クルマのボディ表面がザラついている場合、鉄粉が刺さっているといいます。なぜ刺さるのでしょうか。またその状態を放置するとボディに悪影響はあるのでしょうか。
■クルマに「鉄粉」なぜ刺さる? 放っておくとサビることも
洗車後、拭き上げたボディの表面を触るとザラザラした感触が残っていることがあります。これは塗装面に刺さった鉄粉だといわれています。
なぜ、鉄粉がクルマのボディ(塗装面)に刺さるのでしょうか。
空気中にはさまざまな物質が漂っています。そんななかでもクルマのボディに良くないといわれているのが鉄粉です。
これはクルマから出る「ブレーキダスト」が主な原因とされており、ブレーキの構造上、ブレーキパッド(シュー)と呼ばれる鉄製のパーツをブレーキローター(ドラム)に押しつけて摩擦力を制動力としており、そこで削られた鉄粉が出るようになっているのです。
このため、鉄粉を出さないようにすることがそもそも難しいといえます。特に、交通量の多い幹線道路の周辺には大量の「ブレーキダスト=鉄粉」が浮遊、ボディの塗装面に刺さるような形で付着していきます。
同様に、鉄道の高架下や線路付近なども列車が通るたびにレールと車輪が削られ、鉄粉が浮遊しやすく、さらにその周辺が保管場所であれば大量の鉄粉がボディに付着してしまいます。
神奈川県のH整備士は以下のように話します。
「クルマの塗装面はクリア層など何層かになっているのですが、浮遊する鉄粉よりも柔らかいのです。そのため、空気中に浮遊した鉄粉が雨などに濡れて酸化してしまい、塗装面に刺さってしまうんです」
チェック方法として、タバコやお菓子などのシュリンク(薄いフィルム)包装のセロファンを使う方法。指を通しボディ表面をなでるように触ってみると、かなりザラザラしているのがわかります。
これは洗車では落ちないのでしょうか。また放置すると悪影響はあるのでしょうか。
「表面に乗っているだけの汚れはある程度洗い流せるのですが、やはり刺さってしまった鉄粉はそれ用の処置をしないと除去しにくいでしょうね」(H整備士)
ボディ表面に刺さりザラザラしている程度はまだ軽傷で、ひどくなると毛穴のように小さな穴が塗装面に開いてしまうことも。そうなるまで放置していると、確実に悪影響が出る可能性もあります。
「この『鉄粉が刺さる』というのは、ブレーキダストなどで発生した酸化鉄が塗装表面に食い込んだ状態のことです。
酸化、つまり錆びた鉄が表面に食い込んでしまっているのですから、そのまま放置すると塗装面を傷つけるだけでなく、奥に入り込み実際の鉄板にまで侵食して、塗装面の内側から錆が発生してしまうこともあります」
クルマは塗装面の内側が錆びてしまうと、表面を削ってからさらに錆を取り、再塗装までしないといけなくなるケースもあります。
そうなる前に表面の鉄粉を除去し、塗装面を守ってあげる必要があるのです。
■知らぬ間に付着した「鉄粉」 どうやって除去する?
塗装面に悪影響しかない鉄粉。除去方法として、カー用品店などでも鉄粉除去用製品は数多く販売されており、大別すると液体タイプと粘土タイプ(トラップ粘土)があります。
どちらも有効な手段なのですが、どちらにも一長一短あるようです。
「多くの情報サイトや雑誌などで『トラップ粘土』を推奨する記事を見かけますが、使い方次第では逆に塗装面を痛めてしまうこともあるんです。
というのも、トラップ粘土には表面にこびりついた『鉄粉』を吸着する効果があるのですが、同時に研磨剤も含まれています。
通常は水をかけながら粘土内に『鉄粉』を取り込み、内側に押し込みながら使用しますが、そのさいに塗装面に研磨剤で小さな傷をつけてしまうんです」(H整備士)
つまりトラップ粘土での鉄粉取りは、効果は高いもののボディ表面も研磨してしまうため、使い方によっては一部分だけ擦り過ぎてムラができたり、表面のクリア層を痛める原因にもなってしまうのだとか。
「一方で液体タイプの鉄粉除去剤は、こびりついた鉄粉を溶かす性質を持っています。ただし塗装面へのダメージを抑えるため、市販品はあまり強力ではありません。
通常は鉄粉除去剤を塗布後、5~10分待って、再度洗車する施工方法になりますが、塗装面へのダメージを抑えるため、我々プロが使うものと比べるとあまり強力ではありません」
それでもカーシャンプーでは取れなかった鉄粉をある程度溶かし、マイクロファイバーなどの柔らかい布で拭き上げる方法なら、効果は限定的ながら塗装面を痛めにくいという特徴があるので、塗装を痛めたくない方にはおすすめの方法になります。
「この鉄粉除去剤ですが、さらに除去効果を高めるならスポンジに似た形状の鉄粉除去パッドと組み合わせるという手もあります。
ただしこれも塗装面を若干痛めてしまう可能性がありますので、まずは塗装面に1番損傷が少ない鉄粉除去剤を使い、鉄粉の取れ具合に応じて、段階的に強力なトラップ粘土などを使うのがいいと思いますよ」(H整備士)
これは傷消しでコンパウンドを使用するのと同じ原理で、まずは効果が弱くてもボディを痛めにくいもの(この場合は鉄粉除去剤+柔らかい布)から試し、塗装面への影響を考えながら少しずつ効果の強いもの(専用の鉄粉除去パッドやトラップ粘土)を使っていくというのが良いとのこと。
「また鉄粉除去をすると、表面のコーティングが一部取れてしまう可能性もあります。作業後は改めてコーティングなどで塗装面を保護するのを忘れないでください」(H整備士)
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ボディに付着する鉄粉は、ボンネットやルーフはもちろん、ブレーキディスクに近いホイールハウス周辺などにも多く付着しているといわれています。
秋から冬に向けてコーティングをする前にボディの下処理として、鉄粉除去しておくといいかもしれません。