クルマを運転していると、後続のトラックの車間距離がずいぶん短いように感じることがあります。実際は適切な車間距離を取っているというのですが、なぜピッタリと後ろについているような気がするのでしょうか。
■適正な車間距離なのに… なぜトラックに「あおられている」と感じる?
クルマを運転していて、信号待ちなどで停止しているとき、後続のトラックの車間距離が短いように感じることがあります。
バックミラーで後ろを確認すると、ミラーを埋め尽くすように映る大型のトラックは迫力がありますが、信号待ちならまだしも、高速道路などで後ろからトラックに迫られると恐怖を感じる人も多いかもしれません。
なぜ大型トラックの車間距離は短いように感じられるのでしょうか。
実際はトラックも十分車間距離を取るようにしていると教えてくれたのは、現役トラックドライバーのI氏です。
「バックミラーいっぱいにトラックが映るのは、車間距離が近いからと思われがちですが、実際は車体の構造と運転席からの視界の違いによるものが大きいと言われています。
トラックにはノーズがなく、エンジンの上にキャビンが乗っている『キャブオーバー』と呼ばれる形状となっており、アイポイントが高い上に前方視界が良好で、車両感覚が掴みやすい四角いボディをしています。
またサイドミラーも大型で死角が少なく着座位置も見下ろす形になるため、前走車のリアバンパーとトラックのボンネット先端の距離を把握できています」
バックミラーで確認する際に、我々ドライバーは無意識に後続車のキャビンの見え方で距離を把握していることも関係しているのでしょう。大型トラックが適正な車間距離を取っても、ボンネットがないことから一般車と比較して車間距離が近く感じてしまうこともあるでしょう。
また、実際に大型トラックはサイズが大きいということもあり、適正な車間距離で止めたつもりが近く感じてしまう可能性も。つまりほとんどのトラックドライバーは車間距離を十分に把握したうえで後続しており、バックミラーで迫って見えるのは「錯覚」ということのようです。
もうひとつ、トラックのなかでも特に大型トラックでよく言われるのが「高速道路で車間距離が近い」ということです。あおられていると感じることもありますが、どうやらそう感じる一般車側にも問題がありそうです。
「トラックドライバーは運転のプロですし、現在の流通状況は人手不足でひっ迫しています。しかも指定された時間までに安全に荷物を届けることが第一優先で、ちょっと割り込まれたくらいでイライラしている暇もありません。
安定した巡航速度を保ち続け、時間と燃費を稼ごうとしているトラックドライバーがほとんどです」(現役トラックドライバー I氏)
ごく一部に行儀の悪いトラックドライバーもいるかもしれませんが、荷物を積載したトラックの運動特性を理解してみると、トラックがあおらない理由がわかります。
「荷物を積載したトラックの重量は、とてつもなく重くなります。そのため一般車のように俊敏に加減速できません。
高速道路のゲートを通過し、ジリジリと目標の巡航速度に到達したら、その速度をキープして走り続けることが載せている荷物にも燃費にも良いわけです。
追い越し車線に入っても速度を上げにくいので、道を塞いだように感じるかもしれませんが、それだけ重くスピードが出ず、減速してもなかなか止まれないのです。
つまり『あおらない』のではなく『あおれない』乗り物なのです」(現役トラックドライバー I氏)
一方の一般車はどうでしょうか。アクセルの強弱だけですぐに時速20キロから30キロの加減速が可能です。しかも道の勾配も気にせず漫然とアクセルを一定に踏んでいるドライバーも多く、速度が低下していることに気がつかずに渋滞の原因になるとされています。
緩い坂道などで自分のクルマの速度が落ちている一方で、トラックは上手に速度コントロールして一定速度で走っていたら、車間距離が詰まってあおられているように感じることもあるでしょう。
すべてがそうとはいいませんが、あおられていると感じる場合は、おおむね自分のクルマが一定の速度で走行できていないことも要因として挙げられそうです。
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近年は、追い越し車線だけを走り続けると「車両通行帯違反」で取り締まりの対象になります。
違反して違反切符を切られてしまっては仕事ができなくなるだけに、一般ドライバー以上に安全運転しているトラックドライバーが多いというのが実情のようです。