ダイハツは2023年10月6日、東京ビッグサイトにて10月28日から開催される「ジャパン モビリティショー 2023」に出展するクルマの1台として新型「ビジョン コペン」を発表しました。このクルマ、32年前に発表された“とあるモデル”との共通点の多さが気になる一台です。
■新型「ビジョン コペン」は1991年に登場していた?
ダイハツは2023年10月6日、東京ビッグサイト(東京都江東区)にて10月28日から11月5日に開催される「ジャパン モビリティショー 2023(以下、JMS2023)」の出展概要を公開するとともに、その中の1台として“次期型コペン”を表現したといえるモデル新型「ビジョン コペン」を発表しました。
これはコペンの将来の姿を示唆する注目すべきコンセプトカーですが、実はダイハツは過去に同車と非常に共通点の多い“とあるモデル”を発表していました。
コペンは初代が2002年に登場。前輪駆動(FF)の軽自動車でありながら爽快な走りとオープンエアー、そして電動格納式ハードトップを採用するなど、非常に凝った機構を特徴とするクルマです。
また丸いボディやヘッドライト類の愛らしいデザインも同車の魅力で、初代の発売から現在まで継続してファンからの根強い支持を受け続けています。
現行型は2014年に登場した2代目で、トヨタへ「コペン GR SPORT」としてOEM供給されています。
今回発表された新型ビジョン コペンは、コペンの中でもとくに人気のあった初代モデルのデザインをモチーフにしつつ、現代的な解釈で再現した外観が目を引きます。
デザイン的な要素でも気になる箇所は多いコペン ビジョンですが、もっとも注目すべきは同車のエンジンが軽自動車用の660ccではなく1300ccに拡大されている点と、駆動方式が後輪駆動(FR)に変更されている点でしょう。
それに合わせてボディサイズも大きくなり、全長3835mm×全幅1695mm×全高1265mmと軽規格を遥かに超える堂々としたサイズとなっています(現行コペンは全長3395mm×全幅1475mm×全高1280mm)。
しかし実は、ダイハツは32年前の1991年に開催された第29回東京モーターショーにて、1台のスポーツカーのコンセプトモデルを発表していました。
それが「X-021」です。
ダイハツと、レーシングカーやコンセプトモデルなどを手掛ける童夢による共同開発によって誕生したX-021は、カタチだけのコンセプトカーではなく、実際の走行メカニズムまで作り込まれており、市販化を強く意識された期待のモデルでした。
1.6リッターエンジンをフロントに搭載し、後輪を駆動するFR式を採用したライトウェイトオープンスポーツカーのX-021は、車重が僅か700kgに抑えられ、小さなエンジン出力でも爽快な走行を実現。
サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン形式とコストを掛けた構造で、さらに前後重量配分も理想的と言われる50:50を目標に開発されています。
また外観デザインもX-021の大きな魅力で、丸みを帯びた豊かな面で構成されたボディに愛らしい「丸目2灯」のヘッドライト、“ほっぺ”のようなウインカーや口のような四角いロアグリルを備えた同車は、小さなボディでも生活を華やかに彩ってくれる相棒のような雰囲気をエクステリアからも感じられるモデルでした。
そんなX-021は、当時の自動車業界にライトウェイトスポーツカーの旋風を巻き起こしていたマツダの初代「ロードスター」を強く意識して開発された、数多くのフォロワーの1台と言えますが、内部構造も発表されていたことから、ダイハツの力の入れようが伝わります。
しかし、日本はその後バブル崩壊の影響を受けて経済が低迷。
後に「失われた30年」と呼ばれるほど長い不況が始まったことで、様々な新規車種の開発がストップし、X-021もその後は開発の音沙汰が無くなり市販されることはありませんでした。
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今回、ダイハツが発表した新型ビジョン コペンは、伸びやかなロングノーズのプロポーション、コンパクトな排気量、古典的なスポーツカーらしい後輪駆動など、どこかダイハツがX-021で追い求めた夢を現代に呼び起こしたようにも見えます。
新型ビジョン コペンはあくまでもコンセプトカーで、市販化が約束されたモデルではありません。
しかし、ガソリンエンジンを搭載したクルマの時代に終わりが囁かれる昨今だからこそ、X-021で叶えられなかった夢を32年ぶりに実現して欲しい。そんな思いを抱かせる、JMS2023では実車の展示が楽しみな1台です。