自動車教習所と言えば運転免許を取得する際に多くの人が通う場所です。国家資格となりますが、それを取得するための教習所に務める教官は公務員なのでしょうか。
■教習所の教官は公務員なの?
教官からさまざまな運転技能を学ぶ自動車教習所。運転免許という国家資格を扱うだけに、そこで働く教官は公務員であるとイメージされることが多いようです。
それでは、実際に教官とはどのような立場の人なのでしょうか。
国の定めた運転免許を取得するために、ほとんどの人が自動車教習所へ通います。
ここで運転技能を全般的に身につけるわけですが、中には苦手なものについて、くり返し教官から教えてもらったという思い出のある人もいるかもしれません。
ところで、このように広くあまねくサービスを提供する教習所は、行政の機関なのでしょうか。
そうだとすれば、そこで働く教官は公務員ということになります。
指導員は先生とも呼ばれているので、教員免許を持っているのでしょうか。さらに、運転試験場の職員とは何か違うのでしょうか。
そこで、まずは教習所で働く人について整理しましょう。
教習所の教官は、仕事の役割により教習指導員と技能検定員にわかれます。どちらも国家資格が必要です。
「教習指導員」は、学科や技能の指導を行います。これに対し、修了検定や卒業検定を担当するのが「技能検定員」です。
一方で、公務員とはどのような立場の人でしょうか。
国や地方自治体に所属し、国民に平等にサービスを提供する人を公務員と呼びます。
具体的には、内閣総理大臣にはじまり、大臣や省庁の職員、裁判官、自衛官、教員、消防士、警察官、公立学校の先生などがあげられます。
ここで、自動車教習所の役割について立ち戻りましょう。
自動車教習所は民間企業です。民間企業として運転免許取得のための学科や技能の教育を提供しています。
また、運転免許試験場の仮免許試験や卒業検定は、警察を管理する公安委員会の公共サービスです。
教習所は、こうした運転技能試験を民間で代行しているのです。
つまり、働く人に関していえば、民間企業である教習所の教官は公務員ではありません。
とはいえ、技能検定員だけは話がちがってきます。技能検定員は運転技能試験を担当するため、みなし公務員として扱われるのです。
国や自治体などの職員ではないが、公務員とみなされる職務に従事しているという立場です。
ほかの例としては、駐車監視員や日本郵便の職員などがみなし公務員です。
■みなし公務員には職務上の制限が存在! そもそもどうやってなるの?
みなし公務員であるため、技能検定員には職務上の制限があります。
具体的には、民間に委ねた公共サービスについて規定する、「公共サービス改革法」により定められています。
例えば、サービスの実施に関して知り得た事項について守秘義務が発生。
さらに、刑法上は公務員とみなされ、贈収賄や公務執行妨害罪などが適用されます。
実は、運転免許試験場の職員は警察官であり、公務員です。教習所で働く技能検定員はそうした職務と同様の責務があるとイメージするとわかりやすいでしょう。
このように、教習所は公共性の高い民間企業といえます。
それでは、その教官になるにはどのような道を通るのでしょうか。
教習指導員は、公安委員会の審査を受けて、教習指導員資格者証を取得します。21歳以上で、取得しようとする車種の運転免許を所持していれば受審できます。
審査の内容は、教習に関して技能と知識を持っているかということです。
一般的にはいきなり公安委員会の審査を受けるのではなく、まずは勤務する教習所で学び、都道府県指定自動車教習所協会が行なう新任教習指導員養成講習を受講するケースが多いようです。
技能検定員の場合は、受審査資格が25歳以上と厳しくなりますが、教習指導員と同じように公安委員会の審査を受けて技能検定員資格者証を取得します。
教習指導員の資格を取得した後に技能検定員の資格を取得する人が多く、教習所では技能検定員が教習指導員を兼任しているケースがよくみられるようです。
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教習所の教官は、必要な国家資格を持ち、クルマの運転技能を生徒に教えています。
運転免許試験場の職員と混同しそうにもなりますが、公務員ではない立場で、免許取得という公共サービスを提供しているのです。
いつでも場所に縛られず免許が取得できる背景には、こうした教官の仕事があると覚えておくことは無駄にはならないでしょう。