コンパクトカーには近年、プレミアムな内外装を持つモデルが登場しています。なかには極めて豪華に仕立てた特別モデルも存在しましたが、どのようなクルマなのでしょうか。
■ロールス・ロイスが手掛けた最高級ミニ「インスパイアード バイ グッドウッド」
近年、コンパクトカーにおいても上質な内装を採用するなど、プレミアム感を高めたモデルが登場しています。
しかし、コンパクトカーとしては異次元ともいえる、極めて高級な素材を用いた「超豪華」なモデルもあります。
日常使いに便利なコンパクトカーは比較的低価格で展開されているモデルが多く、内外装も上級モデルよりシンプルな仕立てとなっている場合がほとんどです。
しかし近年は、日産「ノートオーラ」やホンダ「フィット LUXE(リュクス)」など、上質な内装を特徴とするモデルも見られるようになり、コンパクトカーでもプレミアム性を高めたモデルへの需要が高まっているようです。
そのようななか、2012年にはすでに高級な内装を装備するコンパクトカーが存在。しかも仕上がりは、もはやプレミアムカー顔負けともいえるものでした。
イギリス発祥のコンパクトカーブランドで、現在BMWが展開している「ミニ」が2011年4月に発表した「MINI INSPIRED BY GOODWOOD(ミニ・インスパイアード・バイ・グッドウッド、以下IBGW)」は、特別な内外装をあしらった限定モデルです。
ベースは2006年登場の2代目ミニ(3ドア)のうちのスポーティモデル「ミニ クーパー S」(R56型)で、パワートレインは最高出力184馬力・最大トルク240Nmを発揮する1.6リッター直列4気筒エンジンを搭載。6速ATまたは6速MTを組み合わせ、FF(前輪駆動)となっています。
ボディサイズは全長3745mm×全幅1685mm×全高1430mmです。
このIBGWの最大の特徴は、同じBMW傘下で最高級乗用車として名高いイギリスの「ロールス・ロイス」ブランドがコラボレーションし、内外装を仕上げている点です。
IBGWはロールス・ロイス本社が置かれ、イギリス自動車業界の聖地ともいわれるイギリス南部グッドウッドで計画されたモデルであり、全世界限定1000台で用意されました。
エクステリアは、ミニには設定されないロールス・ロイス専用色「ダイアモンド・ブラック・メタリック」が採用されたほか、ミニ クーパー S通常モデルに備えられるボンネットのエアダクトを廃止。
ミニシリーズ全車に共通するフロントフェンダーの加飾パネル「サイドスカットル」には専用デザインのものが装備されるなど、ロールス・ロイスの威厳とエレガントさをプラスしています。
インテリアは、ロールス・ロイス専用「コーンシルク・ベージュ」を採用し、IBGW向けに厳選されたバー・ウォールナット素材の本木目ウッドパネルを装備したうえ、パネルには加飾を手作業ではめ込むインレイ加工が施されました。
さらに、インパネやメーター、センターコンソール、ルーフ内張り、ドアサイドなどの各トリムにもロールス・ロイス専用品の最高級レザーが用いられ、カーペットは「ディープ・ウール・フリース」素材を、ラゲッジスペースやサンバイザーにも最高級カシミア生地を使用しています。
メーターはロールス・ロイスモデルと共通書体となっており、ドアサイドシルやシフトレバー付近には「MINI INSPIRED BY GOODWOOD」のロゴや「One of 1000」(1000台のうちの1台)の刻印入りアルミパネルが装備されています。
内外装すべてにロールス・ロイスの要素を取り込み、細部にわたって贅沢な仕上げを施したIBGWは、日本国内でも正式に導入されています。
日本では2012年5月に発売。全車6速AT・右ハンドルのみの設定で、570万円に設定されました。
これは、316万円のミニ クーパー Sより約1.8倍も高額であり、まさに「超高級コンパクトカー」といえます。
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2023年10月中旬に複数の大手中古車サイトでIBGWの中古車を検索したところ、5台がヒット。しかしいずれも300万円を超えるなど、標準のミニ クーパー Sと比較すると極めて高価格を維持しているようです。
なお、登場から10年以上経過していることから、消耗パーツや機関系を含め各部のメンテナンスが必要だと考えられます。
こうした希少なモデルは何らかのきっかけにより価値が大幅に変化することもあるほか、海外に輸出されるなどで日本国内から姿を消すこともあるため、もしIBGWを探しているならば早めに動いたほうが良さそうです。