山口県下関市消防局では、従来のサイレン音とは異なる新サイレン音を搭載した救急車が導入されたといいます。従来と比べどのような違いがあるのでしょうか。
■「新サイレン音の救急車」 何が違う?
救急車は、傷病者を病院などの医療施設まで搬送するための車両であり、緊急走行する際は赤色の警告灯をつけることや、サイレンを鳴らすことが道路交通法で定められています。
そんななか、山口県下関市消防局では、新サイレン音を搭載した救急車が導入されたといいます。一体どのような理由があるのでしょうか。
救急車は、赤色灯のほかサイレンを鳴らして緊急走行することが義務づけられているものの、昨今では「サイレン音がうるさい」「不快」などといったクレームが相次いでいるといいます。
東京消防庁を例に見てみると、2023年8月に東京消防庁に寄せられた都民の声(受付件数・速報値)は、計744件。
そのうち苦情は144件、要望80件となっており、実際に寄せられた声のなかには「夜間によく救急車のサイレン音が聞こえるのですが、深夜の住宅街ではサイレン音を小さくしてもらうことはできますか」といった要望が寄せられていました。
SNSなどでも、「サイレン音うるさい」「緊急車両だからしかたないけどうるさいなー」など、一部ユーザーによる意見が見受けられ、実際にサイレン音に関する苦情や要望についての詳細の件数は出ていないものの、上記のような意見が少なくないことが想定できます。
そんななか、山口県下関市消防局では“新サイレン音”を搭載した救急車が導入されたといいます。導入の経緯について、消防局の担当者は以下のように説明します。
「新しい救急車を整備するにあたり、メーカーと打ち合わせをする中で、夜間や住宅地で走行中に使用するサイレン音のサウンドを『耳障りの良い音』に変更した新しい機器の提案があり、これまでの市民からの意見も受け、新しい機器を導入いたしました」
新しい機器が導入されたといいますが、通常のサイレン音と比べてどのような違いがあるのでしょうか。これについて、前出の担当者は以下のように説明します。
「通常モードのサイレン音はこれまでと変わりはありません。
夜間や住宅地を走行する際に、通常モードより一段低い音で鳴らしていますが、新サイレン音は、通常のサイレン音を軸に和音とコーラスサウンドを重ねたソフトな感じの音になります」
導入後には、市民からの直接の声や職員を通じて、様々な方面から「サイレンが聞きやすくなった」などと、評価が届いているといいます。
また通常のサイレン音はこれまでと変わっていないため、日中に街中を走行する際、以前に比べて他のクルマが進路を譲ってくれなかったなどの悪影響も出ていないとのことです。
人の命を救うための緊急車両である救急車に苦情が入ってしまうのは、あまりに悲しく思いやりに欠けてしまう一方で、それでも市民に少しでも理解を得ようと消防局側での工夫を凝らしている様子がうかがえます。
救急車を見かけた際は、道路を譲ったりなど自身のできる限りの配慮を忘れないでおきたいものです。
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最後に、下関市消防局の担当者はユーザーへ向けて以下のように呼びかけます。
「緊急走行する救急車は、1分1秒を争う救命の現場に向かっている、または、救急車内で救命活動が行われています。
救急車のサイレンがうるさく感じる時があってもご理解とご協力をお願いいたします。
また、救急出動件数は増加傾向で、救急車の現場到着時間も遅くなっていますので、救急車の適正利用についてもご協力をお願いいたします」