ホンダがジャパンモビリティショー2023で世界初公開した「プレリュード コンセプト」。すぐにでも発売できそうな完成度の高さですが、実際には市販化までにかなりの時間を要するようです。それは何を意味するのでしょうか。
■「プレリュード コンセプト」は「シビック」のクーペ版?
2023年10月28日に一般公開がはじまった「ジャパンモビリティショー2023」のなかでも、ひときわ注目を集めているのがホンダ「プレリュード コンセプト」です。
すぐにでも発売できそうな完成度の高さですが、実際には市販化までにかなりの時間を要するようです。それは何を意味するのでしょうか。
ホンダはかねてより、「スペシャリティ」と「フラッグシップ」という2つの電動スポーツモデルを投入していくことを明らかにしていましたが、そのうちのひとつがこのプレリュード コンセプトだったというわけです。
「プレリュード」と聞いて多くのユーザーが思い浮かべるのが、1978年から2001年にかけて販売されていた上級クーペです。
プレリュードは、世代によって多少コンセプトは異なるものの、各世代ともに美しいボディと上質な室内空間、そして余裕のある走りを兼ね備えている点は一貫しており、日本国内はもとより、海外でも高い人気を誇ってきました。
そんな往年の名車の「復活」が、装い新たに生まれ変わったショーに彩りを添えてくれたことは言うまでもありません。
一方、プレリュード コンセプトについて、現時点でホンダが明らかにしていることはごくわずかです。
ホンダ関係者は「パワートレインにはハイブリッドを採用しており、2020年代半ばの市販化に向けて開発を進めている」と話しますが、それ以上の具体的なことはまだ公表されていません。
ただ、会場に展示されているプレリュード コンセプトの実車を見てみると、「コンセプト」とは言うものの、限りなく市販化に近い状態であることがうかがえます。
たとえば、そのエクステリアはコンセプトカーにありがちなデザイン優先のものではなく、衝突安全や法規対応を考えた極めて現実的なものに見えます。
インテリアも「シビック」などに近いものが採用されているなど、決して非現実的なものではありません。
また、詳細なボディサイズこそ公表されていないものの、そのサイズ感はシビックに近いようです。
そう考えると、プレリュード コンセプトはシビックのクーペ版に近い構造を持っていることが予想されます。
たしかに、ホンダのグローバルにおける主力モデルであるシビックは世界中で評価も高く、そのクーペ版となれば、爽快な走りにさらに磨きがかかることは間違いなさそうです。
■「プレリュード」の名前が意味するのは…? 画期的な機能が備わる可能性があるの?
ただ、ひとつ気になるのが、会場で見たプレリュード コンセプトはすぐにでも発売できそうな仕上がりであったにもかかわらず、市販予定が「2020年代半ば」とされていることです。
「2020年代半ば」を2024年と解釈すると、その登場は近いと言えそうですが、ホンダ関係者などの話を総合すると、「2025年以降」である可能性が高いようです。
そうなると、市販モデルの登場までおよそ2年近くあることになりますが、現在の完成度の高さを見ると、やや時間を要しすぎているようにも思われます。
もちろん、さまざまな「大人の事情」があると言ってしまえばそれまでですが、このコンセプトモデルが「プレリュード」の名を冠していることを考えると、画期的な新技術の搭載を予期せずにはいられません。
かつてのプレリュードは、国産車初となる電動サンルーフをはじめ、4輪操舵システムの「4WS」やマニュアルモード付きATの「Sマチック」など、当時としては先進的な技術が搭載されていることも魅力のひとつでした。
「プレリュード」とは「前奏曲」や「先駆け」を意味する言葉であり、これまでのプレリュードは、多くのユーザーに来るべき未来を見せてくれるクルマでもありました。
ホンダの三部敏博社長は、プレリュード コンセプトについて「本格的な電動化時代へ“操る喜び”を継承する、ホンダ不変のスポーツマインドを体現するモデルの先駆け」と述べています。
現時点ではこれが何を意味するのかは明らかではありませんが、たとえばそれは、さらに爽快な走りを楽しめる新開発のハイブリッドシステムだったり、かつての「Sマチック」のようなMT操作を擬似的に体験できるシステムだったりするかもしれません。
いずれにせよ、ホンダが「プレリュード」という名を付けた本当の意味がわかるまでには、もう少し時間がかかりそうです。
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ホンダは、2040年までに世界で販売される新車のすべてをBEVもしくはFCEVにすることを宣言しています。
そのため、たとえプレリュード コンセプトが市販化されたとしても、ハイブリッドを搭載している限りは遅くとも2040年までには生産終了となる可能性が濃厚です。
そういう意味では、復活するプレリュードはあくまで次世代への「つなぎ」のモデルなのかもしれません。
来るべき電動化の時代への橋渡し役となるであろうプレリュード。そこに掛かる期待は非常に大きいことは言うまでもありません。