トヨタは2023年11月頃、新型「クラウンセダン」を発売します。クロスオーバータイプのクラウンが先行発売されるなかで登場する高級セダンとは、どのような位置付けとなるのでしょうか。
■「高級SUV」や「高級ミニバン」……高級車のカタチが変わってきている
2023年11月頃に正式発表される予定のトヨタ新型「クラウンセダン」。セダン市場が縮小しているなか投入される新型セダンには、高級セダン派ユーザーからの大きな期待がかかっています。
はたして新型クラウンセダンは、セダン復権への足掛かりとなるのでしょうか。
トヨタは2023年10月6日、スポーツSUVの新型「クラウンスポーツ」を正式発表しました。
セダンとSUVのクロスオーバーモデル、新型「クラウンクロスオーバー」に続く16代目クラウンシリーズの第2弾となるモデルです。
これに続き、第3弾として新型クラウンセダンが11月頃に発表されることが明らかにされました。
トヨタが公表している新型クラウンセダンのボディサイズ(開発目標値)は、全長5030mm×全幅1890mm×全高1470mm、ホイールベース3000mmです。
現在のトヨタ車のセダンラインアップでいえば、燃料電池車(FCEV)の「MIRAI」(全長4975mm×全幅1885mm×全高1470mm、ホイールベース2920mm)よりもやや長いというサイズです。
3メートルという長いホイールベースでは、最小回転半径も大きくなってしまうので、クラウンクロスオーバーに標準搭載されているDRS(後輪操舵機構)は、セダンにも間違いなく標準搭載となるでしょう。
パワーユニットは、従来のハイブリッドのほか、2代目MIRAIと同じユニットのFCEVが用意される予定です。
セダンボディのメリットは、キャビンスペースと荷室とを仕切るリアバルクヘッドがあることで、基本の車体骨格を強固につくりやすいことにあります。
荷室からの騒音を遮断しやすく、静粛性も高くなる傾向で、SUVやミニバンよりも全高が抑えられることから、燃費性能や横風安定性も有利になります。
そしてセダンは、ほかのボディタイプのクルマよりも重心高が低く、総じて安定した走行特性が得られることから、「運転が楽しいクルマ」になりやすい、といわれてきました。
しかしながら、昨今の新型車は、SUVやミニバンであっても、乗り心地やロードノイズといった快適性の面で、セダンと同等以上にできています。
トヨタは2023年9月6日、ショーファーカーの「センチュリー」に、SUVのように車高を上げた新型モデルを追加しましたが、この新型センチュリーの乗り心地が、新型クラウンセダンに負けているなんてことはまずないでしょう。
新型クラウンセダンは、国内においては先代クラウン並み(月販2000台程度)には売れると予想されます。
しかしセダン市場縮小を食い止めるまでの役割を果たすことができるかは難しいところだと筆者(くるまのニュースライター 河馬兎)は考えます。
とはいえ、セダンにメリットがまったくなくなったわけではないでしょう。
セダンボディを「古臭い」とか「保守的」とする人もいますが、それは言い換えれば「古典的でフォーマル」「エレガント」だと捉えることもできます。
また、セダン特有のロングノーズとトランクスペースは、高級車の証しとしてマストだというユーザーもいるはずです。言い換えれば「セダンこそが高級車の王道だ」という考え方です。
新型クラウンセダンは、新型センチュリー発表の場に、2023年6月にフルモデルチェンジとなったラージミニバンの「ヴェルファイア」のPHEVモデルとともに展示されました。
セダン、(トヨタは車高が上がった新型センチュリーを「SUV」とは表現していませんが)SUV、そしてミニバンと、異なる3つのボディタイプを、トヨタにおけるショーファーカーの極みであるセンチュリーの新モデル発表の場に展示させたのは、これからのショーファーカーはセダンだけではないというトヨタからの提案にほかなりません。
そしてトヨタがユーザーに対し豊富な選択肢を用意することが、自動車メーカーの役割だと考えたからではないでしょうか。
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高級セダンを乗り継いできたユーザーたちにとって、ハンドリングや乗り心地、遮音・低振動、燃費、加速といったクルマ本来の性能のよさは備わっていて当然のこと。
そこからさらに、エクステリアやインテリアから受ける見栄えや先進性、雰囲気など、「満足感」や「優越感」がどれほど得られるかというのが重要なポイントとなります。
新型アルファード/新型ヴェルファイアにも新型センチュリーにもない、新型クラウンセダンだけの「強み」を期待したいところです。