2023年は度々「次期セリカ」に関する話題が飛び変わってましたが、本当に登場する可能性はあるのでしょうか。
■「セリカの復活」はどうなったのか?
トヨタが佐藤恒治社長率いる新体制となった際、話題となったのが「セリカの復活」でした。
かつてトヨタのラリー参戦を象徴するモデルでしたが、現在は歴史に幕を下ろしたままです。
しかし、2023年は度々「次期セリカ」に関する話題が飛び変わってましたが、本当に登場する可能性はあるのでしょうか。
2023年3月4-5日に開催された全日本ラリー選手権第2戦「新城ラリー2023」のトークショーで豊田章男会長がセリカへの想いをこのように語っていました。
「ラリーファンにとってはヤリス、カローラと来れば、やはりセリカだと思います。
トヨタはこれまで様々なモデルを廃止してきた反省があります。
そういう流れを佐藤新社長が引き継いでくれるのでは……と、淡い想いで期待をしております」
それ以降、そのウワサは沈静化したように思われましたが、9月8-10に開催された全日本ラリー選手権第7戦「ラリー北海道2023」で、トヨタイムズの生放送中にゲストとの会話の中で再びこの話が浮上しました。
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本郷氏(トヨタイムズのゲスト):セリカは本当に出るんですか?
豊田氏:トヨタ自動車に聞いてくださいよ。執行の立場じゃないんだもん。
本郷氏:でも、お願いはできるじゃないですか。
豊田氏:だから、お願いしていますよ。
(中略)
豊田氏:ここがラリー会場だから言うわけじゃないですけど、デモランに招待したカンクネンさん=セリカです。
4回のチャンピオンはセリカで獲得しています。
なぜ、私がここまでカンクネンさんを使っているか、考えてみてください!共感してみてください!
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この様子から、豊田氏の「淡い期待」は変わっていないどころか、より強まっているように感じます。
コメントに登場したセリカとはグループA時代のWRCで活躍した「GT-FOUR(4代目:ST165、5代目:ST185、6代目:ST205)」の後継モデルです。
ちなみに豊田氏とセリカGT-FOURの組み合わせと言えば、2015年東京モーターショー開幕直前に行なわれた「東京モーターショー60周年パレード」の時、カストロールカラーのセリカGT-FOUR(ST185)で走っています。
この時はトヨタがWRCに復帰前、今思えばそれを匂わせていたようにも思えます。
更に2023年8月に行なわれたWRC「フィンランドラリー」の翌日、ドライバーを交えた運転トレーニングの際に、豊田氏はGRヤリスRally1/Rally2はもちろん、ヤリ-マティ・ラトバラ氏が所有するコレクションの1台であるセリカGT-FOUR(ST165)にも試乗。
筆者はトヨタ関係者からセリカで楽しそうに走る豊田氏の映像・画像を見せてもらいました。
そんなセリカ復活の夢を持っているのは豊田氏だけではありません。
現社長である佐藤恒治氏の人生の夢は「セリカ復活」だと言います。
実は先日、佐藤社長と愛車の話になり、こんな事を教えてくれました。
「シャシ設計時代にセリカに乗っていました。
当時は『走りは足が大事』と思っていたので、スーパーストラットサスペンション(ホンダの4輪ダブルウィッシュボーン式サスに対抗するために開発された究極のストラットサスペンション)に興味があって……。
実際に走らせてみると、FFとは思えないハンドリングに驚き、より愛着が湧きました。
私の中でこの時の体験が『セリカ愛』に繋がっています」
つまり、豊田氏も佐藤氏も「セリカ愛」は共通ながらも、豊田氏は「ラリー」、佐藤氏は「サスペンション」と、LOVEの部分の想いが異なるのが興味深い所です。
と言っても、2人の想いだけで開発GOになるほどトヨタは甘くありません。
自動車産業はビジネスであり収益性はスポーツカーでも無視できない状況です。
つまり、社会情勢や景気に左右されないスポーツカービジネスを成立させるには、今までとは違ったアプローチも必要です。
■【これなら欲しい?】セリカ復活の道… 考えられる現実的なスペックとは
「GRスープラ」はBMW、「GR86」はスバルと共同開発と言う方法を取りましたが、これもその理由の1つなのです。
では、次期セリカが復活するためには、どのような手段がいいのでしょうか。
セリカ復活のためのヒントは歴代モデルにあります。
1つは「メカニズムの汎用性」です。歴代セリカはその時代に大衆モデル(カリーナ/コロナ、カローラなど)のメカニズムを上手に活用しながら開発されています。
それを現在に置き換えれば、「TNGAのフル活用」と言うことになります。
となると、プラットフォームは「GA-C」を活用するのが最も現実的です。
ちなみにカローラスポーツは全長4375mm×全幅1790mm×全高1460mmですが、最終型セリカ(7代目)のボディサイズ(全長4340mm×全幅1735mm×全高1305mm、ホイールベース2600mm)とり比較すると、全高以外の部分は近似性があります。
その上にクーペらしい伸びやかかつワイド&ローのフォルムが載るわけですが、そこは今のトヨタ・レクサスのデザインを手がけるSimon Humphriesデザイン統括部長率いるチームがいるので今のトヨタらしいデザインに仕上げてくれるでしょう。
恐らく、デザインや衝突安全性などを考慮しても、全長は4500mm以内、全幅1850mm~1880mmくらいに収められるでしょう。
2つ目は初代セリカで採用された「フルチョイスシステム」です。
これは初代セリカで設定されたアイデアで、スポーツバージョン(1600GT)を除くモデルはグレードを設定せず、エンジン(3種類)/トランスミッション(3種類)/エクステリア(3種類)/インテリア(8種類)を自由に組み合わせて、自分好みの仕様に仕立てる事が可能でした。
これを現代流に置き換えると「パワートレインのフルチョイスシステム」と言う事になります。
セリカ復活にはストーリーも大事ですが、単にノスタルジーではなく新たな提案が必要だと思っています。
今、トヨタに足りないモノは何かと言えば、筆者は「マルチパスウェイの象徴」だと思っていますが、それを次期セリカが担うべきだと考えます。
豊田氏が想うセリカGT-FOUR改めGRセリカはGRヤリス/GRカローラ譲りの直列3気筒1.6リッターターボ(G16E)+6速MT+GR-FOURの組み合わせが適任でしょう。
逆に佐藤氏が想うセリカはHEV/PHEV/BEVの中から自由に選択できるようにする。
つまり、他のモデルよりも先を行く「群戦略」を取るのです。
ちなみにGA-Cモデルを見ると、HEVはほとんどの車種、PHEVはプリウス/C-HR(欧州向け)、BEVはレクサスUX300eにラインアップ済みですので、技術的な面での問題はないはず。
しかし、ただ流用して搭載するのではなく、セリカにふさわしいパフォーマンスを実現させるためにも、現在開発中の次世代バッテリー技術を活かしてほしい所です。
このようなカタチで登場するのであれば、「セリカブランドの復活」と「トヨタのマルチパスウェイ戦略」という2つのインパクトを世の中に打ち出すことが出来るかもしれません。