く声も見られますが「軽が売れる日本で生き残るのは難しいだろうな」との冷静な意見もあり「廃止されるのも仕方ない」との反応も多くあるようでした。
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グローバルに目を転じると、たとえば全長4mのコンパクトボディに3列シート・7人乗りレイアウトとしたミニバン、トヨタ「AVANZA(アバンザ)」/ダイハツ「XENIA(セニア)」が2003年に共同開発され、インドネシアで発表されています。
また2013年にはトヨタ「AGYA(アギア)」/ダイハツ「AYLA(アイラ)」というコンパクトカーも同様に共同開発するなど、海外市場向けの廉価なモデルを中心に複数のモデルが展開されています。
こうしたモデルをベースにして、小型で良質・廉価な4代目パッソが登場する可能性はまだ残されているのかもしれません。