右左折時に、曲がる方向とは逆にハンドルを切る、通称「あおりハンドル」(運転)をする人がいます。反対側に膨らんでから右左折する必要はあるのでしょうか。
■「あおりハンドル」無意識にやってない?
交差点を右左折する時に、曲がりたい方向とは反対側に膨らんでから曲がるクルマを見かけることがあります。
「あおりハンドル」とも言われるこの行為は、周囲を走行するクルマにとって大迷惑で危険な行為なのですが、いったいなぜ「あおりハンドル」をしてしまうのでしょうか。
あおりハンドルは、交差点で右折や左折をする時に、一度反対側にハンドルを切ってから曲がる方法で、特に小回りが必要となる左折の場面で右に膨らんで曲がるクルマが危険だと指摘されることがあります。
一方で、バスや大型トラックなど車体が前後に長いクルマが左折する時には、あえて右に大きく膨らんで左折する方法を取ることもありますが、後続車から見るとウインカーを左に出しているのに一旦右にハンドルを切って左折するように見えるため、普通車や軽自動車が行うと後続のドライバーを混乱させてしまうかもしれません。
また、右にハンドルを切ることで左側に大きく隙間があいてしまい、歩行者や自転車、原付などのバイクが入り込むリスクが高まり、巻き込み事故につながる恐れがあり危険です。
交差点での左折の方法について、道路交通法第34条第1項では「車両は、左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り道路の左側端に沿って(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分を通行して)徐行しなければならない」と定められています。
たとえ左折のために左側に寄っていたとしても、あおりハンドルをすることで左側端からは離れてしまうことになり、交通違反となる可能性もある行為なのです。
JAFの調査によると、一度右に振ってから左折しているクルマがおよそ2割も存在し、無意識にやってしまっている人も少なくないといいます。
あおりハンドルになってしまう原因のひとつには、左折前に十分な減速ができていないことが考えられます。
スピードが出ているとハンドルを大きく切ることが難しく、特に速度が出やすい幹線道路などの広い道路から、一方通行の道路のような狭い道に左折しようとする時には、しっかり減速できていないと左折の難易度が上がります。
道路交通法で定められた左折の方法でも徐行しなければならないとされていますが、「徐行」とは「車両等が直ちに停止することができるような速度で進行すること」であり、時速10km以下が目安です。
さらに、もうひとつの原因として、クルマが曲がる時に前輪が通るコースと後輪が通るコースに差が生じる「内輪差」が挙げられます。
クルマが左折する時は内輪差によって前輪よりも後輪のほうが内側を通ることになりますが、初心ドライバーのほか、普段と違うクルマに乗っている時やクルマを買い替えたばかりで新しいクルマのサイズに慣れていない場合など、内側のガードレールや縁石にボディやタイヤのホイールを擦ってしまうことを恐れて無意識に膨らんでしまうことがあります。
なかには右に膨らまなければ曲がれないほど鋭角な交差点などもありますが、そういった特殊な場合を除いて、軽自動車や普通車であれば一般的な交差点は基本的にはあおりハンドルをしなくても曲がることができるでしょう。
あおりハンドルになっていないか、常に意識しながら運転すると良いかもしれません。
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あおりハンドルをしてしまわないためにも、交差点で右左折をしようとする時は早めにウインカーで合図を出し、事前にしっかりと減速することが大切です。
また、ガードレールや縁石があっても、自分のクルマのサイズや内輪差を把握しておくことで曲がりやすくなるでしょう。