記念すべき第一回目の「ジャパンモビリティショー2023」で、マツダは「ICONIC SP(アイコニック エスピー)」を初公開しました。全長4180mmとコンパクトなスポーツカーですが、このクルマはどのような意味合いを持つのでしょうか。
■市販化はある? マツダ「アイコニックSP」
記念すべき第一回目の「ジャパンモビリティショー2023」において、会場内で最も美しいコンセプトカーはマツダ「ICONIC SP(アイコニック エスピー)」といっていいでしょう。
全長4180mmとコンパクトなスポーツカーで、マツダは「『クルマが好き』という気持ち、『純粋に楽しいクルマがほしい』というお客さまの気持ちに応える、新しい時代に適合した、新しいジャンルのコンパクトスポーツカーコンセプトです」と説明します。
パワートレインは、発電にロータリーエンジンを使ったモーター駆動で「2ローターのプラグインハイブリッド」を想定。先日発表された「MX-30 Rotary-EV」は1ローター(8C)ですが、それを2ローター化してパワーアップしたと考えてよさそうです。
最高出力は370PSを想定しているそうですが、それはエンジンで発電した電力にバッテリーから供給する電力を加えてモーターが発生できる最高出力と考えられます。
そんなICONIC SPに関して、公開前は「次期型ロードスターを示唆するモデルではないか?」という噂がありました。
会場で関係者に質問すると「ご想像にお任せします」とはぐらかされたのですが、担当デザイナーは「初代RX-7から守られている、クルマの重心(前後/高さ)がある位置にドライバーのお尻を置くパッケージングはICONIC SPでも踏襲されている」「歴代RX-7と同様に、ルーフから継ぎ目がないBピラーも特徴」「フロントエンジンなのにここまで低いボンネットが実現できるのはパワートレインが小さいから(ロータリーエンジン搭載が前提)」と説明してくれました。
つまり、ロードスターというよりは「RX」シリーズの将来を示唆するモデルと判断していいでしょう。ロータリーエンジンといえば、「ロードスター」よりも「RX-7」です。
興味深いのは、かつてのスーパーカーの象徴だったリトラクタブル(開閉式)ヘッドライトを組み合わせていること。
「メーカーとしては空気抵抗に寄与するといった理論的な説明ができればいいのかもしれませんが、採用理由はそうではありません。カッコいいからです。ワクワクしませんか?」と単純だけど、清々しいほどに純粋な理由をデザイナーさんは教えてくれました。理論よりもエモーショナルな感覚を優先しているというわけです。
もちろん、現在の法規に照らし合わせると開いた状態のヘッドライトが突起物となるので、衝突時の歩行者保護の観点から市販車に採用することはできません。
しかし、歴代RX-7がいずれもリトラクタブルヘッドライトだったことを考えると、それらとの関連を考えないわけにはいかないでしょう。
斜め後ろを俯瞰気味に見たときの、Bピラーからリヤフェンダーとリヤウインドウにかけての造形も、現時点では最後のRX-7となっている「FD3S型」と共通の雰囲気を感じるのも偶然ではないように思えます。
ところで、ICONIC SPに関してはお披露目前のもうひとつの噂として「2022年11月に『中期経営計画のアップデートおよび2030年の経営方針について』の説明にあわせて公開された『ビジョンスタディモデル』に似ている」という声がありました。
こちらも担当デザイナーに質問してみたところ「同じといえば同じだし、違うと言えば違う」という答えが返ってきました。なぜなら、全体的なスタイルは同じですが、その時からはすべてがブラッシュアップされており「全く同じ造形の外板パネルは1枚もない」のだそうです。
もちろん、今回の展示車両はあくまでコンセプトカーであり、具体的な市販計画はありません。
しかし関係者と話をしていると「市販を見据えて」という言葉が何度も出てくるなど、状況さえ許せばロータリーエンジンを積んだスポーツカーを市販したいというマツダの意気込みと熱意は十分伝わってきました。
それを市販するには、会社の経営環境だけでなく良好とはいえない燃費が大きなハードルになっているのは間違いありません。
しかし、こういった絵空事に見えるコンセプトカーからも、ハイブリッドとしてモーターを活用することで燃費水準を引き上げ、なんとか市販にこぎつけたいとマツダが道筋を模索していることがよくわかります。
だってマツダは、本社の役員用駐車場に行けばロードスターがたくさん停まっている、偉い人もスポーツカーが大好きな会社ですからね。