サイレンを鳴らさず、赤色灯の点灯のみで走行しているパトカーを時々見かけることがありますが、あれは「緊急車両」としての走行なのでしょうか。そのようなパトカーの法的な立場と、サイレンをなぜ鳴らさないのかについて理由を、元警察官に聞きました。
■緊急なの? 緊急じゃないの? どっちなんだい!
サイレンを鳴らさず、赤色灯(パトランプ)のみを点灯させて走行しているパトカーを見かけたことはないでしょうか。
赤色灯が点灯していると「緊急走行」をしているようにも思ってしまいますが、サイレンを鳴らしていない場合は緊急走行ではないのでしょうか。
実は「赤色灯のみを点灯」して走行しているパトカーは、「緊急車両(緊急自動車)」に該当しません。
そもそも、緊急車両は「必ず赤色の警告灯を点灯させ、サイレンを鳴らして走行しなければいけない」と、道路交通法第39条および同法施行令第14条の規定により定められています。
そのため、赤色灯の点灯だけでは緊急車両とみなされないのです。
では、なぜ「赤色灯のみ」を点灯させて走行しているのでしょうか。
これについて元警察官のA氏に話を聞いたところ、以下の回答がありました。
「周囲に安全運転を促す意味で赤色灯を点灯させて走行しています。
とくに交通安全週間など、ドライバーの皆さんに交通安全をより意識していただきたいタイミングなどは、赤色灯を点灯させて走行することが多く見られます」(元警察官のA氏)
つまり赤色灯を点灯させて走行することで、パトカーの存在を周囲に認知させ、安全運転への意識向上のほか犯罪行為の抑止にもつながるということです。
直近では、2023年9月21日から9月30日にかけて「秋の全国交通安全運動 2023」が実施されたので、この期間に「赤色灯のみ点灯させたパトカーを見掛けた」という人は多いかもしれません。
また、「スピード違反のクルマに追従して速度測定を行う際に赤色灯のみを点灯させて走行することがある」とのこと。これは道路交通法施行令第14条にも定められていることです。
その他にも、通報を受けて現場に向かう際に、あえてサイレンを鳴らさずに走行することがあり、サイレンを鳴らすことで周囲などに“何らかのリスク”が生まれると想定されるケースでは、意図的に赤色灯のみでの走行をする場合もあるようです。
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このように、パトカーは周囲に安全運転を促すためや、犯罪の抑止といった目的で「赤色灯のみ」を点灯させて走行していることがあります。
パトカーを見ると、何も悪いことをしていなくても監視されているような気がして緊張してしまう人もいるかもしれませんが、それにより逆に周囲の状況を見落とさぬよう、一層気を引き締めて安全運転を心掛けましょう。