かつての欧州車には「ヘッドライトワイパー」が装備されているクルマがありました。最近ではほとんど見かける機会がなくなりましたが、なぜなくなったのでしょうか。
■現在ではほとんど見かけないヘッドライトワイパー
最近では見かけることがほとんどなくなりましたが、1990年代の欧州車の一部にはヘッドライトにワイパーが装備されていました。
最近ではほとんど見かける機会がなくなりましたが、なぜなくなったのでしょうか。
通常のワイパーは視界の確保をすることを目的に装備されていますが、ヘッドライトワイパーは付着した虫や泥、雪などを取り除くことで、光量の確保を目的に採用されています。
欧州の一部の地域では、日本ほど外灯が設置されていないことあって、ヘッドライトの光に虫が集まりやすいことや、未舗装の道路も多く、泥はねなども珍しくないことから導入されていました。
また、欧州地域では降雪量が多いこともあり、視界確保のためにヘッドライトワイパーは必須アイテムとなっていました。
そのため、メルセデス・ベンツでは他のメーカーに先駆け、1972年の初代「Sクラス(W116)」にヘッドライトワイパーを初搭載したと言われています。
ほかにもスウェーデンのボルボやサーブは、1970年代ごろからヘッドライトワイパーの採用が拡充されてきました。
とくに1990年代のボルボでは、多くのモデルにヘッドライトワイパーが装備され、夜間の視界確保に努めていたことがうかがえます。
国産車では、1980年に登場した日産「サファリ(160型)」に採用されていた他、同じくの日産の「シルビア(S12)」にはリトラクタブルヘッドライトワイパー採用されていました。
このように、便利なヘッドライトワイパーですが、現在では見かける機会がありませんが、搭載車が減った理由にはどのようなものがあるのでしょうか。
かつてはほとんどの車種にヘッドライトワイパーを搭載していたボルボの販売店担当者は、次のように話します。
「かつてはヘッドライトワイパーが主流となっていましたが、ヘッドライトウォッシャーが搭載されるようになってからは、完全にこちらに移行しました。
これは、LEDヘッドライトが一般的となったこともあり、デザイン性の自由度が上がったことにも起因していると考えられます。
ヘッドライトウォッシャーは、ワイパーを搭載するのが難しい形状のヘッドライトにも対応できます。
加えて、近年のモデルは風洞実験による空力特性の向上もあることから、ヘッドライトに雪や泥が付着しにくくなってきています。
また、ワイパーのゴム部分が傷みやすいなど、デメリットが目立つようになったこともあり、現在のクルマでは採用されることがなくなったと考えられます」
ヘッドライトワイパーがなくなった理由のひとつにヘッドライト内部のリフレクターが効率の良いものに変化したことが挙げられます。
そしてヘッドライトの明るさを向上させる技術がバルブの変化で「ハロゲン」から「キセノン(HID)」、近年では「LED」に変わったことが大きいといえるでしょう。
ただし、キセノンやLEDは消費電力の少なさからハロゲンと比較しても熱をほとんど発生させません。
熱がないと雪をとかすということでは不利になるため、代わりにヘッドライトにウォッシャー液を噴霧する「ヘッドライトウォッシャー」が主流となってきました。
欧州ではキセノンやLEDヘッドライト装着車はヘッドライトウォッシャーの装備が義務付けられているため、ヘッドライトワイパーに代わって主流になっています。
また、ヘッドライトそのものの進化もヘッドライトワイパーがなくなった理由のひとつです。
以前のヘッドライトカバーの素材はガラスが主流でしたが、透明度が課題で光量に限界がありました。
現在では、ポリカーボネート樹脂が主流になっており、格段の明るさを確保できるようになっています。
このように、技術の進化により、かつての必需品とも言えたヘッドライトワイパーは、近年のクルマからは姿を消したようです。
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なお、日本国内でも「2000ルーメン以上の明るさ及び、配光可変型前照灯はヘッドライトウォッシャー設置が義務」となっていることもあり、搭載車が増えています。