モーターショーなどで公開される様々なコンセプトカーは、その斬新さで多くの人々を引き付けます。今回そんな数多のコンセプトカーの中でも特に斬新だったスズキ「ミサノ」を紹介します。
■まさかのタンデム仕様! スズキ「ミサノ」とは
ホンダ、スズキ、BMW、これら3メーカーに共通することは何でしょうか。答えはクルマもバイクも製造していること。世界には多くの自動車メーカーがありますが、バイクも手がけているメーカーは意外と少ないのが現状です。
トヨタ「2000GT」をはじめとするエンジンの開発に携わったヤマハ発動機ですら、クルマ製造事業への参入を断念したほどです。ホンダ、スズキ、BMWは、クルマとバイクの開発を両立させた稀有なメーカーといえます。
なかでもワンオフのコンセプトモデルながら「クルマとバイクの融合」を試みたのがスズキです。2021年4月29日、イタリアで発表したEVオープンスポーツカー「ミサノ(Misano)」がそれにあたります。
イタリア・ミサノワールドサーキットの名を冠したこのモデルは、欧州最大のデザイン学校「IED」とのコラボ作品であり、先進的なスタイリングとユニークなアイデアで脚光を浴びました。
ボディサイズは全長4000mm×全幅1750mm×全高1000mm。四輪という点ではクルマですが、運転席と乗員1名分を前後配置、いわゆるタンデムとしたところがバイクに通じるところで、加えてウインドシールドやバーハンドル風のコントロールスティックなど、バイクからインスピレーションを得たギミックが随所に盛り込まれています。シートは片側に寄せられ、空いた側はバッテリーやトランクのスペースとして活用されています。
フロントマスクにはスズキの頭文字「S」を描く大胆なデザインのLEDヘッドライトを装備。サイドに配した2つの台形メッシュは空気をスムーズにリアへと流し、優れたエアロダイナミクスを実現するとともに、優雅な造形にも貢献しています。リアには大きなディフューザーと3D形状のテールランプ。足もとにはOZレーシングの大径ホイールを装着し、圧倒的な存在感を演出しています。
クルマとバイクにはそれぞれ異なる魅力があります。風雨も関係なく快適な環境でドライビングを楽しめるクルマ、ワインディングでの人馬一体のライディングはバイクならではのもの。甲乙つけがたいそれぞれの魅力を満喫するため、クルマとバイクを所有する「六輪生活」を楽しむ人もいます。
1981年、ホンダは初代「シティ」と同時に車載を前提に開発した原付バイク「モトコンポ」を発表し、六輪生活の先駆けとして注目を集めました。今回紹介したスズキ・ミサノは、それとは別の視点からクルマとバイクの融合を文字通り追求したものです。市販化に向けた動きはないようですが、一度は乗りたい、見たいという人は多いのではないでしょうか。