カーエアコン(A/C)のスイッチを入れなくても「暖房」は機能します。そのため暖房は燃費にほぼ影響しないと言いますが、その仕組みはどうなっているのでしょうか。
■暖房は基本タダってどういうこと?
クルマで移動する際には気温に応じて冷房または暖房を作動させます。
巷では「冷房・暖房を使うと燃費に影響する」という人もいます。
しかし、実際に燃費に大きく影響するのは冷房となり、暖房ではほぼ影響しないと言います。
元来、エンジン車にはエアコンによる冷房機能しかついておらず、暖房はエンジンの熱を再利用しているためです。
エンジンの熱を使用して、温まった冷却水に風を吹きつけることで、適温の空気を車内に送り出しています。つまり、暖房は燃料を消費しないで実現できる仕組みです。
燃料を使わないという意味では、エンジン車の暖房は「タダ」といえます。
一方で、実際に暖房を入れると燃費が悪くなる場合もあります。それは暖房のつもりでA/Cボタンを押して、エアコンを作動させているケースも考えられます。
一般的な家庭用エアコンには冷房と暖房、除湿機能が切り替えられますが、エンジン車では冷房と除湿しかなく、暖房機能は搭載されていません。
エンジン車のエアコン内部には、冷気を作るためのコンプレッサーという部品があります。
A/Cボタンはコンプレッサーをオン・オフするためのボタンです。
コンプレッサーはエンジンの動力で動くので、A/Cボタンを押すと必然的に燃料を消費することになります。
自動車整備士は、冬場の暖房の使用方法について、次のように話します。
「暖房を使用することで、燃料を余分に使ってしまうのではないかと考えるお客様は、少なくありません。
エンジン車の場合は、基本的にエンジンが動いていれば、特に何かを操作しなくても自動的に車内は温まります。
外気との温度差で窓が曇ってしまう場合などは、エアコンを作動させて除湿する必要があるので、状況に応じて使い分けることが必要です」
運転に適切な環境を保ちながら、エアコンのオン・オフを調節することで、不必要な燃料を消費せずにすみます。
■EVは暖房が走行距離に影響する?
エンジン車では燃料を使用せずに暖房を入れることができますが、エンジンがないEV(電気自動車)の場合は、どのような仕組みになるのでしょうか。
電気自動車は、電気を使って新たに熱を作ることで車内を温めます。
電気ポットのように水を沸かして循環させたり、電気ストーブのように温めたりするヒーター方式や、空気を圧縮して熱をつくりだすヒートポンプ方式などいくつかの仕組みがあります。
いずれの方法でも、暖房のために電気を使用するため、その分、充電が減ってしまいます。
また、暖房にかかるエネルギー量は全消費エネルギー量の半分以上を占めるといわれています。
そのため、冬場に暖房を入れると、一回の充電で走行できる距離も短くなってしまいます。
また、シートヒーターなどを使って部分的に温めると、空調に比べて消費電力は10分の1ほどに抑えられるといわれています。
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エンジン車の暖房は、エンジンの熱を再利用して作られており、除湿と併用するときを除けば暖房で燃料を消費することはありません。
冬場は暖房の使用方法に目をむけることで、適切な車内環境を保ちつつも、燃料の使用を増やさないことにつながります。