リセールバリューの高さでも知られるトヨタ「ランドクルーザー」ですが、近年2018年式の中古車相場が高騰しているといいます。5年落ちのランクルが高値になるカラクリについて探ります。
■リセール良好なランクル「2018年式」だけが異常な高騰!?
中古車の再販価値が高い、いわゆる「リセールバリューが高いクルマ」としても知られるのが、トヨタの四輪駆動車「ランドクルーザー(ランクル)」です。
ランクルシリーズのフラッグシップモデルは、2021年8月に最新型(300系)にフルモデルチェンジしていますが、2023年に入り旧型である200系、しかも2018年式が高騰しているそうですが、どういうことなのでしょうか。
先代であるランクル200系は2007年9月に登場。300系登場まで、約14年間も製造が続けられていました。
ランクル200系は、豪華な内外装の仕立てに加え、悪路での高い走破性を生み出す本格的なフルフレーム構造などが特徴です。
道なき道を走り切るタフさや、故障知らずな機関系などから世界中で支持を集めていますが、特に中東地域ではこの200系ランクルへの信頼度が非常に高いと言われています。
新型ランクル300系の流通が始まるなか、ランクル200系は現地の富裕層の若者が気軽な“アシ”車として使っていたり、砂漠地帯の起伏を走り回るアクティビティである「デザートサファリ」でも活躍するなど、幅広く利用されています。
もちろん現地のトヨタ正規ディーラーでも、新車のランクルを購入することはできます。
しかしランクルの輸出事情に詳しい中古車買い取り専門店の担当者はこのように話します。
「現地の正規ディーラーでランクルを購入すると非常に高額で、しかも納期も長くかかってしまいます。
そのため高い輸入関税を払ってでも、総額が安く、船便で1か月程度とすぐに手に入る中古車を日本から輸入したほうが良いとなり、海外バイヤーの人気を集めているのです」
担当者によると、中古のランクルがもっとも輸出されているのは中東の国、パキスタンだといいます。
パキスタンは、日本と同じ左側通行、つまり右ハンドルでOKの国です。
輸入後にわざわざ左ハンドルへ改造せずとも、そのままの仕様で輸出できるのが大きな利点といえ、このことから日本の中古車需要が高くなっている理由だと説明します。
つまり日本でランクルの査定が高い(=中古車相場が下がりにくい)のは、何よりこのパキスタンでの需要の高さがもっとも大きな要因だと言うのです。
■5年落ち「2018年式」が支持される特殊な理由とは
このように根強く人気を集めるランクル200系ですが、そのなかでも特に2018年式が高騰している理由があるといいます。
前出の中古車買い取り専門店スタッフは、次のように説明します。
「2018年式が人気なのは、パキスタンの輸入規制が大きく関係しています。
世界各国では、中古車を自国に輸入する際に、それぞれの国の事情に即した規制をかけています。
パキスタンの場合『輸入できるのは製造年から5年落ちの中古車まで』という規制があり、5年落ちを過ぎた中古車は、パキスタンへ輸出できないのです。
輸出可能なのは5年落ちまでなので、4年落ちでも3年落ちでも良いわけなのですが、規制限界年式に近いほど関税額が軽減されるため、今年2023年の場合には、5年落ちとなる2018年式の需要が高く、高騰しているのです」
実際の事例を紹介すると、2023年に入って、5年落ちとなる2018年式・走行距離2万キロのランクル200系は、業者向けのオートオークションで、800万円を超えて落札された事例が見られるようです。
これは業者間取引きでの価格であり、一般の中古車買い取り店での買取価格ではないことを念のためお知らせしておきますが、新車当時のランクル200最上級グレード「ZX」の車両価格は税抜でおよそ632万円ですので、単純計算で170万円近くの利益を得ることになります。
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前出の中古車買い取り専門店スタッフによると、パキスタンは、自国通貨の海外流出を防ぐなどの理由で、つい先日まで、全てのクルマの輸入禁止措置を行っていました。
その都度ランクル200の中古車相場は下落していたそうで、必ずしも上記のような事例となるとは限らないようです。
とはいえ、このようにも話しています。
「パキスタン以外の国からも非常に人気が高く『ランクルは5年間乗っても損をしにくいクルマ』であることは確かです。
そしてもちろん、現行型で長い納期待ちを伴っているランクル300や、今後登場する予定の新型『ランドクルーザー250(ランクル250)』も同様に、価値が落ちにくいクルマになっていくでしょう」
ランクル300や新型ランクル250を新車購入した人やこれから購入する予定の人はぜひ、5年落ちでの買取価格に注目してみてください。