AT限定免許でMT車を運転したら、どのような違反になるのでしょうか。
■「AT限定免許」でMT車を運転したら「無免許運転」になる?
現在、新車で販売されるクルマのほとんどはAT(オートマチック)車です。そのためクルマの運転免許を「AT限定」で取得している人も少なくないでしょう。
では、AT限定免許の人がMT車を運転すると、どのような違反になるのでしょうか。
AT限定免許は、その名の通り運転できるクルマをAT車に限定した免許です。そのため、例えば同じ車種であってもクラッチべダルがついている「MT車」は運転できません。
AT限定免許を取得する人は年々増加しており、2022年度の運転免許統計によると、普通自動車第一種免許を保有している人のうち67%がAT限定で、新たに運転免許試験に合格した人のうち7割以上がAT限定だといいます。
普通自動車免許をAT限定で取得した場合、免許証の有効期限の下にある「免許の条件等」の欄に「普通車はAT車に限る」と表示されます。
AT限定免許があるのは、普通自動車免許と自動二輪免許(普通・大型)のほか、タクシーなどを運転する際に必要となる普通自動車の第二種免許です。
中型免許と準中型免許を新規取得する場合はAT限定を選択できませんが、制度の改正により普通自動車免許が中型免許や準中型免許に移行したことから、2017年以前に普通免許を取得した人は「AT限定の中型免許」や「AT限定の準中型免許」を保有している人もいます。
このようなAT限定免許は、MT車を運転すると当然交通違反となってしまいますが、実は「無免許運転」には該当しないのです。
無免許運転とは、免許を保有していない種類のクルマを運転することをいいます。例えば普通自動車免許を持つ人が大型自動車や自動二輪車を運転すると無免許運転に該当します。
一方で、AT限定の条件のついた普通自動車免許を持つ人がMT普通車を運転した場合、普通車を運転する免許は保有しているものの、免許に記載された条件に違反することになるため「免許条件違反」という交通違反に該当します。
この二つの違反は似ているようで差があり、罰則の重さが大きく異なります。
まず、免許条件違反は普通車であれば反則金7000円と違反点数2点の違反です。
一方、無免許運転は違反点数が25点で、それまでに違反歴のない人であっても即免許取消の重たい処分となります。
また、免許条件違反はいわゆる軽微な違反に該当し、反則金も行政処分ですが、無免許運転は免許取消に加えて刑事処分として3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。
MT車を運転する可能性があるという人は、最初から限定なしの免許を取得するのがおすすめです。
なお、AT限定の免許を持つ人がMT車を運転しようとする場合、新たに免許を取り直す必要はありませんが、指定教習所で技能審査に合格するか、運転免許試験場で実車を用いた審査を受けて合格し、普通免許限定解除審査を受けることで限定を外すことが可能です。
比較的短期間で限定なしの免許に変更することができるため、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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なお、このほかにも免許条件違反としては、「中型車は中型車(8t)に限る」や「眼鏡等」といったものがあります。
免許制度の改正などにより、運転できるクルマが限定されていることがあるため、改めて免許証の記載内容について確認してみても良いかもしれません。