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なぜ地域によって「教習内容」違う? 学科は同じも「技能」は地域差あり! 自動車教習所「特別項目教習」設定の理由は?

くるまのニュース 2023年11月29日 9時10分

自動車教習所では、一般的な技能教習以外にもその地域ならではの教習があります。どのようなものなのでしょうか。

■教習内容が地域によって異なるって本当?

 運転免許を取得する際、一般的には自動車教習所に入校し学科・技能の教習を受講します。このうち技能教習では指導員とともに教習車に乗り、運転操作について学びます。
 
 実はこの技能教習は全国同じ内容ではなく、その地域ならではの特性を反映した内容になっているのです。どういうことなのでしょうか。

 教習所で運転技能を学ぶ機会は、いわゆる技能教習と呼ばれ、AT限定コースなら31時限、MTも運転できる普通自動車なら34時限となっています。

 これに、道路交通法を学ぶ学科教習が合計26時限となっているのが一般的です。

 教習内容(特に学科)はおおむね全国で同じと法令で定められていますが、技能教習のなかには地域の特性を考慮した「特別項目」が設定されており、その内容は全国でかなり違っているといいます。

 実際に、東京都内の教習所で指導員(教官)を務めていたI氏は以下のように話します。

「この特別項目は、その地域ならではの交通状況に応じて必要なスキルを覚えてもらうための教習です。

 教習内容は各地域によって様々で、山間部が近い地域は、カーブの多い山道や長い下り坂でのエンジンブレーキの使い方、東京都心部では高速教習とは別に首都高の乗り方などをレクチャーするケースもあるようです」

 このように特別項目は、地域であり得るシチュエーションを考慮した内容になっています。

 たとえば、東京都心の教習所でも必ずしも「首都高の乗り方」に統一されているわけではなく、難易度が高いタワー式駐車場や立体式駐車場の駐車体験などもあります。

 また場所によっては、あえて狭い道でのすれ違いを経験させたり、悪路を走行するケースもあるといいます。

 これも教習所によっては実車を使うばかりでなく、シミュレーターで行う教習所もあるなど、ある程度は教習所の自主性に任されているようです。

「自分(I氏自身)の場合も、大型ショッピングセンターの立体駐車場内での走行の注意点や駐車する際の注意点などを教えた記憶があります。

 また、自分が働いていた教習所は夜まで営業していたので特別項目扱いにはしていませんでしたが、夜間走行を行う教習所もあるそうです。

 ロービームとハイビームの照射範囲の違いや、対向車が来た場合はどうすべきかなどを体験してもらうケースもあるようです。

 要は、通常の技能教習では足りない、実際に走行する場合には覚えておいてほしい運転技能を教習できるプログラムですので、ぜひしっかり覚えてほしい教習となっています」(I氏)

 首都高を走行中に教習車を見かけることもありますが、実は特別項目の教習かもしれません。

 また、教習所内ですらビクビク運転している教習生にとって、狭い道幅のすれ違いはかなりのプレッシャーになると考えられますが、免許取得後に必ず遭遇するシチュエーションであり、教官に教えてもらえるうちに体験しておくのも良いのかもしれません。

■「北海道ドライバーは雪道運転がウマい」のも特別項目のおかげ?

 また、北海道など降雪の多い地域では雪道走行をする教習所もあります。

 東京都心部ではあまり意識しませんが、関東でも雪の多いエリアはありますし、北海道や東北、北陸などでは必須のシチュエーションともいえます。

 積雪だけでなく、凍結した路面の感覚、車道にできてしまった轍(わだち)への対処法なども学ぶようです。

都市部の「狭隘路」に北海道の「雪道」… 知らぬ間に役立っているかも

 北海道釧路市で免許を取得し、実際に現在も釧路市に住んでいるというYさん(30代・女性)は以下のように話します。

「ずいぶん前なのでうろ覚えではありますが、夏は山道の走行、冬は雪道を想定した坂道発進を練習した記憶があります。

 私が住んでいる釧路はあまり積雪にならない代わりに気温が低く路面が凍結しやすいので、凍結路の走り方などを教わった記憶があります」

 Yさんの話では、夏はカーブやアップダウンが複雑に絡み合った山道、冬は凍結路や雪道での挙動の変化をレクチャーされたといいます。

 ちなみに夏に免許を取得したあとでも、有償ながら補修講習として雪道走行を教わることができるのだそうです。

 また教習所だけでなく、冬季の冬道講習(雪道走行)を体験させてくれる北海道のレンタカー会社も存在しています。

 冬のツルツルした路面で急ブレーキをかけたときにABS(アンチロックブレーキシステム)がどのように作動するのかを体験できます。

 実際、Yさんも「凍結路はクルマを動かすより止まるほうが難しい」と教習所で教わったのだそうです。

 また、北海道には特有の道路事情も多く、教習ではこうした各地域特有の標示や標識についても学ぶ機会があるといいます。

 たとえば、道路脇に建てられた下向きの矢羽根は道路と路肩の境界線を表しており、積雪などで見えなくなった路肩などの目安になるほか、ホワイトアウト(吹雪などで視界不良になること)時には進行方向の目印になるもので、豪雪地帯特有のものです。

 Yさんの話では、このような標識に加えて、北海道では歩道の縁石が高めになっており、ぶつけたり乗り上げたりしないように注意が必要なことも教わったそうです。

 このように、教習内容が地域によって大きく異なっている特別項目ですが、I氏によると卒検直前の第2段階の終わり近くで行われていると話します。

 免許を取得する前にこうした体験をさせておくことで、免許取得後よりスムーズに一般道を走行できるようになるといいます。

 すでに教習を忘れてしまったとしても、知らぬ間にきっと役に立っていることでしょう。

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